第55話 アイリたちへの補給品と廃墟の館の隠し機能
▼狐白の領域内、開拓地
鈴音の領域から転移用の宝玉を使って自分の領域へと帰還。
その足でアイリたちに会いに行くことに。途中で桃花たちと話してまたちょっと出てくる旨を伝えた。
桃花の話によれば、瑞葉との共同作業で初の収穫を得たとのこと。
早速その収穫物が今日の夕食に出るのだそうだ。
良い感じの農作物が増えてきたら色々な物に加工して領域の発展に繋げていければいいのだけど。
鈴音というライバルがいるので簡単ではなさそうに感じている。
ちなみに、鈴音の領域ではお酒のほか、お味噌やお醤油を作っているらしく、それらをダラムの街にこっそり卸しているのだとか。
端的に言えば鈴音はまぁまぁお金持ちということである。羨ましい!!
▼惑星ウル イストーの街 近郊の森 廃墟の館前
イストーの街近くの廃墟の館前は現在小さな農園が出来ていた。
どうやらアイリと田中さんが協力して作り上げた成果なのだろう。
「あ、こはくちゃん! どうどう? 田中さんに聞いて農園を作ってみたんだけど、なんか不思議なことが起きちゃったの」
廃墟の館の土地は拡張できるので、自給自足のための土地を確保することはそこまで難しくはない。
とはいえ、今すぐ必要な分を得られるかというと多分無理だろう。
しかし驚いたことに、案内された農園にはすでに植物がいくつも生えていたのだ。
「? どういうことでしょう。ボクはそこまで長い期間離れてましたっけ?」
ほんの数日程度離れていただけだと思うのだけど、なぜか植物が生えている。
どういった現象なのだろう。
「驚いたでしょ? とりあえず小麦の種植えてみたんだけど、少ししか1日が経ってないのにもう芽が出てるの。この世界の植物って育成が早いのかな?」
「田中さんはなんと?」
謎の植物の正体は小麦の芽だったようだ。それにしても1日程度でもう芽が出ているなんて。
軽く調べてみたところ、数日程度で発芽するらしいけど、明らかに早いように感じる。
「1週間以内には芽が出るっていってたんだけどね。個体差とかあるのかな?」
「ちょっと調べてみますね。あっ、こちらメルディアが選んできた着替え用の古着です。着られるか試してみてください」
というわけで早速この場所について端末で調べることにした。ついでに買ってきた古着をまとめてアイリに手渡しておく。
「ありがとう。ちょっと試してくるね」
アイリはそういうと、テントの中に入っていった。
そういえば田中さんはどうしたんだろうか。
「ふむふむ。なるほどなるほど。これはチートですね。植物の育つ速度がゲームみたいになってます」
調べて分かったことは、この領域内では植え付けから収穫までが遅いものでも3か月、早いものでは1週間程度となるようだ。
ただし注意点がいくつかある。まずこの領域内で育った植物はこの領域の存在する世界までしか移動させることができない。
つまりこの惑星ウルを含むこの世界でなら販売することができるということのようだ。逆にボクたちの領域への輸出はできないらしい。
ほかには育成機能を有効にするためには所有者が必要な属性の精霊と契約している必要があるようだ。
ボクの場合は植物の精霊含む多数の精霊と契約しているので条件はクリアされている。
「多めに作物を作ってイストーとかで売って、そのお金で素材を買えば魔法錬金が捗りそうですね。ちょっと遠回りですが確実にポイントを稼げる非常に良いチャンス」
10万ポイントという価格なれどそれ以上の価値がある土地ということが分かった。
だいぶズル、もとい楽ができますね。
「こはくちゃーん、着替えて来たよ~。って何にやにやしてるの? 可愛いけど怖いよ?」
テントから出て来たアイリにひどいことを言われた気がするけどスルーすることにした。
さっそく服を着てくれたようなので確認する。
「すごいね。サイズぴったりだったよ。丈夫そうな作業服もありがたいしちょっとお出かけ用に着る服もありがたかったよ」
今回購入したのは作業用のカーキ色のオーバーオールのような服と中に着る白いシャツ類、おでかけようのワンピースだ。
今アイリが着ているのは作業着となるオーバーオールのような服と白いシャツの方。というかもうオーバーオールっていっちゃうほうが楽だ。
「ふむ。なかなかお似合いですよ。この場所について調べてみたんですが、農作物は結構早く成長するようです。元々育つのが早い根菜類なんかも1週間程度で育つそうです。ラディッシュの種を購入しておきましたので試しに育ててみてください」
「へぇ~、一週間で育っちゃうんだ!? ありがとう、やってみるよ」
「はい。とりあえず収穫出来たら味をみてください。良さそうでしたら街で販売しちゃいましょう」
「わかったよ。やってみるね」
調べた感じでは大体育成速度は1/3くらいになるようだ。つまりかいわれ大根やもやしなんかは数日以内に収穫できることになる。
毎日もやしパーティーできますね。
「そういえば田中さんはどうしたんですか?」
気になっていた田中さんの行方についてアイリに確認してみることにした。
すると「イストーの街の商業組合に行ってるよ」との返事をもらった。
「なるほど。農業で生計を立てるつもりなんですね」
「そうそう。なんでも市民農園で色々育ててたんだって」
何と田中さんは農業経験者だった。とすると、この土地と田中さんは相性がいいことになる。
お手伝いに植物の精霊や水の精霊を派遣するのもありかもしれない。
「ではちょっとお手伝いを連れてきますので待っていてください。農業向きな精霊がいるんですよ」
「えっ、精霊!? 精霊なんているの!?」
「はい、いますよ。会ったことありませんでしたっけ?」
ミリアたちとは会っているはずだけど、そういえば精霊人で通してるんでしたっけ。
「ないない! うわーどんなことなんだろ? 動物型かな? やっぱり透けてるのかな!?」
アイリは精霊と聞いてテンション爆上がりのようだ。どんどんハードルを上げていってしまっている。
ごめんなさいアイリ。人型で人間と見た目何1つ変わらないんです。
しかしこの判断がアイリの可愛いもの好きに火をつけることになるとは予想できていなかったのだ。




