第7話 オロチ酒造『大蛇の涙』
桃花と瑞葉と一緒にボクは領域へと戻ってきた。
2人とも途中にあったボクの仮拠点や光のゲートに興味津々な様子だったが案内したり説明するのは少しあとにしておこう。
まずは良いお酒が買えるかどうかだ。
「ここが主様の領域ですか。とても広くて清々しい空気に満ちていますね」
「水も気持ちよさそうです!」
2人はボクの領域が気に入った様子だ。
たしかに今のボクの領域は建物がほとんどなく文明の痕跡などないに等しい。
だから余計に自然豊かに感じるのかもしれない。
まぁ今後は自然に配慮しつつもう少し建物を建てたいところなんですけどね。
「この領域はボクが昇神試験を受けた神群の影響を強く受けている気がしますね。それでなくともボクは妖狐という妖の一種なんです」
ボクはそう話すとモフモフの青みがかった銀色の尻尾を2人に見せつける。
すると2人の視線はボクの尻尾に釘付けとなった。
「主様にモフモフの尻尾も可愛らしいですね。モフモフのお耳も可愛らしいですが」
「あたし触ってみたいです!」
「今はだめですよ。まずはノームさんのことが先ですから」
「ええー」
不満そうな瑞葉は放っておいて、ボクはさっそくノートパソコンを起動して【妖種ネット】にアクセスした。
『妖種ネットへようこそ! 本日はマーケットにおすすめの商品が入荷されました。ネットショップにアクセスしてぜひおすすめ商品をお買い求めください!』
アクセスして早々そのようなメッセージが表示されていた。
おすすめの商品? なんだろうか。
「主様。その箱は何なんでしょう?」
「ご主人様、その箱は面白いものですか?」
「これはいろいろできる箱ですね。用事が終わったら使っていいので少しだけ待ってくださいね」
「「はーい」」
興味深そうに話しかけてくる2人そう声を掛けると、さっそくおすすめ商品を探し求めてみる。
すると奇妙なショップが表示されていた。
『【オロチ酒造通販ショップ】オロチ酒造おすすめの逸品。どんな精霊や神も感動して涙を流す、店主ヤマタノオロチが世に送り出した至高の酒【大蛇の涙】今なら1セット6本入りで5000ポイント。絶賛販売中。数量限定』
オロチ酒造って何? というかヤマタノオロチさんってあのヤマタノオロチさんですよね?
ボクは思わず突っ込まずにはいられないショップを見つけ、ヤマタノオロチさんについて思い出していた。
ヤマタノオロチさんといえば、高天原でも有名な酒好きで、因縁深いはずのスサノオノミコトとよく一緒に酒を酌み交わしていることで知られていた。
ボクの父もヤマタノオロチさんとは知り合いで、色々と融通を効かせてもらっていたようだ。
とにかく酔っぱらうと上機嫌になる大蛇で、呑みすぎると寝てしまう癖がある。
そんな高天原きっての酒好きであるヤマタノオロチさんが作ったというお酒ならノームさんたちもさぞ喜ぶことだろう。
早速一本購入することにした。
これで残ポイントは4000ポイントとなってしまった。
何かいい売り物見つけないとそろそろ買えなくなりそうだ。
「なかなか良いものが買えましたね。使うときが待ち遠しいです」
「主様、何を買われたのですか?」
「なになにー? 何を買ったんですかー?」
ボクの独り言に反応する2人。
どうやら気になってしまったようだ。
「ずばり、ノームさん対策のお酒です。もしかしたら一本じゃ足りないかもしれませんけどね」
1セット6本なので6本ですら足りない可能性があるけど。
まぁ何かしらお手伝いしてくれたらボクが購入して報酬にするのもいいかもしれませんね。
「お酒、ですか。たしかにノームたちは喜びそうですね」
「お酒って飲んだことないです! 飲んでみたいな~」
「だめですよ? 2人とも見た目は小さいのですからお酒なんて飲んだらボクが怒られちゃいます。買っただけでもアウトかもしれないのに」
「むむぅ」
倫理的にという観点からダメ出しせざるおえないのです。
瑞葉、許してくださいね。
世間は意外と厳しいのですよ。
こうしてボクはノームさんたちへの交渉材料を手に入れたのだった。




