「桜花舞い散る昼の夢」
去年の春書いたものです。
イラストを見ながら楽しんでもらえれば幸いです。
これはこれは、こんなところでおひとりでお花見ですか?
失礼致しました。妖精王どの。いささかこの満開の桜に酔うておりました。
わが国インドではこのような盛りの桜にはお目にかからぬ故。
恋の病などにはくれぐれもかからないよう用心された方がよい。
この森にはあらぬ企みが潜んでいるかも知れぬからね。
そう…でも私にはあなた様が一番用心するべき相手ではないかと…
はて、あなた様の大事なご用件はなんでしょう。
それはな、おまえを貰い受けようと…女王の許可なくしてはいかがなものであろうとは存じて居るが…
いかんせん、こう目の前におまえを見てしまったら…恋の鞘当など巡らさずに…
どうだろう。わたしの小姓になってはくれまいか。
それではお誓いくださいますか?
何に誓えば良いのだ?
その御身に誓いなさって。今生の情けを下さると…
それなら、この身に賭けて、この世のすべてに賭けて、神に賭けて、未来に賭けて、この桜に賭けて、おまえを幸せにすると…誓おう。
妖精王の為すままにどうぞ召抱えてくださいませ。私の身はあなたのものに…
暁と黄昏の女神に誓って、おまえを守ろう。
と、いう寸劇をやろうと思うんだけど、どうだろう。
君と僕でなら…悪くはないね。
では、舞台から降りても、俺の小姓でいてくれるかい?
小姓ではなく…恋人ならば…いつまでも…
桜の森の満開の下、恋人達は誓い合う。
そろそろ妖精どものさまよい歩く頃合。
恋人たちの新床は桜色に染められた。
万事めでたく納まりましょう。