第41話 リバーサイドレスト
都市ダラム。大陸にある街の中でイストーの街と同じように国に属さない独立都市。
そんなダラムには衛星都市もあるのでさながら1つの小国家のようである。
通貨はイストーの街と同じくクレム貨幣を使用しており言語も文字も共通。
貴族社会ではなく議会制のため貴族も平民も同等の権利を有する。
都市ダラムでの格言の1つには『金のない貴族は金のない貧民にも劣る』というものがあるようで、それくらい貴族というステータスには意味がないとのことだ。
都市の住民には様々な種族がおり、崇拝する神や精霊も様々であるようで、地水火風光闇のそれぞれの神殿の他、星神教の神殿、契約の神の神殿が存在している。
一大勢力は契約の神の神殿であり、他の神殿はだいたい同規模とのことだ。
つまり、都市ダラムで一番重要視されているのは契約の神ということになる。
と、ここまでがリバーサイドレストのそばにあった箱に収められていた『都市ダラムの歩き方』に記載されていた内容だ。
そんなボクは今リバーサイドレストの前にいる。
「ここがリバーサイドレストですか。いいところですね」
リバーサイドレストはダラムにほど近い場所にある川の上流にある隔離された一軒家だった。
川に近い1階に少し上にある2階、小規模な畑にほか少しの設備のあるきれいな木造建築だ。
どちらかというと邸宅というよりは別荘という感じだろうか。
ちなみにお値段は10万ポイント。
「クルスたちやほかの子の別荘にもいいかもしれませんね。購入しておきますか」
50万ポイントあったものが諸々購入した結果残り5万ポイントになってしまった。ちょっと散在しすぎたので反省。
とはいえ、売り物自体はまだあるのでダラムの探検を終えたらまた色々な物をネットショップで販売していこう。
「さてと。まずはこの建物の中を調べてみますか」
さっそく購入したばかりのリバーサイドレストの探索を開始する。
鍵は特になく、ドアノブを回すだけでドアは開いた。
どうもこの手の物は購入すると同時に鍵が開く仕掛けのようだ。
というわけでまずは川に近い1階から見てみる。
建物自体は川に面しているとはいえ陸地に建っているので水の心配はないものの大雨などで増水すると水が入らないか心配になるくらい近い。そんな建物の床面は外周が石造りになっているようで玄関入ってすぐの小さな部屋も奇麗な石の床になっていた。
ちなみにこの小部屋には鍛冶に使える金床、大きめの炉、作業用の作業台、水の入った桶にツールの立て掛けられたツールラックが存在していた。この場所で鍛冶仕事ができるようだ。
「意外とお買い得なんでしょうか」
玄関入ってすぐに作業場があるのなら、ほかの場所はどうなのだろう。
そう思い玄関先の扉を開く。そこにあったのは木で作られた床や家具、落ち着けそうな水の流れるレストルームだった。
落ち着いた雰囲気と水の匂いがするその場所には椅子とテーブルが置かれていてくつろげるようなスペースになっている。
続いてその部屋の脇を見る。そこにあったのは錬金術用の大きな釜と水栓、そして素材保管用の棚だった。近くには別に魔法陣が描かれた紙が設置されており、ここで魔術的な作業も可能になっているようだ。
「魔術錬金術用の釜ですね。すでに使えるようになっているみたいです。近くに水栓や保管用の棚があるのはありがたいですね」
ボク個人としてはすぐにものに手が届く配置が非常に嬉しい。この物件10万ポイントにしては当たりなのでは?
さらにほかの場所も探索することにする。
広い部屋を抜け、奥にある大きな扉を開くと左右に分かれた通路があった。そのすぐ近くには上に続く階段があり、2階へと昇れるようになっている。
そのまま2階には行かず通路を左に進むと、そこにも大きな扉があった。扉の先には大きな何もない部屋が1つあるだけで家具らしいものは1つもない。倉庫だろうか? とりあえず引き返し、次は右側へと続く通路を進む。
右の通路の先にも大きな扉があり、その先には石造りの大きな浴場が存在していた。
お風呂は10人入ってもゆっくり出来そうなくらい広く、シャワーのようなものまでついていた。さらには寝そべられるような台も設置されており、ゆっくりとお風呂タイムを楽しめるように設計されているみたいだった。
「こだわりのお風呂というやつですか。至れり尽くせりですね」
お風呂でゆったりする想像をしながら元来た道を引き返し、2階へと上がる。そこには大きな広い部屋があった。
下と同じように椅子とテーブルが置かれていることからサロンか何かなのだろう。周囲を見回すと左右に扉があるのを見つける。
扉の先には右の扉の先にはキッチン。左の扉の先にはいくつかの扉が付いた通路があった。
キッチンは奇麗な石と木で作られたテーブルや調理台が設置されており、コンロのようなものや石造りのオーブンが設置されていた。
「使いやすそうなキッチンですね。料理好きな人には嬉しいかもしれません」
なんとなく拠点用にと購入したけど、こんなに設備が揃っていていいのだろうか。
10万ポイントの価値が不明すぎる。
「まぁ、考えても仕方ないですね」
家賃が月額10万ポイントだったならその時はその時で考えよう。そう心に決め、扉のたくさんついた通路へと向かう。
扉を1つ1つ開いていくと、それぞれが個室になっているようでワンルームくらいの大きさの部屋となっていた。
ベッドは備え付けになっているようで、一応すぐにでも寝られるような寝具も設置済みのようだ。
またそのまま別の扉を開けるとトイレがあり、さらに別の扉を開けると5人くらいが入れそうな露天風呂があった。
どう考えても高級別荘ですね?
「価値が不明すぎます。何かリスクでもあるのでしょうか」
まるでゲームに追加されるMODの住宅のような光景である。
「そういえばここも外界と切り離されてるんですよね。空気や川のせせらぎは同じなのに。ということは高天原の方で無理矢理ねじ込んだ物件なのでしょうか」
考えるに、この場所にはもともとこのようなものは存在していなかったようだ。
あっちの廃墟と同じく空間を別に重ねて設置しているような気がする。
こういった、確かにここにあるけど存在しない建物をマヨイガといったりする。
つまるところ、ここはボクたち妖や神といった存在の休憩所というわけだ。
「あといくつ同じような物件があるのでしょうかね。ポイントが貯まったらまた探してみますか」
多分まだまだ同じような隠された物件が存在しているのだろう。
いったんリバーサイドレストの探索は終わりにして、ダラムの探検に移るとしましょうか。




