第71話 星兎族の人見知りちゃん
一旦更紗さんと別れた後、アイリたちの元に戻りあんずちゃんを回収。抵抗するアイリからあんずちゃんを引きはがすのは大変だったけど、あとでまた連れてくることを条件に救出することができた。
「あんずちゃ~ん、猫ちゃ~ん」
「猫又ですけど猫じゃないです。もう猫とは別の道を進んだんです」
あんずちゃんは今日もいつものセリフを口にするのだった。
でも猫又って猫の妖怪なんですよね。
「でもあんずちゃん、この前ボクの家の付近で猫に囲まれてましたよね? あれ何してたんです?」
ミーティアと一緒に自宅に帰る際に見かけた光景をふと思い出した。あれは結局何だったんだろう。
「あぁ~。あれはですね。なんか雌猫が急に集まってきて『なんで昨日の集会に来なかったの?』と聞かれてたんですよ。だからもう猫じゃなくて猫っぽい人間なんですって伝えたら『でも猫又でしょ? 猫じゃない』って言われてしまって……」
猫も認める猫。それが猫又。
「そもそもほかの雌猫もおかしいですよ。人型の猫又に雄猫当てがおうとするのは間違っていると思います」
「猫の世界も大変なのね……」
「まぁ今度守ってあげますよ」
「大丈夫です。この前あたしを見ていた狐白ちゃんを指して、あの子があたしの良い人なのでって伝えておきましたので、近々雄猫が戦いを挑みに来ると思います。なので頑張って倒してください」
「えぇ~……」
いつのまに猫の戦いに巻き込まれていたんだろう……。
ともあれ、一旦あんずちゃんを連れて戻らなきゃ。
「じゃあアイリ、田中さん。ボクたちは一度戻りますのでまた後程こっちにきますね」
「わかりました」
「はーい」
ということでボクたちは領域へと戻ってきた。
▼狐白の領域
領域に戻るとすでに更紗さんが1人の女の子を連れて領域へ来ていた。
その子は可愛らしい白髪赤眼のうさ耳の女の子だった。
「ミア、ご挨拶」
「……ミアです。連絡要員みたいな、そんな感じです……」
ミアちゃんは更紗さんの陰に隠れるようにしながら自己紹介してくれた。多分めちゃくちゃ人見知りなんだと思う。
そんなミアちゃんを見ながら更紗さんは困ったような顔をする。
「子狐ちゃんごめんね。ミアは私の妹なんだけど人見知りというか、あまり打ち解けられない子で……」
「お姉ちゃん。私……」
どうやらミアちゃんは自己主張が苦手なタイプのようだ。更紗さんとしてはこの辺りをどうにかしたいって感じなのかもしれない。
こっちで出来ることって何があるだろうか。
「ミアちゃんですね。ボクは狐白です。こっちの猫耳の子があんずちゃんです。他の人たちとはちょっとずつ挨拶してみてください。ちょうど良さそうな感じだと、桃花と瑞葉ですかね」
「あんずです。よろしくお願いします!」
「桃花です。一応植物の精霊です。いつもはお手伝いをしたりして過ごしていますよ」
「瑞葉です! 水の精霊です! よろしくね!」
「えっと……。よ、よろしく……お願い……します……」
元気な子組が元気いっぱいに挨拶する。ミアちゃんは若干更紗さんの後ろに引っ込むようにして裾を強く握りしめながら挨拶を返してくれた。元気な子組は圧が強いですからね。
「クルスです」
「ルナです」
双子組の自己紹介は他とは違って落ち着いている。そのせいかミアちゃんは少しだけ前に出てくると「よ、よろしく……お願い……します……」と返していた。
打ち解けやすそうな元気組か、落ち着いていて自分のペースで話せる双子組か。どちらのほうがミアちゃんにはいいのだろうか。
「さて、ほかにも色々な人がいますけど、一気に紹介すると疲れてしまうと思いますので、建築予定場所へ行きましょうか」
そんなわけで早速星兎族の居住スペースに向かうことに。
場所は小悪魔ショップの近くだ。
「お、いらっしゃ~い。ってずいぶん大人数ですね? あ、建ててもらった建物良い感じですよ~?」
最初来た時とは違い、今は金髪小悪魔さんにも建物が用意されている。お風呂付サウナ付きの店舗兼住宅だ。
メルディア含むフェアリーノームがものすごい勢いで作ってくれたものだ。
「それはよかったです。えっと、こちらお近くに拠点を作る星兎族のーー」
「お久しぶりねラミーちゃん」
「おやおや~? 誰かと思ったら更紗ちゃんじゃないですか? お久しぶりです~」
どうやらうちの金髪小悪魔が件のラミーちゃんであっていたようだ。
「星兎族も狐さんのところに来ましたか。次は何が来るんでしょうね? まぁここから見てましたけどちょっとずつ集落が大きくなっているようですし、遠くでは下水工事を始めたそうですよ。便利な環境が揃っていきそうですね~」
「へぇ~。でもまさかラミーちゃんが一所に留まるとはね~」
「そんなに意外でしょうか? まぁここは高天原神族肝いりの場所らしいですよ? 心地よい場所ってのも大きいですね~」
どうやらうちの金髪小悪魔は高天原肝いりとかいう情報を聞いてやってきたらしい。
肝いりというかあーちゃんが積極的というか……。
ともあれ、今後はもっと積極的にやらないとですね。
「そうなのね~。あ、ラミーちゃんって建築物複製できる魔道具持ってたよね?」
「今もありますよ~? お買い上げになります~?」
「子狐ちゃんにちょうどいいかな~なんておもって」
「あぁ~。たしかにそうですね。となると、お代をどうしましょうかね……」
金髪小悪魔は件の魔道具の代金について考え込んでしまった。
そういえば金額聞いてなかったけど、便利な分相当高いですよ?
「とりあえずはしばらくは貸出にしましょうか。建築の進捗見て値段考えますよ。というわけで狐さん、こちらどうぞ」
「わっとと。あ、ありがとうございます。」
金髪小悪魔はボクのところに飛んでくると、小さなキューブ型の道具をボクの手元に落としてきた。
青いルービックキューブのような見た目だ。
「これを複製したい建物の前に設置すると自動的に計測して情報を取り込みます。その後、建築予定の場所に行ってキューブを置くと必要資材がウィンドウの状態で投影されて表示されますので、指定された範囲に準備すれば複製建築ができますよ? でも近くに十分な空きがないとエラーを吐き出しますけどね」
「ほほぅ。便利そうですね」
ボクはこのキューブをビルダーキューブを呼ぶことにしようと思う。
簡単な物ならかなり便利に使えそうだし。
さぁ建築頑張るぞ~!




