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狐宮狐白の異界開拓記 のんびりしつつ便利な妖種ネットを駆使してお手軽物資調達で生活を豊かにしていきます  作者: Jまる


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第64話 遺跡時々異世界

 森の中の崩れた廃墟に残されていた結界。その下には階段が隠されていた。

 今ボクはその階段をゆっくり、少しずつ降りている。

 周囲は暗いので狐火を灯すことで照らしているけど、見える限りでは階段は結構続くようだ。

 どう考えてもちょっと地下室を作りましたという感じではないが、認識阻害をするくらいなのだから何かを隠していることは間違いないだろう。

 ただ建物の大きさを想像してみると教会や神殿のような施設かもしれないし、この下はカタコンベのような地下墓地かもしれない。


「地下墓地だったらごめんなさいしますけど、それ以外なら少しだけ調査してみたいですね」


 考古学者でも民俗学者でもないけど。


「それにしてもかび臭いですね。どのくらい隠されていたのでしょうか」


 早速端末を手に取り周囲の壁を検索して調べてみる。検索結果は建築時期は1000年前と表示されていた。

 相当長い時期この場所に埋もれていたのだろうか、案外保存状態が良いように感じる。もしかするとさっきの結界が何か関係しているのかもしれない。


「階段の奥に何か見えますね。光? 青白い光みたいですね」


 下方向に伸びる階段の先に青白い光が見えた。光源になるようなものでもあるのだろうか?


「えっと、空間安定率は60%ですか。通常空間という感じですね。ダンジョンではなさそう」


 端末の機能の1つに【空間安定率測定】という機能がある。

 これは空間が安定しているかどうかを測定するもので、歪んでいたりダンジョンのように空間に手が加わっていると安定率が一気に下がるのだ。60%という安定率は若干変質しているものの閉所とほかの力が影響している可能性ありというもの。まぁ平たく言えば歪んでいるとはまだ言えない状態だ。


 そのまま階段を降り切ると、その先には広い大きな部屋が1つ存在していた。中央には青白い光を放つひし形の結晶が1つあるだけ。

 周囲の空間に罠がないことを確認しつつ、ゆっくりとその結晶に近づく。


「この結晶、見た覚えがありますね」


 青白い光を放つ結晶には心当たりがあった。そしてひし形の形にも覚えがある。

 ふと思い出したボクはさっそく結晶を端末で調べてみることにした。

 【星光結晶】誕街にはそのように表示されていた。


「驚きましたね。誰がこれを作ったのでしょうか。しかしこれはこの場所にあっても何の意味もないでしょう」


 そう思ったボクは台座から星光結晶を取り外す。すると後ろの方でゴゴゴと音が鳴り、ゆっくりと奥の壁が開いていくのが見えた。


「罠ではないですが、これは誘い?」


 そう思ったのには理由がある。なぜならこの星光結晶は人間には触ることすらできないからだ。

 星光結晶は星の光を集めて作られた特殊な結晶で、これを作成できるのは父の関係者たちだけである。

 つまり、これがあるということは少なくともその関係者がこの辺りにいたということになるわけだ。


「ともあれ、奥の部屋に行ってみましょうか」


 開いた奥の部屋に近づくと、空間に膜のようなものが張られていることに気が付いた。

 これは境界だ。この膜の中と外では別の空間になっているということになる。


「鳥居で張られる境界膜と同じ感じですね。さて、向こうがどうなっているか」


 罠の可能性もあるが、いざというときはどうにか逃げればいいので境界膜の先へと足を進めることにした。

 さて、一体なにがあるというのだろうか。


 境界膜は少し弾力のある水面のようなもので触るとちょっと柔らかい。

 そのまま腕を突っ込んでいくとすっとその先へと吸い込まれるようにボクは飲み込まれていく。

 そしてその先で見たものは、まさかのものだった。


「まさか、あそこからこんな場所に繋がっているなんて……」


 目の前にあったのは黄昏時のような暗さの空と光り輝く空を照らすスポットライト、そしてバニーのお姉さんだった。


「ようこそ、黄昏のエンターテイメントシティへ! ここは【ラビットシティ】よ!」


 そう話すお姉さんはバニーガールの衣装を着用している。頭には飾りではなく本物のうさ耳が付いている。


「お姉さんは兎の関係なんですか?」

 

「あら? 私のことに興味があるのかな? このラビットシティは【星兎族せいとぞく】という兎系の種族が住んでるのよ」


「【星兎族】ですか。ボクは知らないですね」


 星兎族という種族については聞き覚えがない。妖系ではなさそうだけど。

 

「まぁこの世界にしかいないから仕方ないわね。ここは星兎族が運営するエンターテイメントの街よ。カジノやオークション、珍しい商品やお酒、ショーなんかもやっているわ」


「へぇ~。カジノはどうでもいいですけど珍しい商品は気になりますね」


「でしょうでしょう。可愛い子狐ちゃん。貴女が来たゲートはもう1000年くらい使われてなかったゲートなのよ。もう向こうの人は全滅しちゃったかと思ったわ」


「1000年前に来た人がいたんですか!?」

 

 星兎族のお姉さんから驚きの言葉が出て来た。なんと1000年前にあのゲートを使ってここに来ていた人がいるというのだ。


「ほら見て。ゲートの上の数字。最後の起動からの年数を数えているの。でもまだゲートを使える人が残っていたようで嬉しいわ」


 星兎族のお姉さんが指し示した場所を見る。しかし文字が特殊で読むことができない。


「ここはどういうところなんですか? エンターテイメントの街って言ってましたけど」


 純粋な興味からの質問だった。このゲートを利用していたのはボクの父の関係者なのは間違いない。

 そう考えるなら、あの廃墟は父の関係者たちの都市だった可能性がある。ただ時期が合わないので父が言っていた残った人が使った可能性があるのだ。


「ここは世界と世界の狭間にある世界よ。行き方は狭間の空間を彷徨い続けるか、地図を手に入れてここに来るか、ゲートを利用してここに来るかね。世界を自由に渡れるような人やワープができる人じゃないとなかなか難しいけどね。例えばあっちを見て」


 お姉さんの指し示した方向を見ると、巨大な船が空から降りてくるのが見えた。

 船体下部から強い光を発しながらそれは徐々に降りていく。


「あれはどこかの宇宙の宇宙船ね。ここの座標を持っている人がワープ装置に入力してこうしてやってきているの」


 お姉さんがそう話す船からは1人の生物が降りてきた。

 ボディースーツのような服を着用し、目が少し飛び出たような形をしている顔をしている。

 例えるならナマズのような顔だ。


「なるほど。ボクはこういうの初めてなので知りませんでしたが、父なら知ってそうですね。ところでこのゲートを使った最後の人ってどんな人かわかったりしますか?」


 このゲートを誰かが使ったというのなら、その人の記録が残っていたりしないだろうか。

 少なくとも今後の探索の手がかりにはなるかもしれないし、確認しておきたい。


「えーっと、調べたけど最後に使ったのは子狐ちゃんくらいの大きさの女の子ね。【ウーヌス】と名乗っているわね。【トレース】という人からの頼まれごとをしているって言ってたようよ」


「なるほど、ありがとうございます。ところでここって空間通信系使えます?」


「大丈夫よ。空間を経由する通信系なら大抵どこのでも使えるわ」


 お姉さんの言葉を聞いて安心したボクはさっそく端末から父にメッセージを送信した。

【ウーヌス】と【トレース】に心当たりはないかと。

 するとすぐに父から返事があり「【ウーヌス】が探している人物で【トレース】は私だよ。兄が【ドゥオ】なんだ」と教えてくれた。

 ビンゴだ。


「どうやら探している人物だったようです。ありがとうございます」


「あら? 見つかったの? よかったわ」


「はい。それじゃあボクはこれで」


「あ、ちょっとまって」


 足取りというか1000年前まで確かに近くにいたことが分かったのでまた別の遺跡を探すことにする。

 ちょっと時間はかかるだろうけどいずれは見つけることができるだろう。

 そう考えているとお姉さんから呼び止められてしまった。


「せっかく来たんだからお姉さんに少し街を案内させて? 時間のことなら大丈夫だから」


「えっ? でも……」


「いいからいいから。何ならおごっちゃうしサービスもしちゃうからね?」


「じゃ、じゃあ少しだけ……」


「はーい。じゃあこっちこっち。あっ、時間の話だけど、そのゲートを通れば元の時間軸に戻れるからね」


 お姉さんはそう口にするとボクの手を引いて歩きだしてしまった。

 光り輝く街へと向かって。

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