第42話 ダラムと探索者のお姉さん
都市ダラム。この辺り一帯では一番大きな街らしく、ようやくたどり着いたボクはその大きさに圧倒されてしまっていた。
東京と比べれば小さいのは確かだけど、巨大な防壁がどこまでも続く光景は、なんこう圧迫感を感じてしまう。
とはいえ、このダラムは港もあるようでそちらの方にいけばまだ開放感があるとのことだ。
ちなみにこの話はボクの前に並んでいるウェーブがかかった赤毛の美人でグラマラスな探索者のお姉さんから聞いた話だ。
「ダラムは依頼も多くて私たち探索者も稼ごうと思えば稼げる場所よ。特に商人が多くてね、色々な物を売り買いしているの。港の方にも色々あるけど、一番面白いのはダラムに友好的な海賊がいるってところかしらね。海洋探検家なんて職業の人もいるから話を聞いておいて損はないわよ?」
「ありがとうございます。ダラムに来る前に色々と調べたのですけど、ダラムは契約の神の神殿が一番大きな勢力なんだとか」
ダラムの歩き方の受け売りである。
するとお姉さんは驚いた顔をしながらさらに色々と教えてくれた。
「良く知ってるわね。たしかに契約の神の神殿が一番の勢力ね。一応光の神、闇の神、土の神、水の神、火の神、風の神、星神教それぞれの神殿もあるけど、契約の神の神殿以外はみんなおんなじくらいの規模なの。契約の神の神殿は街に入って奥の方。ずっと行った先に大きな合同庁舎と会議場があるんだけど、その先にあるのよ。つまり街の行政の中心にある神殿ってことね」
どうやら都市ダラムでは契約の神の神殿の前に行政関係の施設を集めているらしい。
宗教は政治に介入せずとのことらしいけど、契約の神の力は行政関係に効果的らしく、何か重要な取り決めをする際には必ず契約の神に誓いを立てることになっているそうだ。
「でも【アルゴス】は別ね。他の街とは違ってアルゴス王国は【アルザス】という神を信仰しているの。なんでも真なる創造神なんだって。神殿も巨大で金銀で飾られた成金趣味なものになってるわね。噂だと相当羽振りが良いらしくて広大な領地を持っているそうよ」
アルゴス王国の神アルザスが何者なのかはわからないけど、ボクたちの知る者ではなさそうだ。
とはいえ、神を名乗るものは珍しくもなく、過去にいくつもの謎の神を信仰する宗教が現れているらしい。
「ところで、狐白ちゃんはこの後どうするの? お姉さんたちは宿を取る予定なんだけど、狐白ちゃんも一緒する?」
「おいでおいでー! 可愛い子大歓迎!」
「その奇麗な尻尾をもふらせて~」
「興味深い。ぜひ色々と質問したい」
「狐白ちゃんが使う術の大系がわからないから教えてほしい~~」
「あら~。ごめんね。うちのメンバーも狐白ちゃん気に入っちゃったみたい」
目の前の赤毛のお姉さんは【カルラ】さんといい、女性だけの5人でパーティーを組んでいるそうだ。
全員幼馴染で探索者としてのランクも高いらしい。ちなみにボクが出会ったのはリバーサイドレストからでて少し後、カルラさんたちがゴブリンと戦っているときだった。
「さっきはありがとね。ゴブリン程度大したことはないんだけど、なんだか異様に力強いし打たれ強いし数は多いしでちょっと手間取っちゃったのよね」
「毒の矢、麻痺毒の矢など盛沢山だった」
「いえいえ。たまたま新種に出遭うときもあると思いますし」
ボクはこの世界の魔物に関しては詳しくないけど、カルラさんたちがいくら強くてもゴブリンに手間取るとは考えにくい。
それもそのはずで、確かに相手はゴブリンだったのだけど、背後に餓鬼道の餓鬼が憑りついていたのだ。
餓鬼が憑りつくと対象は非常に打たれ強くなり攻撃力も攻撃性も増す。それだけでなく倒したはずなのに何度でも起き上がってくるようになる。
対処法は2つ。餓鬼を祓って餓鬼道に送り返すか、ボクたちのように直接魂にダメージを与える存在の力を借りて滅ぼすかだ。
ちなみに餓鬼がどうやってこの世界にやってきたのかはわからないけど、例の国の影響ではないかと推測している。
「大変お待たせいたしました。次の方どうぞ」
「あっ、狐白ちゃん。行くわよ」
「あ、はい」
しばらくみんなと話していると、いつの間にかボクたちの入街審査の番になっていたらしい。
さっそく身分証を提示して目的などを記入することに。
「星神教の身分証ですか。最近少し見かけるようにはなりましたけど、まだまだ珍しい部類の身分証ですね」
門番のお兄さんはボクの身分証を見ながらそう口にした。そういえば結構レアだって聞いたっけ。
「もっと珍しいのもあるんですか?」
興味本位で質問すると、お兄さんは「竜人連盟などは特に珍しいですよ」と教えてくれた。
この街には多種多様な種族が訪れているらしいのだけど、竜人たちが所属する【竜人連盟】という団体の身分証は竜人でも手に入りにくいのだとか。
「身分証じゃないけど、今日は珍しい種族の女の子を見かけたよ。鬼人族っていう種族の子でねーー」
「へぇ~」
門番のお兄さんは興が乗ったのか色々なことを教えてくれた。特に気になったのが鬼人族という種族だ。
鬼人というくらいだから角が生えてるのだろうか? もし会えたなら話してみたい気がする。
「はい。こちらで問題ありません。ようこそダラムへ」
「ありがとうございます」
「さぁいくわよ~!」
「おぉ~!!」
カルラさんの掛け声と共に一斉に街へ入っていくみんな。
というかテンション高いですね?
「狐白ちゃ~ん、置いていくわよ~」
「あ、まってください」
ボクも置いて行かれないようについていくとしますか。
何があるのかもわからないので道案内は欲しかったですし。
こうしてボクはダラムへと足を踏み入れたのだった。




