第45話 お部屋でのひと時
メルディア騒動はひとまずボクの支払いでどうにか落ち着いた。
料金は1人1万クレムだそうで、まぁまぁお高いお値段となってしまった。
とはいえ、心配してきてくれたんだからボカァ喜んで出そうじゃないかと。そう意気込んで支払いをしたらメルディアにやたらと感激されてしまい、10億の品物を押し付けられそうになってしまった。
ボクはまっとうな商売がしたいので意味もなく10億は受け取りません。受け取らないので悲しそうな顔をしないでください。
「無事に落ち着いて何よりです。お部屋はいかがなさいますか?」
マイクさんはメルディアの部屋どうするかボクに尋ねて来た。どうと言われてもボクの代金はボクが出したわけじゃないので決めることができない。
なのでカルラさんたちのほうを見る。全員頷いていたので「一緒の部屋で」とマイクさんに伝えることに。
「素晴らしき友情! 素晴らしき愛! わかりました。お部屋の方はご一緒ということで。それだけだとなんですので、お料理はサービスさせていただきますね。それと、わたくし感動しました。でーすーのーでー、次回ご利用いただける優待券を特別に進呈いたしまーす! これ一枚でなんと、一泊無料です。お料理食べ放題ドリンク飲み放題、お風呂も入りたい放題の特別チケットです! どうぞ、お納めください」
マイクさん、めちゃくちゃ押しが強い人だった。彼の何がボクたちにそうさせるのだろうか。
「あ、ありがとうございます」
受け取らないという選択肢はない。なので速やかに受け取ることに。
「いえいえ。素晴らしいものを見せていただいたお礼です。あぁ、そういえば。狐白さん、貴女からは不思議な雰囲気と力を感じますが、貴女と同じような少女に出会ったことがあります。わたくしがこのダラムINNを作るきっかけになった少女でもあるのですが。時に、鬼人族の少女で【鬼那】という名前に心当たりはありませんか?」
マイクさんはその少女との出会いがきっかけでこのダラムINNを作ることにしたらしい。
「ええっと、運営方法を学んだとかですか?」
「はい。このダラムで出会ったのですが、その方はとある場所で旅館を経営しているらしく、わたくしがあこがれの日本で営業する予定だったはずの古き良き旅館の話をした際に、懇切丁寧に指導してくれたのです」
「うーん。どうでもしょう。もし知り合いに居たら教えますね」
「はい。お願い致します。それではごゆるりとお楽しみください」
マイクさんが出会ったという鬼人族の少女。門番の人も同じようなことを言ってたっけ。
「うーん……」
「どうしたの? とりあえずお部屋に行きましょ」
覚えがあるようなないような、気持ち悪い間隔が抜けないまま、ボクたちは部屋へと歩いて行った。
「わー、すごい! これが畳というやつね! 部屋の入口で靴を脱ぐんだって!」
「もう、はしゃがないでよ。子供じゃないんだから」
「なんか地べたに座るのって不思議な感じ。これが草を編んだものっていうんだから驚きよね」
畳敷きの部屋はおおむね好評のようだった。たしかに素足で歩いても感触がいいよね。
「部屋にポツンと置かれている、ええっと、ちゃぶ台?」
「普通の机じゃないの? 何よちゃぶ台って」
「何かの本で読んだのよね。ええっと、これが座布団?」
初めて見るであろう旅館にありがちな日本の小物や家具を見てはしゃぐ大人たち。賑やかなのは良いけどもう少し落ち着いてほしいところ。
「はいはい。みんな騒ぎすぎよ。一番小さい狐白ちゃんが落ち着いてるんだからみっともない真似しないの」
カルラさんの鶴の一声でみんなが落ち着いてくれた。しかも何やら気恥ずかしそうな顔をしているんですが、なんでボクを見て反省してやがるんですかね。一番小さいって身長ですか? 年齢ですか?
そんなことを考えているとカルラさんが声を掛けてきた。
「ところで狐白ちゃんは何かしたいことある?」
「え? う~ん。とりあえずまだ時間はあるので街を見て回りたいですね。ボクは初めてなのでよくわかりませんし」
ダラムに来てからはそれなりにドタバタしてしまっていたのでまだ何にも見られていないのだ。
とりあえず観光名所とかあればそっちを先に行きたいのだけど。
「そうねぇ。私たちは整理とかもあるからまだ一緒に行けないけど、契約の神殿を見てくるのはいいかもね。ここダラムでは一番の建物でもあるし」
「ふむ。契約の神殿ですか。契約の神というのも興味ありますし、ちょっと見てきますかね」
星神教の神殿では契約の精霊と呼ばれ、それ以外の場所では契約の神と呼ばれる存在。どんな存在なのだろうか。
それとは別にこのダラムにいるという日本人も調査しておきたい。もしかすると帰りたい人もいるかもしれないしね。
というわけで次の行き先は契約の神殿となった。あとついでに日本人探しと何か売り物になるものも探してみようかなと思う。
「それじゃちょっと行ってきます。メルディア行きますよ」
ボクはメルディアの手を引いて宿の部屋から飛び出した。
まず向かう先は契約の神殿にしよう。




