第56話 お正月帰省
アイリたちのための精霊を募集する前に一度家に帰らなければならない。
時間的にはそろそろ帰ってきているはずなので両親に会いに行く。
もうお正月には入ってしまっているけど、父は神社の宮司をしているのでお正月は忙しい。母は母でお正月からプロモーションの準備や撮影やライブで忙しいらしいのでやはり夜遅くに帰ってくることになる。
母は元アイドルらしいのだけど今はプロダクションの社長をしている。ちなみに人間に化けて活動していたらしい。
「ということで、ボクは一度戻らないといけませんので少し留守にしますね。アクア、みんなのことお願いします」
「はい、お任せください。クルス様、ルナ様。今日は私と遊びましょう。不足でしたらほかにもたくさんいますので」
後事をアクアに託してボクはミーティアと一緒に日本へと戻る。日本での挨拶の後は妖精郷、それから高天原と続くので若干やることが多くて大変だ。
「桃花、瑞葉、ミーティア、アルカ、イリス、アルマ、メルディアもお願いしますね。なんでしたらエメラルドたちを使ってくれてもいいので」
「いいえ、めっそうもない! が、がんばります!」
「主様。お土産お待ちしています」
「お土産待機ー!」
「お母様いってらっしゃい」
「お母様がいつもと違う服着てる」
「そうですよ。今は連れていけないのでお留守番お願いしますね」
ルナの指摘通りボクはいつものローブは脱ぎ、日本では目立たないような冬用のモコモコ服に着替えている。
クルスはルナと違って何かを理解しているようで何も聞いてこない。
ルナのほうは好奇心旺盛で色々なことに興味がある。
ちなみに天使のクルスのほうが姉らしく、魔王のルナのほうが妹なのだとか。
「はい」
「はーい」
大昔は数奇な運命に翻弄されたらしい双子は今は可愛らしい子供として暮らしている。
そういえばミーティアから聞いたけど、2人には【天使システム】と【魔王システム】が組み込まれているのだとか。今は不要となったこの2つのシステムは本来の役割は【人を導く天使】と【人々を治める魔王】というものだったらしい。それがいつしか彼女たちの管理者によって【人類の導き手】と【打倒すべき世界の敵】に置き換えられてしまったというのだからひどい話である。
「お土産は買ってきますので、楽しみにしていてくださいね。じゃあ行ってきます」
こうしてボクとミーティアは日本へと移動した。
▼日本 某所 狐宮神社 裏鳥居前
「よしっと。無事に移動できたようですね。時期が悪いと別の神社に出るという話がありますし」
「移動先がずれるというやつですか? 滅多に起きないとは聞いていますけど」
「ですです。まぁ何にしても早く家に行きましょう」
ちなみに、転移用の宝玉を使用した転移で直接自分の部屋に戻ることはできない。
日本の場合、どこかしらかの神社の鳥居にアクセスポイントを設定して移動しないと管理局に怒られるので注意が必要。
あ、管理局ってのは【高天原空間移動管理局】という高天原のお役所のこと。分室が日本の政府機関内にあるらしいけど、ボクはそのあたりのことは良く知らない。
狐宮神社は名前の通り、ボクの父が宮司をしている神社だ。一応稲荷信仰の神社なんだけど、ずっと昔から狐宮って名前がついていたのだとか。ちなみに先代宮司は母の父親、つまりお爺様になる。
「しかしお正月だけあって人多いですね。お父様は当分帰ってこれなさそうです」
「毎年のことながら人が多いですね。そういえば明日は葛葉様もお手伝いに出るそうですよ」
「そうなんです? やっぱり帰りますか……」
「だめですよ。覚悟を決めて帰省しますよ」
「ちぇ……」
お正月ということもあってか屋台も多く出ており人出もかなりのものがあった。まぁ有名な神社とは違って地元密着型なので有名神社のように警察が整理に出たりはしない。人が多いといってもそれほどではないからね。
「今年は午年だそうで馬関連グッズが良く出るそうですよ」
「そうなんですね。ボクは干支詳しくないんですよね。なんで狐年はないのでしょうか」
ミーティアに午年と教えられたので改めて参拝者を見る。すると手に何かしらかの馬グッズを持っていることが分かった。どこで買ったんだろうか。
「大抵は屋台で売っているようですけど、干支のお守りとかは社務所でも販売しているそうです」
「ふぅん。そうなんですね。あ、馬の被り物した人がいた」
ふと視線を向けると、そこには馬の被り物をした珍妙な参拝客の姿を見つけることができた。
周りからは「なにこいつ」というような視線を向けられているが本人は全くもって気にしていない様子だ。
そういえば被り物をしたりサングラスをすると自分と外界を切り離せるとかなんとか聞いたことがある気がする。
「さ、馬の被り物は置いておいて行きましょう。早めに挨拶が終われば自由にしていいとグランドマスターが言っていました」
「はーい」
というわけで馬の被り物は若干気になるものの、ボクは神社裏手の自宅へと急いだ。
道中帽子を被った猫又の女の子が猫と戯れているのを見かける。
周りの人は一切気が付いていないのが面白いところだ。
ボクたち妖種はこうやってこっそりと社会に溶け込んでいるのだ。




