第7話 商店街の危機です!
「ヤマザキストアが閉店するって!」
坂田社長が慌てて“芝生”に来た。
今日、私は仕事が休みで、小林さんとのんびり話していたところだ。
他にもここに来ていた数人がビックリしていた。
ヤマザキストアは商店街で一番の人気店のスーパーだ。たまにローカルTVに出たりしている。
「え?山崎さんお店辞めちゃうんですか?」
小林さんも初めて聞いた様子。勿論私も初耳だ。
「そう、山崎さん腰を痛めててさ、いずれ辞めようって思ってたらしいんだけど、奥さんもそろそろお店辞めて二人で老後を楽しく暮らしたいって……跡継ぎも居ないしね……。急だけど、二か月後に締めようと思うって相談があったんだ。」
確かに、山崎さんと奥さん、70代で重い荷物を運んだり、ずっと立ち仕事だし、早朝から夜遅くまで働いていて、いつも笑顔で……この先も続けて欲しいなんてとても言えないよね……。
「ヤマザキストア目当てに商店街に足を伸ばしてくれるお客さんが多いだけに、どうしたもんだか……。」
坂田社長は頭を搔きながらため息交じりに話した。
「あのスーパーが無くなったら、子供連れもお年寄りも困りますよね。商店街の皆さんも……。」
私にも分かる、商店街にあのスーパーがなくなったら、商店街が機能しなくなるかもしれないって……。
その時、引き戸が開いた。
「こんにちは、皆さんお揃いでしたか。」
あ、あのご老人!
「中村さん!」
「あ、小林さんいつも悪いね。今日の発明はね……。」
「中村さん、“ここ”は中村さんのお店なんですよ?私は従業員でもなんでもないんですよ?分かってます?まぁ、ただで“ここ”を使わせてもらってますし、いいんですけど……。」
(え?小林さんって従業員じゃないの??)
「あはは。ごめんごめん。お茶菓子を買ってきたから皆で食べて。」
美味しそうなお団子。
「山崎さんお店辞めるらしいね?このお団子山崎さんのところで買って聞いたんだよ。」
「そうそう。今、皆で、その話をしているんだよ。昨日、僕も二か月後に店を閉めるって聞いてさ。中村さん、どうにかできないかな?あそこが閉まったら、商店街はシャッター街に成っちゃうんじゃないかな?」
「でも、山崎さんに続けてもらうのは難しいですしね。」
お団子を配りながら、小林さんが続けた。
中村さんは持っていた発明品とやらを畳に置いて、しばらく黙って考えていた。そして、口を開いた。
「М&Aかな……。」
「М&A?」
坂田社長が聞き返す。
「そう。事業承継ってやつだよ。」
「え?でも事業承継って大企業とかがやるものじゃないんですか?あの規模のスーパーでも?」
私はとても驚いた。そんな発想なんて全くなかったから。
「規模は関係ないんだよ。誰かが引き継げば、灯りは消えない。今は小さな会社やお店でも、そうやってバトンを渡す時代だ。ネットでもマッチングサイトがあるし、自治体で支援しているところをもある。」
(そうなんだ!中村さんって物知りだ……。)
「じゃあ、やります?」
小林さんはやるしかないよね!っていう顔をして言った。
私たちもお茶をゴクリと飲んで、頷いた。
続く




