第43話 ようこそダラムへ1
ダラム防壁内の建物は高さはまちまちで、低いものは平屋建て高いものでも5階程度の中層建築になっていた。
平均すると3階建てが多いような気はするけど、どれも石材で作られているという共通点がある。
たまに木造建築があるものの高くても2階建てくらいまでが多いように見受けられる。
カルラさんたちパーティーはそのまま宿を目指すようだ。
カルラさんのパーティーは総勢5名。お姉さん気質の赤髪美人さんの前衛カルラさん。
可愛いものや可愛い子が大好きな金髪エルフの斥候兼アタッカーのエミルさん。
ボクの尻尾を執拗にモフりたがる猫耳神官のミライさん。
やたらと絡んでくる精霊系人族のエリーさん。
ボクについて術に興味深々なドワーフ魔術師のクーネさん。
以上がカルラさんの愉快なパーティーメンバーたちだ。
ちなみに精霊系人族は精霊人と人族のハーフらしいので1/4くらいは精霊の血が入っているらしい。
ここで出てくる精霊とは人型で生活するミリアたちのようなタイプの精霊で、光の球のままうろつくような根源精霊のことではない。
そんなミリアたちのような精霊を管理精霊というらしい。根源精霊はその管理精霊の手足となって各場所で働く部下なんだとか。
「ところでこれから行く宿なんだけどね。なんでも料理がおいしいって評判なのよ。最近増えて来たけどまだまだこの地方じゃ珍しい黒髪の料理人がいてねぇ。なんでもイタリアン? とかいうよくわからない種類の料理を出すらしいのよ」
カルラさんの話ぶりからするとイタリア料理の料理人の迷い人なのだろう。まぁ転移者といったほうがわかりやすいだろうけど。
やはりダラムには多いのだろうか。前に自転車を売っていた人もそんなこと言ってたし。
「ところで狐白ちゃんはなんでダラムにきたの? 見たところまだ小さいようだけど」
エミルさんはボク事が気になるようで、なんでダラムに来たか理由を尋ねてくる。
いやまぁ確かに身長は小さいですけどね。
「これでも一応18歳ですからね」
「やっぱりまだまだ子供じゃない」
「えっ? 18歳なの!? 小さすぎない!?」
「私これでも20なんだけど、狐系の子は18歳だとまだ小さいのかな? いやでもこの前見た狐の人は私より身長高かったけど」
猫耳神官のミライさんは何か失礼なことを考えている様子。というか20歳だったんですね。ある意味近いですね。
「獣人のことは分からないけど、ほかの種の獣人とは関わりないわけ?」
「ないよ~。だって基本獣人って同じ系統で集まることが多いし。だから猫系のことはなんとな~くわかっても犬系とか狐系とかそっちのほうはぜ~んぜんわからないの」
「へぇ。色々あるのね。でもやっぱり長生きなエルフ族からすれば狐白ちゃんはまだまだちっちゃい子供なのね。ということは私たちも子供ってことでいいのかしら」
エミルさんのボクへの言葉を聞いてにっこにこ顔で問いかけるカルラさん。しかしエミルさんはしかめっ面をすると「人間族なんだから大人に決まってるでしょ」とつれない返事を返す。
「ふぅん? じゃあミライも?」
顔を引きつらせながら再度カルラさんが確認するが、エミルさんは「種族的には獣人も人間の変わらないでしょ? 大人よ」と返す。どうやらエミルさんは何かを感じ取っているようだ。そんな中エリーさんが「わかる」といって静かに頷いていた。
君たちはボクから何を感じ取ったんですか?
「えっ、なに? エリーまでどうしてるの?」
カルラさんは驚きの様子。対するエリーさんはというと「なんだかわからないけど妙に親近感が沸くというか安心する」と口にしていた。
これは血筋の影響なのでしょうかね。
「ま、まぁいいわ。さっそく宿行って食堂行きましょ。その、イタリアン? っての食べてみたいから」
「さんせー!」
カルラさんは考えるのをやめた様子で食堂に行こうと提案する。
この世界でのイタリアン、興味あります。
カルラさんたちと一緒にしばらく大通りを歩いていると一軒のきれいで高級そうな建物が見えてきた。
周囲にあるほかの建物もきれいだけどこの建物は素材が違うのか他よりきれいに見える。
具体的に言うなら、ほかの建物がくすんだ白ならこの建物は純白に近い白といえるだろう。
ちなみにここは門入って真っすぐ来ただけの場所なので街の中心にはまだまだ遠い。
「見えて来たわね。あの白い建物がダラムINNとかっていう名前の宿よ」
INNなんていうと英語っぽいですね。宿という意味なのは間違いないんですけど、明らかにこの世界の言語じゃないですよね?
そんなくだらないことを考えていると、カルラさんたちは扉を開けて中に入っていってしまった。
ボクもとりあえずついていく。理由はない。
「いらっしゃいませ、お嬢様方。当ホテルは種族関係なく楽しめるように設計されております。ぜひぜひ一時の安らぎとエンターテイメントをお楽しみください」
入ってすぐに現れたのは金髪の男性。
大柄で腕に入れ墨を入れたその男性はなんとなくアメリカ人っぽさを感じた。
「ええっと、宿の受付はどちらでしょうか」
「失礼いたしました、素敵なレディ。受付はこちらになっております。わたくし支配人のマイクと申します。お泊りは6名様ですか?」
マイクさんはボクたちの人数を数え、先頭のカルラさんに確認する。
「狐白ちゃんも一緒でいい? なんかなし崩し的に連れてきちゃったけど。お金なら出すし」
「ま、まぁいいですけど」
泊まる予定なんてなかったんですけどねぇ。なんか流されてるみたいでちょっと……。ボクはチョロくないはずなんですけど。
「では6名様ですね。当ホテルは2種類のタイプのお部屋をご用意しております。1つはビジネスライクな人におすすめのスタイリッシュな空間。もう1つはくつろぎを目的とした和の空間。わたくしマイクがあこがれの日本で営業する予定だったはずの古き良き旅館スタイルです」
「よ、よくわからないけど、くつろぎでお願いするわ。みんなもいいわよね?」
「特に異論はないです」
「私もー」
他のメンバーも同じように異論はないとカルラさんに伝える。当然ボクも異論はない。異論はないけど、やっぱりこの支配人さん、地球の人ですね? しかも日本に住んでるタイプの欧米人。
「ありがとうございます! わたくしマイクおすすめの古き良きスタイル。ぜひお楽しみください!」
マイクさんは実に嬉しそうだ。はてさて、どんなお部屋になるのだろうか。




