第13話 イストーの街1
一角猪の解体は後にし、とりあえず手持ちの空間拡張バッグにしまう。
入れておくと状態を保存できるということなので落ち着くまで入れておいても腐りはしないだろう。
というわけでさっそく人間の街へいこうと思うのだが、その前にこの廃墟の値段をタブレットで調べてみることにした。
「土地所有権が10万ポイントですか。建物の再生・撤去・建築費用は別途ご用意くださいと」
どうやらこの廃墟のある土地は比較的お安い値段のようだ。
一応評価が書いてあるので読んでみると土地が狭く拡張性がない。
人間の街に近いが領有権問題は起きない。
所有種族によっては人間の街を利用できない可能性がある。
とのことだ。
他にも土地を検索してみるとたくさん売りに出されていることがわかる。
特にお高いのは尽きない食料、邪魔されない土地、尽きない燃料など色々な法則を無視した設備が完備された物件だろう。
まぁ今は用がないのでいいのだけど。
まるでゲームの世界のMODみたいだ。
「さて、入街税対策もできたので出発しますか」
そんなわけでボクたちは街へと繰り出したのだ。
人間の街は平原にあり、森からは少し歩いた先にある街道を辿っていくことになる。
基本は土の道なのだけど、街に近づくにつれて一部が石畳であったり灯火式の該当がぶら下げられていた。
街の門を思われる場所には鉄系の軽装備を着用して槍を持った衛兵のような人がいて街に入る人と何かをしている様子が見える。
ちなみに街に入るまでは長い列に並ばなければいけないようだ。
「おや、お嬢さんがたはどこから来なすった?」
列に並んでいると初老のおばあさんに話しかけられた。
どうやらおばあさんも待機列に並んでいるようで、ボクたちより後ろに並んだようだ。
「少しと置くからですね。ちょっと友人と旅をしていまして。観光ついでにこの街を見てみようかなと」
「おやまぁ。小さいのに偉いねぇ。みんなも同じくらいの年代の子に見えるけどいくつなんだい?」
「種族的なものもありますからね。ボクは18歳です。他の子も似たような感じですよ」
「そうかいそうかい。あたしゃ【マール】って名前だよ。近くの村から定期的に行商に来てるのさ。お嬢さんのお名前は?」
「ボクは【こはく】です。こっちの桃色髪の子が【桃花】で、こちらの水色髪の子が【瑞葉】。こっちの黄緑色の髪
の子が【メルディア】です」
ボクはマールおばあさんにみんなを紹介した。
このおばあさんからは安心できる気配を感じるからだ。
「そうかいそうかい。ちょっと変わった気配だけど獣人っぽい子に人間っぽい子たちが3人。珍しい組み合わせだねぇ」
マールさんは何かに気がついているのだろうか?
優しい気配に反して観察眼が鋭い。
「気が向いたらこの街道のずっと先にあるウルズの村にでも来ておくれ。歓迎するからね」
「行けそうなときに行ってみます」
マールさんのお誘いにボクはそう答える。
しばらくみんなで話をしていると列は門へと近づいていく。
すると衛兵の1人がこちらに駆け足で寄ってくるのが見えた。
他の入街待ちの人も何事かとそちらを見ると、衛兵がマールさんの元へ寄っていくのが見えた。
「マール様。またこちらにお並びになっているのですか」
「おや、待ちの列なんだから並んで待ってもいいじゃないか。だめなのかえ?」
「いえ、そういうわけでは……。ただ、神殿専用の入り口がありますのでそちらであればすぐでしたので」
「あんなところから入るなんてまっぴらごめんさね。ともかく、ケビン坊はしっかりお勤めを果たしてくれればいいんだからね」
どうやらマールさんは衛兵さんと知り合いの様子。
それにしても神殿ってなんだろうか?
「と、とにかくですね」
「わかったわかった。じゃあ交換条件というわけじゃないが、このお嬢さんたちも一緒ならいいよ」
「む、むぅ。わ、わかりました。ではこちらへ」
「それじゃ行こうかね」
「えっ? えっ?」
ボクは訳もわからないままマールさんに手を引かれ一緒についていく羽目になってしまったのだった。
「えっと、マールさんってウルズという村の人なんじゃ?」
「あー。またですか……」
ボクがそう尋ねると衛兵さんは頭を抱える。
「ウルズ村は昔の言い方です。今はウルズ大神殿村なんですよ。他のことについてはマール様にお聞きください」
衛兵さんはボクの疑問にそう答えてくれた。
謎は深まるばかりだ。




