第15話 イストーの街3
噴水の付近まで来るとにぎやかな声や笑い声が聞こえてくる。
付近にはゴザや絨毯などを敷いた露店が営業していたり、火を吹く芸をする大道芸人などもいたりする。
人の出は多く、時間はわからないけど大人も子供も多く出歩いていた。
今日は休日かなにかなのだろうか? 街とは無縁な場所でのんびりしていたからちょっとわからない。
日本は日本で時間に追われて忙しいからね。
「本日の目玉商品! 精霊の涙だよ! 大きいものはオークションに出るんだがこいつぁ小さくてオークションにも出せないような小粒だ。限定10個! 早いもの勝ちだよー!」
「西の商業都市【ダラム】で人気の自転車だ! 木製だけどなかなかのものだよ! なんと制作者はあの【ダイジスズキ】だ! なかなか手に入らない代物だよ! 限定3台だ!」
小物から食料まで色々なものを売っているようで市は非常に賑やかだ。
なんか途中変な言葉が聞こえてきたですけど、この世界って自転車あるんですね?
でも木製ってどうなんだろう。
少し興味はあるものの、この世界のお金なんてほんの少ししかない。
ちなみにこの街で使われている通貨は【クレム金貨】【クレム銀貨】【クレム銅貨】【クレム錫貨】の4種類とのこと。
この知識はさっきタブレットで調べて得たものだ。
店頭に置かれた値段表を見る限りでは【クレム錫貨】が100枚で【クレム銅貨】1枚、その後は【クレム銅貨】100枚で【クレム銀貨】1枚といった感じのレートになるらしい。
ただ殴り書きで何クレムと書いてある店もあれば、錫貨銅貨銀貨では何枚といった書き方をしている店もあるので間違いはないだろう。
言語パックのおかげで言葉は分かるし文字も読めるので非常に助かる。
でも文字は書けないので急ぎ覚える必要はあるけども。
「こういう場所には初めて来ましたが賑やかですね。人間だけしかいないのかと思えば獣人やエルフやドワーフ、魔族などもいますね。時折中級精霊が混じっているが気になりますけど」
桃花は人の流れを見つめていたようで、そのような感想を口にしていた。
中級精霊が混じっていると言っていたが、下級精霊はいないのだろうか。
そう思いふと上を見上げると、光の球が飛んでいるのを見つけた。
「精霊って意外にどこにでもいるんですね」
「そうですね。精霊は今は去ってしまった大昔の神が作ったと言われています。私たちのように自我を持つ精霊は成長して階級が上がるとこの世界でも人型などの形になることができます。それに対して力だけの塊の精霊もいます。厳密には精霊ではないのですが、こちらは自我がなく消費されると消えるため【根源精霊】と呼ばれます」
「へぇ~」
なんとなく呟いたことに桃花が反応して説明してくれた。
精霊って【根源精霊】とそれ以外で分けられるのか。
「【根源精霊】は精霊力と色々な元素が結びついて生まれた力の塊なんですよ! なので実際には精霊ではないんです! でもあたしたちが動くと漏れた精霊力と結びついて勝手に生まれてくるから精霊って言われてます!」
「へぇ~。不思議ですね。じゃあボクの妖力が漏れて元素と結びつくと妖力の塊が生まれるのかな」
今度試してみようかな。
それはそうと散策の続き!
ボクたちは露店を回りながら色々な物を見て回った。
基本的には地球とよく似た植物などが売られているけど、料理のレパートリーが少ないのか『煮る』『焼く』が基本なようだ。
最近は【ダラム】という都市の影響でパスタなどが増えているという。
ちなみになぜかハンバーガーが売っていたのでお店の人に聞いてみたところ、【ダラム】の【ダイジスズキ】がレシピを開発して商業組合で販売しているのだという。
おそらくボクと同じ時空の日本人なんだろうけど、なぜここにいるんだろう。
そういえば、あーちゃんが言ってたっけ。
時々現実の隙間を通り抜けて下位の世界に落ち込むことがあると。
俗にいう神隠しの1つだ。
この世界は日本などのある地球世界の下にある世界ということなので、滑り落ちたのだろう。




