第32話 精霊たちの活動と悪魔の来訪
建築現場件元テント村にはさらにノームさんたちの数が増えていた。
そしてあっという間に木々が伐採され、下水処理場方向へと続く道からは石材などが運び込まれていた。
鍛冶場や簡易的な住居が立ち並ぶその光景は、原始時代から少しだけ時代を進んだように見えた。
人類の足跡を人化した精霊たちが歩んでいるという謎の光景が広がっている。
でもみんななんとなく楽しそうなんですよね。
まぁ一日が終わったら酒と肉でパーッと楽しむんでしょうけど。
ノームさんたちは良く飲みよく食べる。気が付けば支給したお酒と森から調達したお肉を使ってバーベキューパーティーみたいなことを夜にやっている。
人生というか精霊生をすごく謳歌している感じがする。
「お母様、精霊たちはみんなこうなのですか?」
「ノームさんたちって少し変わってますね」
一緒についてきたクルスとルナがノームさんたちの居住区を見ながらそう口にする。
実は最近、それぞれの属性だったり種族だったり趣味趣向だったり、精霊の中でも似たような存在が一か所に集まるようになってきているのだ。
例えばノームさんはほとんどお酒好きで鍛冶や採掘、建築などに携わっているので職人街のような様相になりつつある。
あとはまだまだ小さいけど酒場がいくつか確認された。
水の精霊たちも色々で川の水をボクたちの居住区側に引っ張り、大きな湖を作ろうと画策している集団がいたり、植物の精霊と協力して茶葉を育てようと計画していたりする。
どうやらお茶会を好む一団がいるらしい。
なお茶葉類はすでに苗木とその物を妖種ネットで購入済みだ。
そんな水の精霊の中にも植物の精霊たちが紛れ込んでいたりする。
植物の精霊たちは植物の精霊たちで花畑を作ったり農業に参戦しようと試みる者たちがたくさん出てきている。
まだまだ住居の数は足りないもののそれでもがんばって開墾に着手しているようだ。
ちなみにここでもやはり水の精霊が混じっているのを確認している。
どうやら水の精霊と植物の精霊は仲が良いらしい。
よく一緒に遊んでいる光景を目にする。
「そういえば桃花と瑞葉も仲が良いですよね」
「ずっと昔からの友人です」
「大好きな友達です!」
とのことだ。
仲が良くて何よりである。
ちなみに瑞葉はクルスとルナに積極的に話しかけているし、桃花は若干人見知りなのか恥ずかしがり屋なのかはわからないけど、おずおずと話しかけている。
性格の差が如実に表れていて実に良き。
と、一部の仲良しグループみたいな精霊たちの集まりを紹介したのだけど、実はそれには属さない孤独な精霊たちもいる。
元素的にはおそらく複合属性になるのだろう、本の精霊というのがいる。
最近ボクたちの領域にやってきた子で大きな図書館を作りたいと語っていたのが印象的。
現在は小さな小屋の中で、人間界で集めた本やボクの手持ちの本を読みながら暮らしている。
今度何か買ってあげる予定だけど、どうせだからこの子にもできることを提案していけるようにしたい。
接客は難しそうなので本を作ったり管理する側、出版や司書などがいいだろう。
少し方向性は違うけど、ボクたちの服を作ろうと頑張っている子もいる。
まだ1人だけのようだけど興味を持っていそうな子がちらほらいるのだ。
ただやはり服作りは難しいらしく、道具がない状況では全て手仕事になってしまう。
機械類はちょっとお高いので収入が入ったあたりで予算と相談しながら購入計画を立てていきたいところ。
せっかくボクのところに来てくれているのだからできることはしてあげたい。
孤独とはまた違うけど風の精霊たちは個々人で商売や記者の真似事を始めたようだ。
風の精霊たちの風聞録やボクの未開拓の領域などについて情報をまとめてくれている。
まぁこの世界、領域と入っているものの地球のすぐ隣にあるような感じなので地球と同じような気象現象がある。
実際に円形の惑星タイプなので土地だけは広いよ。
誰も住んでなくて動物だらけだけど。
そんな場所場所の生態系の情報もまとめてくれているのは非常に助かる。
風の精霊たちは小さなお店をやっていたりするのだけど、現在は物々交換が主流。
そのうち貨幣を流通させたいのだけど、貨幣に良さげな素材は模索中だ。
「クルスとルナは何かやりたいことありませんか?」
精霊たちが楽しそうに自主的に活動している様子を見ながら、ボクはふと双子に問いかけてみた。
「まだわかりません」
「どうしたらいいかわかりません」
ですよねー。とは思いつつも何かを経験させてあげてやりたいことを見つけてくれれば良いなーと思う。
そろそろ風の精霊の子たちと下界の人間界にも冒険に行くのでそのついでになにか見つかればいいな。
「狐白様ー、手作りの押し花の栞を作りましたー! 受け取ってくださーい!」
と、2人に話しかけていると趣味を楽しんでいるであろう植物の精霊の子から押し花で作られた栞を受け取った。
小さなピンクの可愛らしい花だ。
とっても嬉しい。
「ありがとうございます。またなにかプレゼントしますね」
「えへへー」
植物の精霊の子は嬉しそうに走っていってしまった。
今度なにか贈り物を用意しよう。
とっても嬉しいことがあったので拠点でみんなと共有しながら話していると不思議な訪問者がやってきた。
何かが領域に入ってくる気配を感じたので外に出て確認してみると、そこには悪魔がいた。
正確には身長小さめの人間タイプの少女だ。
金髪で頭に角が生えていて、背中に小さな羽とお尻に細い尻尾がついている。
表現するならきっと小悪魔になるだろう。
赤い瞳がキュートで可愛らしい美少女だ。
「どうもー! 悪魔のご利用はありませんかー?」
やってくるなり人懐こそうな顔で宣伝を始めだした。
悪魔ねぇ。
「こんにちは。当領域へようこそ。ところで何をしにこちらに?」
悪魔といっても色んな悪魔がいる。
この悪魔少女はどのタイプの悪魔なのだろうか。
「よくお聞きくださいました! あたしはなんと! 行商人でございます!」
どうやら悪魔の物売りさんだったようだ。
悪魔の商売は多岐に渡っているため行商人がいても不思議ではない。
というか、悪魔の行商人は普段手に入らないようなレア素材を入手するチャンスでもあるのだ。
出会えるかどうかは運次第。
「ほう。どのようなものを?」
「はい! あたしは個人で行商やってるんですけどね? 魔法の道具や魔法関連素材なんかをたくさん取り扱ってます! 場所さえお貸しいただければ定期的に販売に来てもいいんですけどね〜。えへへ」
需要ありとみたのかすぐに場所の相談を始める悪魔。
可愛らしい顔をにっこにこにさせて早速交渉し出すのだから大したものだ。
「むぅ。場所ですか。あまり悪魔を呼び込まないことを条件にするならいいですけど」
欲しい素材もあるので拒否するわけにもいかない。
とりあえずどんな悪魔でも気軽にやってこられては少し面倒だ。
「大丈夫です! 被害を与えるような悪魔は事前に排除するようにしますので! あたしを信用してご契約くださいな!」
「まぁいざという時は最終手段もあるので。わかりました。まだ建物はありませんが場所は提供しますよ」
「ふふ。ありがとうございます。お若い妖狐族のお嬢様」
若く見える悪魔族の美少女に『お若い妖狐族のお嬢様』と呼ばれてしまった。
もしかして実はすごく年上なんじゃないだろうか。
悪魔は見た目に寄らないからなぁ。
「もしかして、あたしのこと年上なんじゃないかって思ってませんか?」
「え、そんなことは……」
思ってましたけどね!
「まぁあたしも悪魔族としては若い方なんですよ。ほんの500歳ですし」
「あっ」
500年も身長が伸びなかったんですね。
このことは心の中に秘めておこう。




