第52話 都市ダラムと露天風呂からの風景
室内大浴場は大きなお風呂での入浴の後滝湯に打たれてめちゃくちゃ楽しんだ。
なんとなくスーパー銭湯とかを思い出すのは気のせいではないはずだ。
少し楽しんだ後一度露天風呂を堪能するために室外浴場へ。
「ふむ。景色は微妙ですね」
周辺には高い建物がないので遠くまでよく見渡せるものの、良く見えるのは下に広がる町並みくらいだった。
正面はずっと先に大きな壁が立っているためそこから先に広がる雄大な自然を半分くらい壁が遮ってしまっている。
非常に残念だ。とはいえ、その先に広がる森や草原、街道や小さな村まで見えるのは中々の景色だと思う。
ただ海の方は見えないようで、その先がどうなっているかはわからない。ついでにいえば川は見えるけどボクの購入した家はここからじゃ見ることができなかった。
「狐白ちゃん、外をじっと見てどうしたの~?」
景色をじっと眺めていたせいか、カルラさんの接近に気が付かなかった。まぁイタズラしてこなかったので良しとしましょう。
「いえ。考え事を」
「考え事ねぇ~」
のんびり露天風呂に入りながら景色を見て考え事をする。これは幸せなことだと思う。
「ミライタッチ!」
「ちょっと!? クーネ、お尻触らないでよ!?」
「ミライタッチ」
「エリーまで!?」
「子供ですか。ミライも触られたくなかったら狐白ちゃんを無理矢理触ろうとしないこと」
「そ、そんなこと考えてないよ? エミル」
露天風呂に来てまでも騒がしい人たちのようです。というか触ろうとしないでほしいんですけど。
「はぁ~、良い景色ね~。それにしても最悪。彼氏がほかの女と宿から出てくるところ見ちゃった」
「あ~、それは災難ね。一応複数人との結婚は許されてるんだから大目に見るしかないんじゃない?」
「いやよ。私は1人を愛してくれる人が好きなの」
「まぁわかるけどね~。世の中うまくいかないよ」
「一夫多妻も一妻多夫も難しいから仕方ないよね」
近くにいた女性たちからそんな話が漏れ聞こえてきてしまった。
何やら込み入った事情がありそうで聞くのが非常に怖い。
「まぁ諦めなって。婚前交渉は最近多くなったって聞いてるし。選んだ相手が悪かったって思いなよ」
「はぁ。どこかにいい男いないかなぁ~……」
どうやらこの女性は別れることを決意したようだ。
それにしても一夫多妻に一妻多夫ですか。ハーレムができる世界の人たちは大変ですね。
「狐白ちゃん、どうしたんですか? 可愛い顔が台無しですよ?」
近くにいた女性の話を聞いてなんとなくげんなりした気分になっていた時、エミルさんが近くにやってきたのだ。
エミルさんは可愛いものが大好きなエルフの女性だ。割と常識人のようだけどね。
「なんでもないです。世の中色々あるんだな~と思いまして」
「ふむふむ。可愛い狐白ちゃんは男女関係の話を聞いてしまって疲れてしまったと」
「やけに詳しいですね。聞いてたなら聞かないでくださいよ」
「あはは、ごめんなさい。まぁ色々ありますよね。狐白ちゃんは十分に気をつけてくださいね。可愛い女の子は狙われやすいです。幼い女の子も狙われやすいのでなおのこと」
「肝に銘じておきます」
エミルさんは可愛いものが大好きという割には距離感を考えて接してくれるのでちょっと付き合いやすいと感じる。やたらと触ってこようとするカルラさんやミライさんとは大違いだと思う。
「狐白ちゃんは素直で良い子ですよね。うちのメンバーももう少しまともだったら」
突っ込み役のエミルさんには同情する。クーネさんもエリーさんも悪ノリしなければまともな感じなんですけどね。
「はぁ。長湯しすぎたみたいです」
「そうですね。休んでからごはんに行きましょうか。こらクーネ、エリー、ミライ。いい加減にしなさい」
若干のぼせた感覚を感じたところでお湯に入るのはいったん中止にして休憩に入る。
ボクが湯船から上がるのと同時に、湯船に浮かんで遊んでいたメルディアもいそいそとついてくる姿が見えた。
ちなみにクーネさんとエリーさんとミライさんは湯船の中でカルラさんとエミルさんに怒られていた。
少しは周りの迷惑を考えましょうね。
とはいえ、言及こそしなかったもののほかの女性客もまぁまぁはしゃいでいたのは内緒である。
「ふぅ。いいお湯だったわ~」
しばらく休んでみんなで室内へ戻り、そのまま着替えて夕食に向かう。
今日は例のイタリアンシェフのパスタ料理を食べてみようと思ったからだ。
「イタリアンって何かしらね」
「最近ダラムから流行っているっていう細長い小麦料理らしいですよ」
「小麦料理っていえば細かく丸めて茹でたやつが昔からあったよね」
「あー。あれねぇ……」
どうやらパスタ系は知らないようだけど、クスクスのようなものは知っているようだ。
これは放っておいてもパスタ系へと発展したのではないだろうか。
「それにしても、狐白ちゃんの白いローブの下ってそうなってたんですね。知らないデザインですが可愛いです」
エミルさんが白いローブを着る直前のボクの中に来ている服に目を付けた。
ボクは基本的に外側は白いローブで済ませているけど、中は中で別に服を着ている。
白ローブの下は直接素肌ないし下着ではないのだ。
「信頼度が低いのでまだ教えませんよ」
「狐白ちゃんの意地悪」
エミルさんは拗ねてしまったけど、ボクみたいなタイプの信頼度を上げるのはなかなか大変だと思います。
ぜひ頑張っていただきたいところ。
それから下着がどうの、どこで買ったのかなど騒ぎながら騒がしい一行は1階食堂へと降りた。
「オーウ、いらっしゃいませ~。お待ちしておりました。ささ、お席にどうぞ」
食堂に入るとなぜかマイクさんがいた。やはりテンションが高い。
「こちら、メニューです。アメリカンは私、イタリアンは【前田健人】が対応させていただきます。和食は、残念ながらシェフらしいシェフがいませんので【健人】が作る一般的な物になってしまいます。最近味噌と醤油が流通しだしたのでいい味のものが出来ておりますよ。他の料理についてはシェフ募集中です」
さっそく渡されたメニューをみんなが見ている。そんな中ボクは気になっていることがあった。
アメリカ料理とはいうけど、大きな括りすぎて中華料理みたいな枠になってしまっている気がする。
先住民料理から各地方の料理まで幅広く異なった味があるのがアメリカ料理なので、どの地域のものなんだろうかということだ。
「アメリカンってどんなものなんですか?」
エリーさんがメニューを見てさっそくマイクさんに質問を投げかける。
「今日は良いお肉が手に入りましたのでステーキがお安くなっております。それ以外ですとガンボ、ベーコンエッグ、バーガー、シカゴピザなどなど各地方の料理もある程度、メニューに載っている分はお出し出来ます。テクスメクスも出したいのですが豆が足りません。入手する経路はないものでしょうか」
「はー」
どうやら色々な地方の料理をマイクさんは覚えているようだ。
個人的にはチリコンカーンが食べたいのでテクスメクス系やメキシコ系がないのは少し悲しい。
輸入、考えてみますか。でも全額ポイント制なので金銀財宝程度じゃ還元率悪いんですよね。
霊薬類とかなら高く売れるんですけど。主にお酒にされますが。
「じゃあ私この貝の白ソースパスタというので」
「魚介類のパスタというのをお願い」
「うーん。シカゴピザなるものをください」
「ステーキというので。最近話を聞いたところだったんですよね」
「同じくステーキで」
「じゃあボクはきつねうどんで」
メニューの端に載っていた油揚げのうどんを頼むことにした。
「はい、かしこまりました。ボンゴレビアンゴ、ペスカトーレ、シカゴピザ、ステーキは今日はサービスでTボーンステーキにしますね。それときつねうどん。ってよくきつねうどんを知っていましたね?」
「たまたまですよ」
あ、まっず。これはバレました?




