第75話 ポーション作りは続く
領域の拠点と廃墟の館にいるアイリたちの間を往復すること数日、あんずちゃんも中学校が始まったので夕方まではボク1人になることが増えた。
あんずちゃんは人間に化けて人間の中学校に通っていらしいのだけど、どうもなかなか人気があるらしい。
いわく、警戒心が強くて小動物みたいだとか男子が来ると逃げるだとかだ。どうやら人見知り度は高いみたい。それにしてはかなりアクティブにボクのところにやって来た気がするけど。
「主様、次の分置いておきますね」
「桃花、ありがとうございます」
今日はお手伝いがいないので薬研で潰しつつ粉末を作りポーションの材料を用意する。
最近少しずつイストーの街で販売しているようで、『狐印のポーション屋』として人気を博しているようだ。
エメラルドいわく、売上は順調とのこと。そういえば錬金術師ギルドに顔出してないなぁ。
「こーはーくーちゃーん! きーたー!!」
「いらっしゃーい」
そういって現れたのは中学の制服を着たあんずちゃんだった。どうやら学校から帰ってそのまま来たようだ。
「今日は制服なんですね? かわいいです」
「えへへ」
あんずちゃんは人間形態のときは髪の毛短めの黒髪小柄女子のようだ。肩口より少し上くらいで整えている。
制服は黒色のブレザーと黒色のスカートで、リボンではなくネクタイをつけている。そんなあんずちゃんがぴょこんと猫耳と尻尾を出す。猫耳系女子中学生の完成だ。
「アイリに見せたら餌をあげた魚のごとく食いつくと思いますよ。もしくは鳩みたいに」
「や、やめてください!」
ちなみにアイリは動物系は割と何でもいけるようで猫でも犬でも狸でも狐でも問題ないようだ。
「狐白ちゃんも制服着ればいいのに」
「ボクはなんだかんだいって18になってますからね、さすがに着たらコスプレにしか見えませんよ」
「あ、うん。そ、そうかな? 絶対小学生が背伸びしてるようにしか見えないと思うけど」
「ほえ?」
「ううん、なんでもない!」
あんずちゃんもしかしてボクのこと年下にしかみえてません? おかしいなぁ……。
「じゃあ今日もお願いしますね」
「はーい」
というわけで今日も今日とてあんずちゃんは薬研でゴリゴリし続けることに。あとで配達にも行ってもらおうかな。
そのまましばらく2人で話しながら作業をしていると、エメラルドがやってきた。どうやらお土産を持ってきてくれたようだ。
「こんにちは、あんず様。ご主人様、売り上げは好調です2週間後くらいには小さな店舗を借りることが出来そうです」
「おー。さすがですね。そんなに良く売れているのですか?」
「はい。探索者組合と商業組合、錬金術師組合それぞれにポーション大量購入の告知が出ておりまして、そちらにも卸しております」
どうやらエメラルドたちはタイミングよく大量購入イベントに出会うことができたようだ。
でも考えてみればポーションは消耗品なので、必ずいつかは大量購入する時期がくるはず。
いつ売るか、すぐ売るのか在庫をを余らせつつ備えるのかという判断は結構難しいと思う。
だって今すぐ手に入るお金のほうが魅力的ですもんね? ボクもひたすらポーション作りをした甲斐があるというものだ。
「そういえばどんなイベントが起きたんですか?」
一番気になるのはそれだけ大量にポーションを必要とする要因。ゲームとか漫画とかでは魔物が大量に~とかそういう理由が多い気がする。
「どうやらイストーの街近隣でダンジョンが見つかったようです。新規のダンジョンのため調査時の不測の事態に備えるためとか。あ、こちらお土産です」
「ほー。ありがとうございます」
エメラルドがくれたお土産はチョコレートだった。そういえば向こうの狐さんも売ってましたね。
「あんずちゃん、チョコですよ? はい、あ~ん」
「あ~ん。んぐんぐ。程よい甘さですねぇ。ややビターですが」
「なかなかグルメですねぇ。これ向こうに行ってしまった人間たちが作ったものらしいですよ。いわゆる異世界転移というやつです」
「ほほう。それは興味深い話ですよ? 狐白さん。あたしそういう話大好物なんです」
「ふふ。おふたりは仲がよろしいですね。まるで姉妹のようです」
ボクとあんずちゃんのやり取りを見たエメラルドはそんな感想を口にした。
あんずちゃん構うと面白いから仕方ないですね。かわいいし。




