第2話 恐る恐る、扉を開けた
___貴方の居場所 コーワーキング芝生の図書室ラボ___
自転車置き場に自転車を置いて、初めて気づいた。
え?引き戸?コワーキングを検索して出てきた写真と大分違う。これ、お蕎麦屋さんか何か?でも、コワーキングの看板は確かにココだし……。
ガラ!
開いた!!思わず逃げ出そうとした私に、
「あ!すみません。御用でしたか?」
優しそうな皺の深いご老人。
「もし、御用でしたらどうぞ。私は出てしまいますが、中に分る者がおりますので……。では。」
そう言って、ペコリとお辞儀をして出て行った。
戸は開いたままだし、恐る恐る覗いてみた。
中には数人が畳の上で思い思いに作業に没頭していた。実家にあるような、大きな卓袱台を囲んで話している人達、小さな卓袱台で手芸に勤しむ人、コーヒーを呑みながらパソコン作業をしている人。子供の頃通っていた書道教室のようでもある。
「こんにちは!初めてですよね?」
あ、駅前でチラシをくれた女性。
「はい、あの、これ。」
“あのチラシ”を出した。
「あー。昨日、貰ってくれた方でしたか。」
「あの、貴方の居場所ってあって、その、私の居場所も……その……なんでもないです。」
咄嗟に出た言葉に恥ずかしくなってもごもごした。
「あ、席ですか?空いてるところに適当に座ってください。」
ニコニコしながら、その女性は続けた。
「このチラシね。私が一昨日作って、印刷して、昨日配ったの。だから、それを見て来てくれたなんて嬉しい。ささ、どうぞ。」
私は奥の小さな卓袱台の席に座った。畳なんて久しぶりで、正座するのかな?って周りをみると、皆、足を崩していた。
「これ、初めての方に記入して貰ってるの。住所と名前と電話番号をお願いしますね。それと、飲み物はあちらにお茶がありますから自由に飲んでください。勿論、持ち込みも可能ですよ。木村さん。」
「え?」
「あ、ごめんなさいね。今、書いてる途中なのに。私は小林です。さっき出て行ったおじいちゃんは中村さんって言って、ここのオーナーです。」
ニコニコしながら小林さんはここのことを色々教えてくれた。
気さくな人だ。
私とは正反対。
羨ましい気持ちと、自己嫌悪が同時に顔を出した。
その時は、もう来ないかもしれないと思っていた。
続く




