第50話 ダラムへ帰る
両親からの嬉しいプレゼントの整理を終えたその足でベアトリスさんの領域へと戻ることにした。
付き添いはベアトリスさんとメルディアのみ。他の子たちはまたあとでということで1回残ってもらうことにした。
というわけで再びやってきました、精霊界ベアトリスさんの領域。ここでボクは持ってきた転移用の宝玉を1つ台座にセットし設置する。こうすることで向こうとこっちのリンクを確実にすることができるというわけ。
転移用の宝玉は色々な機能と役割を持っている。その1つが【転移】だ。しかしこの【転移】というのは【空間の固定】と【対象先空間の座標固定】という2つの役割を担っている。
つまるところ、この【空間の固定】と【対象先空間の座標固定】がなければ転移はできないのだ。
もし仮にこのベアトリスさんの領域が、人間界の異変により繋がりが途切れてどこかに行ってしまったとしても、【対象先空間の座標固定】さえあれば探し出すことができる。なかったらどこにいったかわからないままになってしまうけど。
ちなみにボクの領域へ来る訪問者は基本的に座標アドレスを元にやって来ている。これもまた転移用の宝玉に設定・閲覧することができるのだけど、それはまた別の話になる。
「接続先をボクの領域に設定したので、これでもしこの領域を他の世界が見失っても見つけ出して移動することができるようになりました。ひとまず安心ですね」
「ありがとうございます、狐白様!」
ベアトリスさんは当面の問題が回避できたことが嬉しいのか可愛らしい笑顔の花を咲かせた。
美少女ということもあってかボクから見ても可愛らしいんですよね、この精霊。
多分人間界の男性諸君には絶大な人気を誇っていることでしょう。
好きですよね? 深窓の令嬢のような見た目の可愛らしい美少女。
「では一旦ボクたちは戻りますね。いつでも自由に行き来していいのでまたあとでお会いしましょう」
「はい! また後ほど」
こうしてボクたちはダラムの街の契約の神殿へと戻ってきた。
そのまま扉の外に出るとパウロ神官が待機していた。もしかしてずっといたのだろうか。
「おかえりなさいません、狐白様。無事我らが神とお会いできたようですな」
ニコニコとした人の良さそうな笑顔でパウロさんがボクに問いかける。
「無事に会うことができました。ところでパウロさんはお会いになったことは?」
完全に興味本位からの質問だったのだが、パウロさんは首を横に振って「残念ながらありません」と答えた。
どうやらパウロさんだけでなく、全員会ったことはないらしい。
「お声を啓示として賜ることはできますが、私どもがかの神の世界へ足を踏み入れればただでは済みません。今回、狐白様をお呼びしたのはかの神のたってのご希望でした。【従える者】であると」
「なるほどです。なかなか可愛らしい方でしたよ」
「でしょうな。お姿については像やでしか確認できませんが、大変可愛らしい方であると認識しております。対外的には神像ではなくシンボルを公開しておりますので、まぁ一般的には知られておりませんが」
どうやら各神殿の神は神像ではなくシンボルを一般向けに公開しているらしい。
神像は各神殿の最奥の間に置かれ、そこでのみ姿を拝むことができるのだとか。
あんなに可愛らしいのにもったいない。
「ところで狐白様はこの後どうされるのですかな?」
パウロさんに言われて、この後の予定を考えてみる。基本的には街を巡って商品を探して仕入れて売って、魔法錬金でなにか作ってこっちで売ってお金を稼ぐくらいしか何も考えてはいない。
「特にはないですね。観光と買い物くらいでしょうか」
「なるほど。ではトラブル避けのために契約の神殿の印章をお送りさせていただきます。何かありましたらこちらをお使いください」
パウロさんはそう言うと何やら丸く小さな円盤を取り出した。そして「印章の授与」と軽く言葉にする。
すると印章が光を放ったのだ。その光はそのまま収束し、何事もなかったかのように元の状態へと戻った。
「こちらを。お困りの際、トラブルの際はこちらをお出しください」
「ありがとうございます」
パウロさんから受け取った印章をバッグにしまうと、メルディアの手を取る。
「それではそろそろ街に出ますね」
「えぇ。またいつでもおいでください」
こうしてボクたちは契約の神殿から外に出た。
そしてそのまま周辺を軽く見て魔法錬金術用の素材を買い集める。
なかなか良いものがあったので後で薬にしておこうと思う。
特にスタミナ系魔法薬の素材が豊富だった。
「これだけあればエナジードリンクが作れそうです」
素材というよりは成分を抽出して集めてエナジードリンクを作ろうと思う。
その後、宿に戻るとカルラさんたちにお風呂に誘われてしまった。
「ねぇねぇ狐白ちゃん、一緒にお風呂いこうよ〜!」
「えっ、嫌なんですけど」
「塩対応! 行こうよ行こうよ〜」
お風呂は1人でゆっくり入りたい派なのでとりあえず断ったら駄々をこねられてしまった。
いい大人なのに。
「はぁ、わかりました。でも距離詰めないでくださいね」
「しないからしないから!」
「えぇ〜!?」
カルラさん以外から抗議の声が上がってしまった。伏兵は他にいたのだ。
エリーさんやミライさんをなんとなく白い目で見ていると不意に袖をクイクイと引っ張られる。
何だろうと確認してみると、メルディアがいい笑顔でサムズアップしていた。
「……。はぁ」
無事に落ち着いてお風呂に入れるのだろうか。心配で仕方ない。




