第26話 身分証とお姉さんと錬金術士組合
お姉さんから話を聞いて思い出すことがあった。
星神教が信仰するという【星を渡りし者】について。
神々という言葉がヒントになって思い出せたのだ。
ボクが精霊の森で聞いた話、そしてアクアから聞いた話を。
どうやらこれらは1つに繋がっているらしい。
ぼんやりと考え事をする中、ボクの持ってきた端末が震えた。
メールの着信だ。
「どれどれ? 異世界にも繋がるなんて妖種ネット恐るべし」
メッセージの送信元は父からだった。
『卵を手に入れたと聞いた。狐白の妹分みたいなものだ。大事にしてあげてほしい。追伸:ミーティアを派遣した。実家にいたときと同じように仲良くしてあげてほしい。あとはミーティアに託している』
「?」
いつもそうだけど、父は時々こういう風に訳の分からないメッセージを送ってくる。
それにしてもミーティアちゃんか。
ミーティアちゃんはボクの侍女的な立ち位置にいる人間の少女だ。
身長はボクに近いけど、大人びているように見える。
髪色は白で目の色は翠っぽい色をしている可愛らしい子。
そんなミーティアちゃんを突然派遣してくるなんてどうしたのだろうか。
ボクがいないときは父のお手伝いをしていることは知っているのだけど。
「主様、どうしました?」
不意に桃花が問いかけてくる。
「ううん。なんでも。ただ旧知の知り合いが合流してくるってさ。ボクの大事な家族だよ」
「それはいいですね。どんな方なのでしょうか」
「あたしも気になります! ご主人様のご家族ってどんな方々なんですか?」
桃花と瑞葉は興味津々な様子だ。
それにしてもうちの家族かぁ。
どんな風に紹介すればいいんだろう?
「普通、というのはちょっと無理があるかもしれませんね。紹介の仕方が難しいですけど。父は別の世界からやってきた元人間だそうです。今はボクと同じような見た目をしていますけど。母はボクと同じ妖狐でボクはそんな2人のハーフ的な感じです。それと妹分というか友達のような侍女がいますよ。ミーティアっていう名前の多分人間です。もしかすると違うかもしれませんけど」
「ほへ〜」
そういえばミーティアちゃんの種族について聞いたことがなかったっけ。
今度来るみたいだし、そのときにそれとなく確認してみよう。
「おまたせいたしました。無事に登録完了です。一応階級制度はあるのですがそれによる利権などはありませんので、お渡しする冊子をお読みください。わからないことはいつでも確認してくださいね」
「はい」
登録の証はボクたちの身分証に刻まれるようで手元にはその証明のようなものはない。
唯一新しい4人の子たちには透明な薄い板を渡されたくらいだ。
「神殿発行の身分証は一般的なものとは違いますので、発行後そちらの登録証を神殿の者にお渡しください。それでは錬金術士組合にご案内しますね」
軽く見せてもらったのだけど、一般的な身分証と言われるものは特殊な厚手の紙だった。
神殿で貰ったものは透明な板だったので不思議な感じがする。
受付のお姉さんに案内され、錬金術士組合にやってきたボクたちは、そこで人の多さに驚いた。
探索者組合とは違いかなりの人が並んでいる。
「どうやらちょうど錬金術士試験に当たってしまったようですね。依頼人や新規登録の人もいるでしょうが多くは昇格試験が目的のようです」
どうも錬金術士にもランクがあるらしく、渡された資料に目を通す限りではアルファベットのようなランク分けがされているようだった。
こちらの世界での読み方はわからないけど、翻訳機能を通す限りでは最下級はI級とのことで、最高位はA級とのことだ。
「錬金術士のランクは最下級がI級で、新規登録者は必ずこのランクになります。G級までは比較的普通にあがりますが、最低でもG級にならなければ各種申請や補助を受けることができませんのでご注意ください」
お姉さん、探索者組合の人ですよね? やけに詳しくないですか?
ボクがそう思っていると錬金術士組合の人がお姉さんに声をかけてきた。
「ファニス、新人の案内か? B級錬金術士でもあるんだからたまにはこっちの依頼も受けてほしいんだが」
「それはお断りって言いましたよね。今は探索者組合の案内役なんですから。さ、可愛い子たちの案内がありますからまたの機会にお願いしますね」
お姉さんはファニスさんというのですか。
なんか錬金術士としてのランクが高いみたいなんですけど。
「しょうがない。手が空いたときでいいさ」
錬金術士組合の人はそう言うと、カウンターの方へと去っていった。
「さて、案内の続きをしましょうか」
ファニスさんはボクたちに笑顔を向けると、再び案内を再開したのでした。
その後、一通り見た後は神殿へ戻り身分証を無事受け取ることに成功。
そのまま廃墟から領域へと戻ることに。
もちろん売り物は無事入手したのでようやく販売にこぎつけられそうです。




