第77話 廃墟のあれこれ農業あれこれ
あれから2時間が経過した。結果玄関と玄関ホールが完成していた。
「頭だけものすごく立派ですね。まるで大理石の宮殿じゃないですか」
白い大理石の柱、美しい装飾の扉、同じような大理石で作られた玄関から先の玄関ホール。ここだけ切り取るなら完全に宮殿である。
「とりあえず次はっと……。ん?」
次はホールという表示が出ていたのでなんとなくどんなものなのかを確認してみた。すると宮殿風リフォームという物が選択されていることに気が付いた。つまり知らず知らずのうちに宮殿を作っていたのだ。次のホールのお値段は10万ポイントとなっている。どうやらかなり大きめなようだ。
「玄関ホールの次はホールですか。まぁもう仕方ないのでポチりますけど。10万ポイント、つら……」
10万ポイントを支払うと次の完成予定時刻は3時間後と表示されていた。かなり早いのではないだろうか。
こうなったら完成するまで頑張って働いてやる! あ、でもここに住むのはボクじゃなくてアイリたちだけどね。
そんなことを考えながらぼーっとしていると、アイリたちがやってくるのが見えた。
どうやら農作業が一段落したらしい。
「あれー? こはくちゃん! 今日はあんずちゃんいないの?」
「今日はいませんよ? それにしてもあんずちゃんお気に入りですね」
「そりゃもう猫ちゃんだし猫又だしすべすべしてるし、小さいし可愛いし」
「もうただの危ない人じゃないですか……」
モフモフが好きなら猫や犬を家族に向かえればいいと思うけど、たぶんそれだと満たされないものがあるはずだ。
例えば小さくてかわいいものを愛でたいとか。
「もちろん、こはくちゃんも大好きー」
そういうやいなや、アイリがボクに向かって突撃してきた。やっぱりただ単に小さい子が好きなだけじゃないですか!
「ええい、離れなさい、この変態め!」
「やーだよー」
「ぐぬぬ。田中さん、へるぷみー」
「たはは……」
だめだ、田中さんが苦笑したまま止まっている。
こうしてボクは誰にも助けられないままひたすら可愛がられ続けるのだった。
その後……。
「小一時間いじり倒すとは何事ですか!」
「いやー堪能した堪能した。ごめんねぇ。ところでその廃墟、なんで前の方だけすごくきれいになってるの?」
軽い気持ちで謝られつつも現在進行している館の修復作業、もといリフォーム作業について疑問を呈してきた。
まぁ前の方だけきれいになってて後ろは完全に廃墟だし崩れてますもんね。そりゃあ気になりますよね。
「今リフォーム作業中なんです。といってもゲームみたいな感じで資金を投入して時間が経てば完了するみたいな感じなんですけど」
「へー」
「面白い技術ですね。もしかして置き換わったりしている感じなんでしょうか」
「どうでしょうね? そもそもここ自体一応別の場所らしいですよ? 森の中にあるけど森じゃない、惑星にあるけど惑星ではないみたいな」
たぶん田中さんの言っていることが正しいんじゃないかとボクは考えている。おそらく別の場所からここに転送されて置き換わってるんだと。それがどこなのかはわからないけど。
「でもこの館が修繕されたらどうするんです?」
「んー。田中さんとアイリに住んでもらうつもりでいますよ? 内装とか設備の件はまだどうなるかわからないですけど」
「お~。私もついに豪邸の女主人デビューかぁ」
「感慨深げなところ申し訳ないですけど、宮殿っぽい感じになるようですよ」
なぜか感慨深げにそう零すアイリ。まぁ完成したらどちらかというと王様と女王様だろうけど。
「おっ、じゃあ私女王様か」
「じゃあ私は侍従長ですね。もしくは宰相でしょうか」
「田中さん欲がないですね」
田中さんは王様にはなりたくないらしい。まぁ女王様がいるならそれでいいのかもしれないけど。
「ははは。こうやってのんびり狩りしつつ稼ぎつつ農作業している方が好きですね。狐白さんにもらった種も良い感じに成長しましたし、一部はもうイストーの街で売ってたりもするんですよ。不思議な食感だけど嫌いじゃないって言われてたりしますけど」
この世界にもラディッシュのような根菜があるので二十日大根みたいなのは受け入れられやすいだろう。かいわれとかもやしは人を選びそうだけど。
「順調に稼げてるなら良かったです」
「売上いくらか渡しますので、代わりに新しい種購入できたりしませんか? トマトとかジャガイモ、さつまいもとか育てたいんですが」
「いいですよ? とりあえず買ってきますね」
「お願いします」
「おー、これは石焼き芋の予感!!」
どうやらアイリは食欲旺盛なようだ。とりあえず田中さんの要望を先にこなしてしまおうかな。
さて、どんな種が売ってるかな~。




