第14話 イストーの街2
ボクたちはマールさんと共に神殿関係者専用門という場所からイストーの街へと入ることができた。
神殿関係者専用ということもあり、門から入ってすぐの場所に大きな建物が見える。
その建物は中心にタワーのような塔が1つあり、塔の下部が下で広がるようにしてそれぞれの方向にある小さな尖塔に繋がっていく形となっていた。
尖塔の先にはそれぞれマークのようなものが付いている。
おそらく信仰している者を表す記号なのだろう。
とはいえ、この世界の神様についてはさっぱりだ。
「巻き込んじゃってわるかったねぇ。でも興味があったのは事実さね。神気を帯びた獣人族っぽい子に精霊力を帯びた人間の子供のような子たち。あたしらのような人間じゃなきゃわからないけど、見る人が見たら興味を引くから気を付けなね」
衛兵さんに先導されている最中、マールさんはそのように声を掛けてきた。
マールさんってどんな人なのだろうか? 衛兵さんの接し方から考えるに、ただの村の老婦人ではない気がする。
「マール様はウルズ村から現れた歴代きっての優秀な巫女様でした。今もマール様以上の方はいらっしゃいませんが、マール様のお孫様のコローネ様も優秀な巫女様なんですけどね。とはいえ星神教はやはりマール様を必要としてます。マール様が神殿を出られた後、マール様のためにウルズ村に大神殿が築かれたくらいですからね」
なんとなく得意げな衛兵さんとそれを聞いてうんざりしたような顔をするマールさん。
どうやら2人は捉え方がちがっているらしい。
「そのおかげで村でゆっくりできなくなっちまったじゃないか。まったく。ともかく、事情はどうあれあたしはウルズ村に来てくれたら歓迎するからねぇ。お嬢さんたちが街に来た理由は分からないが、あたしにできることといえば神殿からの身分証を発行することくらいかねぇ」
「身分証、ですか?」
身分証という概念がボクにはない。
もしかすると滞在許可証のようなものなのだろうか。
ちなみにボクは日本でも免許証は持っていない。
健康保険証はあるけどね。
「街に滞在する間身分を保証しますという証明さね。あれば融通が利くけどね。街の外の列は一時許可証は発行してもらえるけど身分証は発行してもらえないからね。ある種の特権と言えるのかもしれないねぇ」
「なるほど」
どうやらボクたちは良いめぐり合わせに出会えたようだ。
「発行には時間が掛かるからしばらく街を見てきな。鐘6つが鳴ったらここに戻ってくるんだよ」
「はーい」
マールさんのアドバイス通り、ボクたちはイストーの街を見て回ることにした。
鐘6つが鳴ったらと言っていたので、おそらく時間のことなのだろう。
昔は鐘で時刻を知らせていた時期もあったらしいし。
「桃花と瑞葉はどこにいきたいですか?」
土地勘のないボクは色々と知っていそうな2人に尋ねることにした。
メルディアはどうなんだろうか?
「うーん。私も話に聞いただけですので詳しくはわかりませんが、他の精霊の子たちの話では市場が活気があって良いのだとか。もしかしたら主様の気に入るものがあるかもしれませんね」
「アクア様にお土産を買っていきましょう! アクア様はこういう場所に来る機会はありませんので!」
「なるほどです。アクアへのお土産にネットショップで販売する商品の入手。どちらも必要ですね」
というわけでボクたちはさっそく神殿の門を出て街へと繰り出した。
「門の守衛にお声をかけていただければマール様の元へご案内しますので」
門を通る際に衛兵さんにそのように声をかけられた。
なかなか優しい人たちのようでちょっと嬉しい。
軽く挨拶をした後、街へと続く橋を通り建物が立ち並ぶ場所へと足を進めていく。
基本的には欧州の街のような雰囲気で歩くのが少し楽しい。
ただ建物と建物の間の暗めの路地はちょっと勇気がいるので今回は通らないことにする。
知らない土地の暗い道や細い路地裏ってちょっと怖い。
道なりに少し歩いていくと建物が切れ、その間に円形の広場が出現した。
その円形の広場には中央に噴水があり、周辺にお店やバザーのような露店が開かれている。
なかなか雰囲気の良さそうなにぎやかな場所だ。




