第46話 ダラム観光と契約の神殿
都市ダラムは高い建物が多く建つ街だ。そのせいか若干窮屈に感じることがある。
というのも、規模はかなり大きく広いのに大通りなどに建物が密集しているからだ。
ちょっともったいないな~なんておもいつつ、ボクとメルディアは手を繋ぎながら契約の神殿を目指す。
幸いにもまっすぐ行った場所に開けた場所があるので場所だけはすぐわかるのでありがたい。
「ねぇ見てあの子達。手を繋いじゃっててかわいい〜」
「お姉ちゃんと妹かな? あ、でも片方は獣人系の子かぁ」
「仲良くて微笑ましい〜!」
道行く人々の声が時折聞こえてくる。どうやらボクがメルディアの手を引いてるという点が注目を集めているらしい。なんか急に恥ずかしくなってきたんですけど。
「それにしても、メルディアはすごいニコニコしてますね」
そんな声が聞こえる中、メルディアの顔を見てみると嬉しそうにニコニコしていたのだ。
そんなに嬉しいものですかね。まぁメルディアがいいならいいですけど。
どうやら恥ずかしがっているのはボクだけのようだ。
「まったく……」
とはいえ、メルディアが嬉しそうならまぁ良しとしよう。
そんなわけでボクたちはダラムの通りを駆け抜けていった。
宿から契約の神殿のある合同庁舎付近までは体感3キロ近くあった気がする。結構長く歩いたような疲労感があるからだ。ただ道が真っ直ぐだった分幾分疲労はマシだろう。
というわけでやってきましたダラム合同庁舎前。
建物自体は大きいものの高さはなく1階から2階建て程度の大きさだと思われる。
議事堂も併設されているらしく、日本でも見たような形の造形を見ることができた。
説明書きによればこの議事堂は近年建てられたものだという。それまではもう少しおとなしめのものだったよう
だ。
この庁舎と議事堂の後ろ少し高い位置に例の契約の神の神殿が存在している。なかなか大きな建物で広さもかなりのものがあるように思える。一番特徴的なのは正面上に設置された鐘楼だろう。見応え十分である。
「ほほぅ。巨大建築は見てて楽しいですけど、歴史的建造物も味わい深くていいですね」
議事堂とは違い、この神殿はもっとずっと昔に建てられたものだという。最近まで改修工事を行っていたようで、まだ一部に足場が残っている。
「地球で見たような大聖堂もこんな感じだった気がしますね。写真ですけど」
実物は見たことがないけど写真で見る大聖堂にも似たような印象を受ける。もしくは法王庁とかそっち系。
「ふむふむ。なかなかいい感じですね。ボクのところにも1つくらいほしいかも」
そんなことを思ったものの、たぶんボクのところに真っ先にできるのは平安京とか平城京みたいなああいう街か江戸みたいな感じになると思う。最近若干そんな気配が漂ってるんですよね。ノームさんたちは石造りの家を建ててるけど。
「メルディアはどう思います? 契約の神殿のような建物って」
なんとなくメルディアに契約の神殿について尋ねてみる。すると首を少し傾げた後に身振り手振りで「まだまだですね」と言わんばかりの動きをした。
「もしかしてメルディアの住んでいる場所はもっとすごかったり?」
さらに深堀してみると、「当然」と言わんばかりの強い頷きを頂いた。どうやらメルディアの世界は色々と面白いことになっているようだ。
狩りが上手なのでてっきり竪穴式か横穴式だと思ってたんですけどね。
するとメルディアが「そのうち連れていく」というようなジェスチャーをしてくれた。
どうやら招待してくれるらしい。
「ほほぅ。それはそれで楽しみですね」
そんなこんなで話しつつ議事堂を回り、契約の神殿へとたどり着く。
遠くから見ただけでも大きいと思った神殿はやはり大きかった。ボク何人分だろうか。
「おや? 中に入ってもいい日みたいですよ? 入ってみますか?」
ちょうど入り口のとは開け放たれており、たくさんの人が中に入っていく光景が見えた。どうやら何か祭事のようなことをやっているらしい。
というわけでメルディアに問いかけると「行く」という返事を得たので、一緒に神殿内へ。
「ほほぅ。大きいですなぁ」
神殿は扉も大きかったが、中も大きかった。
天井にはフレスコ画のような絵画が描かれており、幾人もの女性たちが描かれていたのが見える。
そんな描かれた女性たちの中に、見知った顔があることに気づく。アクアたちだ。
この絵は精霊たちを描いたものなのだろうか。
「おや。小さいのに天井画に興味がおありですかな?」
不意に声を掛けられたので視線を向けると、そこには神官の衣装を着た老人の姿があった。
「ははは。突然お声掛けして申し訳ない。よろしければ、あの天井画について少し説明をさせていただければと思いましてね」
ボクは何も答えなかったが、老人は語りたいようだったのでちらりと視線を向けてから再び天井画へと視線を戻した。
「あの絵は創造神が去った後に世界を託された女神たちを描いたものです。水の神、火の神、土の神、風の神、光の神、闇の神、そして契約の神。世界は彼女たち女神によって長く管理されてきました。各神殿の神殿長や巫女は科の女神たちの声を聞き、それを皆に伝える役目があります」
老人は静かに語る。それは世界の話であり、女神の話であり、ボクの身近にいる存在の話でもあった。
創造神が去った理由は不明だけど、創造神には心当たりがある。そんなボクの心のうちを知ってか知らずか、老人はまた再び語った。
「星神教は【星を渡りし者】とも【世界を渡る者】とも言われている去りし創造神たちを祀る者たちの集まりです。古くは彼らの子孫の血筋の者であったとか。しかしあの絵に描かれた女神たちも例外ではありません。私たちが祀る女神たちは精霊王とも呼ばれております。去りし創造神たちが生み出した世界を管理する存在。それが彼女ら女神たちなのです。私たちは創造神の血筋ではないものの、彼らに関連した存在を祀っている者たちなのです」
ボクは再び老人に視線を戻す。どんな表情で語ったのかが気になったからだ。
しかし老人の顔は穏やかな笑顔を浮かべていた。
そしてこう口にした。
「我らが契約の女神が貴女にお会いしたいと。狐白様」
老人は何を知っているのだろうか。




