第51話 ドタバタお風呂タイム
ここダラムINNの大きな浴場は2つある。
1つは1階にある大浴場。そしてもう1つは屋上にある露天風呂だ。
ダラムINNは門に近めの大通り側に存在しているのだが、敷地範囲を広く取っているらしく別々の趣のある2棟の施設と色々なお風呂が楽しめる大きな大浴場2つ、露天風呂付大浴場2つを備えている。なかなかの資本力である。
どちらの棟からでも露天風呂にも大浴場にも行ける設計になっているらしく、中央の合流地点で男女別に分かれている。
というわけでやってきました露天風呂付大浴場。通称露天風呂。
ここでは室内で楽しめるお風呂と周辺の景色を楽しめる露天風呂の2つが存在している。
お湯の運搬や浄水などは何やら魔導技術を使っているらしく、ポンプでどうのといったものではないようだ。
ちなみに、この周辺でこのだらむINNより高い建物はないらしく、また遠くから覗けないように色々な工夫をこなしているようだ。
なので安心して入浴することができる。
「更衣室の先に大きなお風呂と外に用意されたお風呂があると。外で入浴ってなんだか興奮しますね」
そんな発言をしたのは猫耳神官のミライさんだ。露出願望でもあるのだろうか?
「狐白ちゃん、ミライはバカだから放っておいていいからね」
ストレートなカルラさんの罵倒が火を噴く。
「あんなのが神官なんて間違っている気がするわ」
続いてエミルさんによる追撃が発生。
「私たちのパーティーの汚点ですね」
エリーさんの容赦ない罵倒が良い感じにミライさんに追い打ちをかける。
「露出したいならいいけど、捕まらないようにしてね」
クーネさんは諦めモードな様子。もしかして前科が?
「みんなひどくないですか? 獣人系なら誰しもある願望ですよ。ねぇ? 狐白ちゃん」
散々な言われようである。さすがのミライさんも目に涙を浮かべているけど、そこでなぜボクに振ったのか。
「ボクに振らないでください。そんなこと思ったこともないですので」
「そ、そんな~!? 同じ仲間だと思ったのに!!」
「あほなこと言ってないで早く脱ぎなさい。いつまでもお風呂に入れないじゃない」
「はーい」
もはやミライさんのお母さんと化しているカルラさん。さすがというかなんというか。
尊敬していいですか? いや、やめておきましょう。
▼ダラムINN 露天風呂大浴場部
大浴場とはいうものの、実際には大きなお風呂といくつかの小さなお風呂、それと滝のような打たせ湯が設置されている程度だ。部屋数はそこまで多くはないのか入っている女性客はそう多くはない。
1階の大浴場はここよりもっと広いらしいので、おそらくそっちの方に行っているのだろう。
「ふむふむ。なかなか良さそうなお風呂ですね。軽くあちらこちら入ってみてから露天風呂に行くルートにしましょうかね」
入り口にある看板には『髪の毛などはできるだけ上げていただけると助かりますが、獣人種など無理な場合には湯船に毛をつけても問題ありません。上がる際に周囲に毛が浮いていましたら救い上げていただけると助かります。出来る範囲でのご協力をお願い致します』と書かれていた。獣人にも配慮しているらしい。
「それにしても狐白ちゃん、薄くて細くて小さくて、すっごく可愛らしいわ」
「……」
ボクの正面に立ち振り向いたカルラさんの口から発せられた一言がこれだ。
さすがのボクもドン引きである。
「カルラってそういう趣味があるの?」
「ち、違うわよエミル! 私はただ可愛いな~って思ってただけで」
「狐白ちゃんの尻尾の付け根見っけ! こうなってるのかー。あっ、ちょっとまって!? 痛い痛い! エリーやめて!」
「馬鹿ミライ馬鹿ミライ馬鹿ミライ」
セクハラミライさんは鬼の形相のエリーさんに踏みつけられている。
周囲の視線が痛いのでやめてほしいのですが……。
「メルディアの姐さん、お背中お流しいたします~!」
ドワーフのクーネさんはいつの間にかメルディアの舎弟になったようで、メルディアの背中を流そうと張り切って待機している。
薄々気が付いていましたけど、このメンバーって変な人しかいないのでしょうか。
「カルラ。ミライを見なさい。ああなりたいの?」
「大変申し訳ございませんでしたっ!」
この人たちは入り口で何をやっているのだろうか。
もう放っておいてさっさとお風呂で癒されよう。
そう考え集団から離れて1人で近くのシャワーに向かい、身体を軽く流す。
そして髪の毛を洗い終え身体を洗おうとした時、メルディアが近づいてくるのが見えた。
どうやらボクの背中を流したいらしい。
「メルディアですか。じゃあお願いしますね」
メルディアは嬉しそうに頷くと、そっと優しくボクの背中を洗い始める。
それからしばらく、メルディアがボクを洗い、メルディアをクーネさんが洗った後ボクたちは揃って湯船に向かった。
温度良し。
「ふぅ~。お風呂はやっぱり落ち着きます」
「ほんとですね~。メルディアの姐さんもすっかりとろけてしまっていますし」
クーネさんの言葉を聞いてメルディアを見る。
すっごくにっこりした表情でお湯を満喫していた。
フェアリーノームってお風呂好きなのですかね。
「メルディア。あっちにも大きなお風呂作りますか」
何気ない提案。その提案を聞いた瞬間、メルディアは目をカッと見開くと高速でコクコクと頷いた。
今あるお風呂はボクの部屋のなのですごく小さいんですよね。
最大でも2人くらいしか入れないですし。
「狐白ちゃんのおうちってどこなんですか? 私も行ってみたいな~」
「クーネさんですか。うーん」
「だめ~?」
「相談してみて大丈夫そうならお誘いしますよ。それまではダメです」
「それでいいから~」
クーネさんはボクの返答を聞いてご満悦。どうやら検討してくれるだけでも嬉しいらしい。
とはいえどうしたものか。普通に来るとドワーフといえど取り返しのつかないことになるわけで。
お湯に浸かりながらそんなことを考えているとメルディアが「一緒に考えよう」と言わんばかりのサムズアップをしていたのが見えた。
まぁ良い案出たらにしますか。
そんなことを考えていると、カルラさん、エミルさん、ミライさん、エリーさんも湯船にやってきた。
どうやら始末がついたらしい。
カルラさんにもミライさんにも外傷はないものの、どことなく落ち込んだ気配を感じる。
相当怒られたようだ。残念ですがセクハラは許されませんよ。
こうして色々あったものの、ようやくゆっくり湯船に浸かることができた。
次は露天風呂に向かいますよ!




