第59話 母と狐白と高天原
母、狐宮葛葉は小さくて可愛らしい人だ。身長は150cmほどで胸はまぁ程々。髪は妖狐の時は白くて長いけど人間に化けているときは黒髪になっている。顔は可愛らしくて性格は穏やか。元アイドルで現在はプロダクションの社長をしている。そんな人だ。
「お帰りなさい、狐白ちゃん。あらあんずちゃんもいらっしゃい」
「ただいまです」
「葛葉様~!」
母はにっこりと微笑むとボクを抱き寄せ、そのあとついでにあんずちゃんも抱き寄せた。
若干おっとりめだけど祖母仕込みの強さを兼ね備えている。
「なるほどぉ。あんずちゃんのむこうでの住所ねぇ。いいわ、うちの領地で登録しておきましょう。家も用意しておくから後で桜ちゃんに連絡しておくわねぇ」
父詠心の説明を聞いた母葛葉はすぐにそのように決めた。でもサクサク決めちゃっていいのだろうか。
「桜ちゃんはねぇ。私の幼馴染なのよねぇ。だから大丈夫よぉ。そういえば狐白ちゃん。天照様があとでうちに来てって言ってたわよぉ」
「あ、わかりました」
それからしばらくあんずちゃんを交えて5人で会話しているとミーティアが一度艦に戻るということなので見送る。
ミーティアは今後に備えて自分と同じ立場の6人をボクの世界に連れてくる予定だ。
父曰く、「ミーティアたちの役職は【守護騎士】というものだからね」とのこと。
彼女たち守護騎士は専用の強化外装甲を支給されているらしい。
これは小さめのパワードスーツのようなもので強力な力を秘めているのだとか。
「あ、あたしなんかが混じってていいのでしょうか……」
「あんずちゃんも混じって問題ないですよ」
若干不安そうなあんずちゃんの声をかけ、両親に近況報告。
その後あんずちゃんを見習いとして領域に行かせてはどうかという話になった。
ここで更に話が変わり、早速その件を話しに高天原へと移動することに。
▼高天原
「ここが高天原ですか? 初めて来ました! 思ってたより開発されているというかなんというか……」
ボクとあんずちゃんは共に高天原へとやってきていた。
昔は日本の里山のある田舎のような風景に広大な昔の奈良京都のような宮があったらしい。
けど今はその宮はそのままになんだか現代風に開発されてしまっていた。
まさかの先進技術神界なのである。
「そうなんですよねぇ。ずいぶん前に住みやすくをモットーに開発が進められたらしくてですね。大事な部分には手を付けずに手を付けても問題ない場所は重点的に開発をしたそうです。話によると電気自動車を導入するとかなんとか」
「ちょっとがっかりです」
あんずちゃんの気持ちもよくわかる。高天原といえば長閑な田舎のような景色と昔ながらの宮とお役所みたいなイメージだったのだから。
それが今や繁華街が出来ている始末である。なおこの繁華街にはオロチ酒造のバーがあるという話だ。
「とりあえず宮の方に行きますね。あーちゃんはそっちにいるので」
「はーい」
都会的な街並みを2人で通り過ぎ、しばらく進んでいくと朱塗りの鳥居と古い時代の宮のような建物群が見えてくる。
このあたりでは未だに儀礼的に牛車が使われているそうで、時折見かけることができるそうだ。
そんな宮の近くにいる白い狩衣を身に纏った衛士さんに声を掛ける。
「天照様に召喚されたのですが」
「はい。お名前を」
「狐宮狐白です」
「狐宮、狐白。珍しいですね。ご自宅に案内せよと記述されています。こちらです」
「あ、ありがとうございます」
やはりすでに根回し済みだったようであれよあれよとあーちゃんの自宅に案内されてしまう。
その間、あんずちゃんはずっと「すごいすごい」と楽しそうに言い続けていた。
こういった歴史的建造物を見るとテーマパークに来たような気分になってしまうのはわかる気がする。
それからしばらく歩き、いくつもの門や渡殿を越え1つの寝殿に辿り着いた。
「天照様。お客様です」
「そう。通したらあなたは下がりなさい」
「はっ」
衛士さんはそう言って一礼すると「この先へお通りください」とだけ口にし、そっと下がっていった。
「ふぅ。ようやく来たわね? ってあれ? 知らない猫ちゃんがいるわね」
そう口にして現れたのは、長いきれいな黒髪の活発そうな少女だった。
「ま、いいわ。入りなさい。くーちゃんもそこの猫ちゃんもね」
「はーい」
「し、失礼します……」
あんずちゃんはそれはもうガチガチだった。




