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鏡パズル

作者: 庄垣彬

 

  プロローグ


薄暗い部屋の中、老婆の霊香が小さな台の前に座っていた。



数本のロウソクが霊香を囲む様に立てられていて、淡いオレンジ色の炎が霊香を照らし、すすけた煙の臭いが部屋の中に充満していた。



霊香は目を閉じてうつむき、ささやく様な小さな声で呪文の様な言葉を長い時間言っている。



顔には汗が滝の様に流れ、額に巻いている白い布は変色していた。



台の上には人の顔位の大きさで薄い木の板が置いてあり、その横に数個の小さな物が炎の光を反射してキラキラ光っていた。



そして、霊香の声が一瞬大きくなった時、炎が激しく揺れ一瞬にして消え、部屋の中は真っ暗になった。



霊香は少しのうめき声を残し、真っ暗の部屋の中で動かなくなり立ち上がる事はもうなかった。



(廃屋に残された物)



神部咲子は真新しい住宅が並ぶ一角に来ていた。



不動産会社に勤める咲子この地区に来るのは初めて、以前の担当者、三橋信二が突然辞めてしまったため、咲子が担当をする事になってしまった。



三橋は38歳で古株だった。



優しく、咲子がこの支社に来た時から色々アドバイスなどしてくれて、頼れる人だったが辞める時、なんの相談も無く突然の退社だった。



その時からは連絡もしていない。



咲子の目の前には平屋の古い家屋が建っている。



3軒続きの長屋は咲子から見て縦長で奥に広がっていて、入り口は右側にある地道の通路沿いにある。



左側にはそれぞれの部屋の小さな庭がトタンの塀に囲まれていた。



咲子は狭い地道の通路を通って一番手前の部屋の鍵を開け、部屋に入っていった。



昼間とは言え、廃屋と化した部屋、電気も無く薄暗い。



懐中電灯を点灯して部屋の中を見渡す。



入り口を入ると4畳位のキッチン、そしてダイニングがあり奥には10畳ほどの部屋があった。



奥の部屋の向こう側には庭があるのだけど、誰も居なくなった家、雑草が生え放題で外光を妨げていて、いっそう部屋の中を暗くしていた。



部屋の中を懐中電灯の光がさ迷うように動き回る、その光に細かいホコリが舞っているのがはっきり分かる。



咲子は部屋の奥まで行き、庭に続くガラス窓開ける。



すると外の新鮮な空気が一気に部屋の中に入ってきて舞っていたホコリが開けっぱなしの玄関から出ていった。



「ふぅ~」咲子は一息吐いた。



「さて、何も残ってないわよね」



咲子はそう言って懐中電灯で何も置かれていない部屋の中を見渡した。



数十分部屋の中を物色して、次の部屋に行く事にした。



長屋の真ん中の部屋も同じ様に玄関を開けると、薄暗く同じ様に懐中電灯を点けようとした時、一瞬何かが見えた様に思えビクッとした。



咲子は懐中電灯を奥に向けて照らす、庭に続くガラス戸がそこにあり懐中電灯の光が反射している。



「なんだ、私か」ホットしたのと同時に、何故か変に怖がっていた自分に驚いていた。



同じ様に奥に行き、ガラス戸を開けるとまた風が部屋に吹き込んでくる。



「あっ、痛い」咲子の眼の中にホコリが入った。



咲子はホコリを目からだそうとして目を擦りながら部屋を出ようとしていると、庭の方から誰かが見ている様に思え、充血した目で振り向いた。



ぼやけた目で庭を見てみると、誰かがこちらを見ている



「えっ?」



もう一度目を擦り、視力の戻った目で見てみる。



そこには誰も居なく、雑草が弱い風に揺れているだけだった。



「そうよね、気のせいよね」



そう言ってその部屋を出て鍵を閉めた。



そして、また一息ついた。



「はぁ、いやだな、最後の部屋に行くの」



咲子がこの長屋を見に来たのは理由があった。



明日、この廃屋は解体される事になっている。



そのため、忘れ物、残された物の中に貴重な物が無いかの確認をしに来た。



本当はもう1人を連れてくるはずだったけれど、急病になり仕方なく1人で来る事になってしまった。



そして、咲子が嫌がっている一番奥の部屋の荷物は貴重品や衣服を除いて、以前の住人が使っていた時のまま残されていると報告を受けていた。



奥の部屋の住人は他の2人のお婆さんの先にたってこの長屋を売る事に反対していた、それも凶器的に。



交渉に来た担当者三橋に刃物を持ち出し抵抗、警察沙汰になった事も少なくなく三橋はノイローゼになりかけた程だった。



しかし3カ月前、交渉をするために長屋を訪れた時、お婆さんが部屋で動かなくなっているのを発見してしまった。



お婆さんは奥の部屋の真ん中辺りにうつ伏せに横たわっていて。



遺体の前には何かが置かれた台があり、周りには消えたロウソクが幾本も立てられていた。



三橋はすぐに警察に電話をし、そして死んでいるのを確認した。



遺体は死後一週間ほど経っていた。



三橋も警察の事情聴取を受けたが、部屋の中も争った形跡も無く、遺体にも外傷が無かったため病死ではないかという事で、三橋は解放された。



そのお婆さんが亡くなった事で、他の2人の住人も弱気になりこの長屋を離れる事に同意。



三橋は交渉と言う辛い仕事から解放され、今後の仕事も順調に進める事が出来るはずだった。



しかし、三橋は亡くなったお婆さんの部屋の整理を進める手続きをしている途中で突然会社を辞めていった。



違う者が担当を引き継いだが体調を崩してしまい入院してしまった。



1ヵ月前に咲子がこの廃屋を担当する事が決まり、前からしていた仕事を終わらし、ようやく明日解体する事に決まった。



咲子は部屋の資料に目を通す。



「まだ、家具とかはあるのね。他は一応引き取ってもらったみたいだけど」



そして、部屋の鍵を開ける。



玄関の引き戸をゆっくりと開けていくと、ドアの乗っているレールが錆びているのか滑りが悪く



ガタッ・ガタッ・ギギィー



嫌な音と共に開いていった。



モワァ~っとした湿気を帯びた空気が咲子の顔を包む様に玄関から外に吐き出されていった。



咲子は無意識に顔を払う様なしぐさをしながら部屋の中を覗き込む。



この部屋は前の部屋と違い不気味な雰囲気をかもしだしていた。



何より、真っ暗で目を凝らしても何も見えない。



仕方なく懐中電灯を点け玄関の所から部屋の中を照らしてみる。



光の円をあちこち動かしながら部屋の中を全体に見てみる。



間取りは他の部屋とは違いがないが、荷物が置いてあり、余計に不気味に思えた。



「とりあえず、風を入れた方がいいわね」



咲子はそう言って明かりを頼りに靴のまま部屋に入っていった。



奥の部屋に入る。



バキッ



咲子の靴の下で何かを踏んで折れた様な音がした。



恐る恐る足元に明りを照らし見てみると、木の棒の様な物が転がっていて折れていた。



「もう、なによ」そう呟いて奥の庭につながるガラス戸の前まできた。



咲子がガラス戸に手を当てようとした時、フワッとした感覚が手に伝わって



「キャッ」っとビックリして思わず手を離してしまった。



暗くて気が付かなかったが黒いカーテンがそこに掛っていた。



「これが原因で真っ暗だったのね」



咲子はカーテンを横に引いて外の光を部屋の中に入れようとした時



“ふふふ”



「えっ?」



かすかに笑い声の様な音が咲子の耳に入ってきた様に思え懐中電灯で部屋の中を見渡す。



懐中電燈の光には壁とタンスを照らし出すだけで、人影は無い。



咲子は怖くなり急いでガラス戸を開けようとするが、カーテンが腕にまとわりついてガラス戸のトッテの部分を見つける事が出来ない。



ガタ・ガタ・ガタ、ガタ・ガタ・ガタ



震える手で何とかトッテを見つけ、建付けの悪いガラス戸を勢いよく開けたとたん、咲子は勢い余って庭に飛び出してしまった。



「キャッ」



ドスンッ



「イタァ」



雑草の中に体が投げ出され腰をいやっと言うほど打ち付けてしまった。



咲子は体をさすりながら部屋の中を見ようとするが黒いカーテンが邪魔をして見る事が出来ない。



怖くて、すぐにこの場から離れたいけれど、庭はトタンの塀で囲まれている。



唯一、以前使っていた勝手口は、侵入者を防ぐため釘で固く止められていて、咲子の力では開ける事が不可能だった。



咲子は立ち上がり、仕方なく部屋を抜ける事にした。



「いやだなぁ、でもさっきの声はなんだったんだろう」



そう呟きながら、少しの風で揺れているカーテンを大きく開きながら部屋の中を懐中電灯で照らしてみる。



光のあたる所にはこれと言っておかしな所が無い。



床も照らしてみるが何本かの棒が倒れていて変な光景に思えた。



思い切って部屋に入り、カーテンを思いっきり開けてみると、薄暗いが部屋の全貌がようやく見えた。



「ふぅ」



咲子は一息ついて部屋を見渡すと、棒が何本か倒れている真ん中に小さな台が置いてあり何か呪文の様な文字が書いてある紙が一枚台の上に乗っている



声にならない不気味さにさっさと調べて出ていこうと急いで部屋の中を物色、そして押入れの方に電灯を照らしてみた。



押入れのふすまは外され、横に立てかけてあり、中には何も無い事がすぐに分かった。



「何も無い様だし、早く・・・」



カタ・カタ・カタ



「えっ?」



押入れの方ら妙な音が聞こえてきた。



「なに、なんなのよ」



懐中電灯を押入れに向けるが、音のするような物など何も無い。



恐る恐る押入れに近づいて行き、中を懐中電灯で照らしてみると、天井の一角、天板が外れていて懐中電灯の光に何かが映った。



咲子の心臓の鼓動が速くなる。



どうしようか迷った、怖いけれど、それが何なのか確かめた気持ちもあった。



二段になっている押入れの上に乗り少し見えている物の端をつかみ、ゆっくりと引きずりながら引っ張ってみる。



ズル・ズル・ズル



重たい物が引きずられる音が天井裏に不気味に響いている。



そして、正体不明の物を完全に引きずりだした時、スッと四角い木製の枠の様な物が手元に落ちてきた、そしてもう一つの重たい物が



ドスンッ



押入れの二段目に勢いよく落ちた。



「キャ」



咲子はびっくりして腰を抜かす。



そして、手に持っている木枠を胸に抱えながら、落ちてきたもう1つの物を凝視していた。



それは、布に包まれ赤い紐で結ばれている。



咲子はとりあえずその物を手に取り、他の物が無いかを確認してすぐに部屋を出ていった。



そして、自分が乗ってきた車に乗り込んだ。



「はぁ」



あの部屋で感じた恐怖感からの解放感と車に乗り込んだ安心感で体全体に力が抜け、一気に疲れが出てきた。



咲子は何もかも忘れようと目を閉じ頭を激しく振り、そしてうなだれた。



どの位の時間が過ぎたか分からない、気が付けば見上げた空がオレンジ色になっていた。



咲子は助手席に置いてある木枠と布の包みを見つめていた。



「なんだろ、これ」



咲子はそう言って包みに手を伸ばそうとした時、携帯電話が鳴り始めた。



「はい、神部です」



電話は咲子の上司の山本和夫からの電話だった。



「どうしたんだ、神部君、何度も電話したんだぞ。今何所にいるんだ」



「すみません、解体予定の物件に」



「まあいい、それよりすぐに帰ってきてくれ、次の物件の打ち合わせがしたいんだ」



「は、はい分かりましたすぐに」



咲子は荷物を一瞬見て車のエンジンをかけ車を走らした。



  (手順)



咲子は会社に戻り打ち合わせを済ませ、夜中に家に戻る事が出来た。



明日の解体が終わればようやく先に進む、咲子にとっては交渉していないものの、なんだかほっとした気持ちになっている。



それにしても、今日は疲れてしまっていた。



軽い食事を済ませ、お風呂に入り気持ちをリラックスさせている。



「あっ、あれ何所に置いたんだっけ」



湯船につかりながら咲子は廃屋にあった物の事を思い出した。



「車に置いたままだ・・・まあ明日でいいか」



心も体もリラックスして、咲子はお風呂から上り、キッチンの冷蔵庫から缶ビールを取りだしリビングに向かった。



ソファーに体を投げ出し、缶ビールの栓を開け、ビールを一口飲んでテーブルに置こうとした時、咲子の手が止まった。



テーブルの真ん中に見慣れない、いや見た事のある物が置いてある。



「これ、どうしてここに、車に忘れてきたはずなのに」



そこには、古びた木枠と布の包みが無造作に置いてあった。



缶ビールを静かにテーブルに置いて、咲子はそれを見つめていた、と言うより目を離す事が出来なかった。



静かな部屋の中、咲子は恐る恐る包みの方に手を伸ばし開けてみる事にした。



赤い紐をゆっくり解き、慎重に布を広げていく。



全て開けてみると、そこには数枚の鏡のような物とその上に一枚の紙が乗っている。



咲子は紙を取り、見てみると文字が書いてあった。



“これは願いが叶う鏡。うまくはめ合わせる事が出来れば願いが叶うであろう。

しかし、ひとたび間違えば不幸が訪れる“



「ははは、何これおもちゃなの?」



緊張が少し解け、咲子は紙を横に置いて数枚の鏡を広げてみた。



それは、5枚あり4枚はいびつに四角く先端の方もそれぞれ違う形になっている。



残りの一枚はいびつな多角形で、本当にパズルの様に思える。



木枠の方をよく見ると、綺麗な装飾がされていて一見写真立てに使えそうと咲子は思った。



でもよく見ると、木枠の中に何かが書いてあった。



黒い文字で薄くなっていて分かりにくいが、どうも漢数字に見える。



左上が一、右上が二、左下が三、右下が四、そして真ん中が五



「そうか、この順番にこの鏡をはめていけばいいのか、簡単じゃん」



咲子はそう言って鏡と木枠を見比べながら何所に入るか検討していると、横に置いた紙が気になって再度見てみる。



先ほど呼んだ文の下に何かが書いてあった。



“この鏡は一度始めると止める事が出来ない、どうしても止めたいのであるならば、血をもって止める事が出来る”



「血ってなによ、馬鹿げてるわ、これ」



“手順”



“木枠に書いてある数字通りに鏡をはめていく、この時叶えて欲しい願いを念じながらはめる事。順番、はめる位置を1つでも間違えれば代償が生じる“



そして下の方に「霊香」と書いてあった。



「ふ~ん、まあ、今は願い事も無いから、面白そうだけど」



咲子はそう言って鏡を布の包み直し木枠の横に置いた。



「これ、どうしようかな、あっ、もうこんな時間、寝よう」



時計が12時を過ぎていたから咲子は寝る事にした。



  (長屋の解体)



咲子が起きたのは7時を少し過ぎた時間だった。



あれからベッドに入ったものの、眠る事が出来ず数時間起きていた。



眠くなかった訳ではなかった、ただ、誰かに見られているような感覚をずっと感じていて、気が付いたら眠っていたようだ。



まだ眠っている感じの頭をさまそうと、咲子は顔を洗うため洗面所に入った。



大きなガラスの前に立ち、ショウトの髪の毛を髪止めで止めおでこを出して、冷たい水を顔に何度もかける。



そしてしばらく冷たい水の余韻を楽しみ、自分の顔に付いている水滴が落ちるのを目で追い目を覚まそうとしていた。



水滴が他に飛び散らない様に頭を下げたままで、横の置いてあるタオルを見ないで取りそのまま顔に当てて拭き始めた。



さっぱりした感じで顔を上げ、朝の自分の顔を見ようと鏡を見た。



「えっ?」



狭い洗面所、咲子の顔が鏡の真ん中辺り映っているその後ろに、別の顔が一瞬映った様に思えてビックリして目を閉じた。



もう一度ゆっくり目を開けるとそこには化粧前の咲子の顔しか映ってなくて、他には誰も居ない。



「なに、気のせい?でも・・・」



動揺しながらも、咲子は出かける準備を急いでして部屋を出ていった。



会社に行って打ち合わせを済ませ、昨日行った廃屋に向かった。



現場にはもう解体業者が来ていて、さっそく打ち合わせをし、そして隣近所に挨拶をするために向かった。



そして、解体作業が始まる。



古い廃屋、風情のある景色が一瞬のうちに廃棄物の山と化していく。



咲子はそんな風景が好きじゃ無く、とりあえず自分の車に戻る事にした。



車の中の密閉された空間、外に居れば激しく聞こえてくる解体の音も、いくらか軽減されていて少しだけ落ちつけた。



まずは会社に報告のため電話を入れる。



連絡を終え車のエンジンをかけるとカーラジオの心地良い音楽が外の音を消してくれて、咲子は1人の世界に入る事ができた。



昨日の事、持ち帰ってきたあの鏡と説明が書いてあった紙。



怖いはずなんだけど、興味もありどうしようか咲子は考えていた。



少し休もうとシートを倒し、目を閉じると先ほどまで感じていなかった眠気が咲子を襲う。



ふと気が付くと咲子は暗闇の世界にいた。



“どこ、ここはどこなの”



そう言って何所を見ているか分からないが、首を振りながら周りを見てみる。



光も音も無い暗闇、自然に咲子の体は震えだし恐怖を感じ始めていた。



しばらくすると、目の前に一筋の光が「カチャ・カチャ」と言う音と共に走った。



咲子はその光の筋に手を近づけると、光の脇の何かに手があたった。



その時、その何かの向こう側で人の声らしき音が聞こえてきた。



咲子は耳を澄まして聞いてているが、こもっていて何を言っているのか聞き取れない。



でも、声は1つでは無く2つ聞こえてきている。



聞こえてくる1つの声は若い女性の様に聞こえる。



そして、もう1つの声は泣いている様に聞こえた。



咲子は身を潜めどうしようか迷っていると、若い女性らしき声がだんだん近づいてくる。



“どうしよう、どうしよう”



暗闇で見えているのは一筋の光だけ、体を動かそうと思っても下手に動かせば音がしてばれてしまいそうだ。



「もう、そんなんだからあんたは駄目なのよ」



咲子のいる所の目の前で若い女が怒りながらいい、咲子の目の前の一筋の光の帯が徐々に広がり始めた。



“いや、いや、いやぁ”



声の出せない状況で頭を抱え、光の広がりを見ながら心の中でそう叫ぶ。



そして、光の帯が咲子の顔の幅になった時、咲子は女の下半身を見る形になる。



咲子はゆっくり顔を上げ、女の顔を見ようとした時



コン・コン・コン



ガバッ



「はぁはぁはぁ」



コン・コン・コン



「大丈夫ですか」



車の外でヘルメットを姿の1人の男が声をかけてきた。



咲子は窓をゆっくりと開け



「ごめんなさい、どうされました?」



咲子は少しバツが悪そうに言うと



「いや、用事があって来たんですが、苦しそうにうなされていたようだったんで」



「ああ、ごめんなさい、大丈夫です、それで、用事ってなんですか」



「そうそう、会社の方から電話が合ったんです、神部さんの携帯に何度かけても出ないからこちらの方に」



「そうですか、どうもすみません」



咲子が自分の携帯を見ると数件の着信があった。



「ありがとう、ございます。すぐに電話しますんで」



「それじゃ」そう言って男は車から離れていった。



咲子はバックミラーに顔を映すと、額に玉の様な汗をかいている事に驚いて急いでバッグからハンカチを取り出し拭き取り、落ち着いたところで、会社に電話をした。



「神部君、どうしたんだね、何度も掛けたんだよ」



「すみません、ちょっと」



「まあ、いい」



咲子は山本の態度がそっけなく感じた。



「神部君、すぐに帰ってきてくれないか、ちょっと話したい事があるんだ」



「電話では駄目なんですか、こちらをもう少し」



「もう解体が始まってるんだろ、それならもう居る必要はないだろ」



「それはそうですけど」



「じゃすぐに、待ってるから」



咲子は電話を切って「はぁ」と溜息をついた。



仕方なく車を降りて解体現場に向かった。



解体は順調に進んでいる様で、作業をしている人達が忙しそうに動いている。



現場監督の所に行って帰る事を伝え、その場を去ろうとして、もう一度解体されていく家の方を何気なく見た。



長屋の手前側から重機が家を壊していっている光景を見て、車に向かおうと振り向きかけて一番奥の部屋の玄関が目の端に見えた時、何かが動いた様に思えもう一度確認のために玄関の方を見ると部屋の中に消えていく女の子の手が見えた様な気がして。



「人が、女の子が、だめ、止めて解体を止めて」



咲子はそう叫びながら現場監督の方に走って行く。



「ど、どうしたんですか、もう止められないですよ」



「だめ、中に、奥の部屋に女の子が入っていったの」



「女の子?そんなの見てないですよ」



「嘘よ、私見たんだから、女の子が部屋に入っていくの」



「僕も解体の様子をずっと見ていたけど、人の姿は見ていないし、ましてや女の子なんて」



現場監督のいる場所は現場を見渡せる場所、奥の部屋の玄関も見える。



「でも、万が一の事もあるから、確認だけでもお願いします」



咲子の頼みに現場監督は仕方なく重機を止める様に支持をだして、奥の部屋に数人で確認しに行ってくれた。



数分後、渋い顔をしてみんなが部屋から出てきて、現場監督が咲子の方に近寄ってきて。



「確認したんですけど、誰も居なかったですよ、何かと見間違えたんじゃないですか?」



「でも、確かに女の子の」



咲子は見た事を主張しようと思ったが



「そうですね、気のせいだったのかも、すみません」



「まあ、何かあってからじゃ遅いんで、確認して誰も居なかったから、よかったじゃないですか。それじゃ解体を再開しますよ」



「はい、どうもすみませんでした」



咲子は申し訳なさそうに深く頭を下げた。



そして、車に乗り込み現場を後にした。



  (恨む原因)



咲子が会社に戻ると事務所には山本が1人いるだけだった。



「お疲れ、現場は様子はどんな具合だ」



「はい、順調に進んでます、それより他の人は?」



「みんな外回りに出ているよ」



「それで、話しってなんですか」



咲子は自分のデスクに座りながらそう聞くと



「まあ、そう急ぐな、たいした話じゃないから」



山本はそう言いながら咲子の方に近づいてくる。



咲子は山本の妙な雰囲気に気が付いて席を立とうとすると、いつの間にか山本は咲子の後に立っていて両肩を押さえる様につかんだ。



「そうしたんだね、神部君。話があると言っただろ」



山本の腕に力が入っていて咲子は立つ事ができないでいた。



「あ、あの話しってなんなんですか」



恐怖に震える声で咲子が言うと



「話しかい、そんなの後回しで」



山本はそう言って咲子の胸元に手を持っていこうとした時



「いやぁ」



咲子は大声を上げ、山本の手を振り払った。



山本は振り払われた勢いでひっくり返った。



その隙に咲子は逃げようとしたが、椅子の足につまずいてこけてしまった。



すると、山本は咲子の上に覆いかぶさるように襲ってきた。



「いや、止めて、いやぁ」



「静かにするんだ、騒いでも誰も来ないさ」



「どうしてこんな事、止めてください」



咲子が涙声で言うと



「前から君の事狙ってたんだ、今日がチャンスだと思ってね」



咲子は体をバタつかせ抵抗するが男の力にはかなわない



「ほら、大人しくするんだ」



パシッ



山本は暴れる咲子の頬にビンタを入れ静かにさそうとした。



咲子は叩かれたのと襲われているショックで体が動かなくなってしまった。



すると山本は咲子の胸元に手を持っていき着ている服を引き裂こうとした時



ガチャ



誰かが部屋に入ってきて



「な、なにしてるんですか」



そこに入ってきたのは咲子の同僚の井川弘樹だった。



「あっ、いやこれは、なんだその」



山本はサッと咲子の体から離れ後ずさりしていた。



「あんた、神部さんに何をしてんだ、ええ」



井川は咲子の体を起こし椅子に座らすと山本に近づいて行く。



咲子は襲われたショックと助けられた安ど感で止めどなく大粒の涙が流れ始めた。



それから、井川が山本を胸ぐらをつかんで一発殴る、そして山本の上司に電話を入れ、事情を説明し、帰

ってきた他の社員にも報告をした。



咲子はとりあえず家に帰され、後は後日に事情を説明する事になった。



  (1枚目の破片)



家に帰ってきてもショックが抜けない咲子はシャワーを浴び気持ちを落ち着かせようとしたが、あの光景

が脳裏をよぎってしまう。



リビングのソファーに体を投げ出す様に座ると、目の前のテーブルに例の木枠と数枚の鏡の破片が目に入った。



“山本はおそらくあの支店には居られないだろう、でも許せない、あんな事、許せない”



咲子の心に山本に対する怒りがこみ上げてきて、静かに手がテーブルの木枠に触れる。



「もし、本当に願いが叶うなら、山本に罰をあたえて」



咲子はそう言いながら、もう一方の手に一枚の鏡を取り、木枠の左上に持っていった。



鏡を静かに木枠の左端に合わす様に置き、そして隙間を埋める様にずらすとカチャっと小さな音をたて、はまり込んだ。



咲子は試しに外そうと試みるが、はまり込んでいて動かす事が出来ない。



「これで、本当に願い事が叶うのかしら」



咲子が山本に対して願ったのは“会社を首になる”事、そう願った。



そして、しばらく何もする気が起こらず、ソファーに座りボーっとしていた。



ベッドに入っても眠る事が出来ず、仰向けに寝て天井を見つめていると昼間の光景が浮かんでくる。



布団を顔の上まで持ってきて目を閉じると余計に悲しくなってきて自然に涙が流れ始め、そのまま数時間が過ぎ泣き疲れて眠ってしまった。



  (2枚目)



次の日の朝



咲子は会社に行く気にもなれず、部屋の中でボーっとしていた。



昼過ぎに会社の井川から電話があった。



「山本なんだけど、他の支店に今日付けで異動になったから」



「異動?首じゃないの、どうして」



咲子の激しい口調に井川がビックリして動揺し



「いや、俺に言われても」



「そんなの、おかしい、私に、私にあんなひどい事をしたのに」



咲子の涙声が部屋の中に響く



「神部さん、山本は専務の親類だし。もし神部さんが訴えたら」



「訴えるって言っても、私」



咲子は怖かった、あんな事を会社でする山本が、もし訴えたら何をされるか、そしてあの時の山本の目が。



「そう、仕方ないね、まあ、落ち着いたら一度会社に顔をだしてよ、その時また話しをしよう」



井川はそう言って電話を切った。



咲子の怒りはいっそうましていき、大声で泣き崩れてしまった。



夕方、咲子は木枠の鏡をテーブルに置いて見つめていた。



そして、もう一枚鏡の破片を取り、今度は声に出し



「山本が会社を首になりますように」



そう祈り、破片を木枠にはめ込む。



カチャ



軽い音と共に破片は右上の端にはまり込むと、上の部分が繋がり咲子の額を映しこむ。



咲子は木枠をそっとテーブルに置いた。



すると急に眠気が襲ってきて咲子はそのままソファーで眠ってしまった。



暗闇が目の前に広がっていた、車で見た夢と同じように一筋の光が目の前をたてに光っている。



そして、同じ様に光の向こう側で2つの声が聞こえてくる。



前と同じ様にはっきりとは聞き取れないが、小さな声は泣いていて大きな声は怒鳴っている。



咲子は怖くなり体が震えだし、子供の様に膝を抱え顔を伏せる。



次第に遠のく大きな声、そして、その声はドアらしきものが開閉した音と共に消えて行った。



咲子は顔を上げ光の筋を見つめる。



小さな声も聞こえなくなり咲子は気になって光の方に耳を当ててみようとした時、何かが足に当たり小さくカタッと音がしえしまった。



咲子が一瞬動きを止め、何か動きが無いか、音がしないか気配を探った。



しばらくすると、何かを引きずる小さな音が咲子の方に近づいてくるのに気が付いた。



そして、何が近づいてくるのか気になり、咲子は向う側を見ようと、光の筋に目を近づけると声に出ない悲鳴を上げ体がのけ反り、そのまま意識を失ってしまった。



咲子が見たのは小さな黒い瞳、それが咲子の目と合ってしまったからだ。



ガバッ



咲子はソファーから飛び起きた。



「はぁはぁはぁ」



息が荒れ、体も水を浴びた様な汗をかいていた。



「どうして、あんな夢を、それにあの目はいったいなに、はぁはぁはぁ」



咲子はお風呂に入り汗を流し、そしそのまま眠る事にした。



  (3枚目)



次の日も咲子は会社に行く事も、連絡を入れる事もせず1人部屋で過ごしていた。



お昼をまわり、気分直しに外に出る事にした。



太陽の光が咲子の体の中に入り込む様に感じ、少し暖かい気持ちになっていた。



咲子の住んでいるマンションの近くの公園通りを歩いていると。見た事のある男がこちらに向かって歩い

てきた。



そしてすれ違いざまに、その男が三橋信二だと言う事が分かって声を掛ける。



「あっ、神部さん久しぶりです」



三橋はバツが悪そうに言った。



「久しぶりですね、三橋さん」



「どうしたんだ、神部さん、今日は平日なのに」



「それは・・・三橋さんこそ今は何をやってらっしゃるんですか?」



「ああ、小さな会社に勤めてるんだ、同業者の」



「そうですか」



「まあ、一度入った世界はなかなか抜け出せないよ」



そう言って三橋は咲子の顔をまじまじと見て。



「ちょっと話しをしようか」



そう言って咲子を近くにある喫茶店に誘った。



2人はコーヒーを飲みながら、昔の話しを少しして、そして



「あの物件は無事に進んでるのかい?」



三橋が不意に聞いてきて咲子もコーヒーを飲む手が止まった。



「あの物件ですか」



「そう、もう解体が終わってるんだろ」



「そうですね、解体はもう終わってると思います」



「思います?どう言う事なんだい、君が引き継いだはずだろ」



「ええ、解体までは見てましたけど」



咲子は山本との事を話すべきかどうか迷っていた。



「また、何かあったのかい?」



「えっ、またってどういう事なんですか?」



「いや、なに、君が元気がなさそうだったから何かあったのかなって思って」



「三橋さん、何かあったんですね、あの物件で」



「いや、それは」



「言ってください、お願いします」



「どうして君はそんなにあの物件の事を、何かあったのかい」



咲子は仕方なく、山本との事は黙っておいて見つけた木枠と鏡の破片が押入れの天井の裏にあった事を言った。



「そうか、それでその見つけた物はどうしてる」



咲子は使っている事は隠して、置いてあると言っただけだった。



「よかった、使っていたら何があったか」



そう言って三橋はコーヒーを一口飲んで少し考える仕草をして話し始めた。



「僕があの奥の部屋に交渉に行った時すでにお婆さんは死んでいた事は知っているよね」



「はい」



「あのお婆さんの職業は占い師だったって事も資料には書いていたと思うけど、占い意外にしていた事が

あったようなんだよ」



咲子は黙って頷いて続きを聞いている



「あのお婆さん、霊媒師みたいな事もしていたようなんだ」



「霊媒師?」



「霊媒師と言っても、占いの一環みたいな事らしいんだけど、僕が最後に部屋を訪れた時、それらしい物が沢山置いてあったから、確か名前は霊香って言ってたかな」



「それが、どう言う関係に」



「うん、死体を発見した時、側にあった台の上に君が言っていた物があったんだけど、何かしていた様な感じだったんだ。だから僕は怖くなってすぐに部屋を出て玄関先で警察に電話をして、何気なく中を見た時」



三橋はそこで一旦話を止め、グラスに入ってる水を少し飲んで、また話し始めた。



「遺体の側に、女の子が立っていて遺体を見下ろしていたんだ、そして警察の返答にこたえている間に目を一瞬そらしてもう一度みたら、そこには女の子の姿が無かった」



「その子は始めからそこにいたんじゃ」



「そんなはずはないよ、僕は玄関で警察が来るまでずっといたし、それに警察の調べでは裏のガラス戸は閉まっていたから、出ていくとしたら玄関からしか出る事ができない、出ていったなら僕が気付くはずだろ」



「じゃあ、その子は」



「分からない、何所に消えたのか、それに」



「それに、なんですか」



言いたくなさそうな三橋に咲子は聞くと



「うん、実はその後、何度か変な夢を見てね」



「夢?」



「ああ、暗く狭い所に入っていて、横には細い光に筋があって、そこから声が聞こえてくるんだよ。でも話しの内容は聞き取れなくて、そんな夢を何度も何度も」



「それは・・・」



咲子の声を無視するように三橋が話を続ける



「結局、何も無かったけど、あんまりに訳の分からない夢を見てしまうから、それにその声がだんだん近づいてきている様な気がしてね、怖くなって、それがあの部屋のせいだと思って、これ以上あの物件にかかわりたく無かったから会社を辞めたんだよ」



「そ、そうだったんですか」



「神部さんは、夢を見てないか?」



「は、はい、今のところ」



咲子は夢の話は黙っておく事にした、心配をかけたくなかったから。



「それと、もう1つ、隣に住んでいたお婆さんに聞いた話なんだけど、その占い師の住む前に、母子家庭の親子が住んでいたらしいけど、何か事件があって子供が亡くなったと言っていたな」



「子供って、もしかして女の子ですか?」



「ああ、そうみたいだよ」



「事件ってどんな事が」



「お婆さんも詳しい事は話してくれなかったよ、知りたければ当時の家主に聞いたら分かるんじゃないかな」



「そうですか、ありがとうございます」



その後2人は少しだけ話をして別れた。



咲子は三橋の話を考えながら少し外を歩き、そして夕方近くにマンションに帰ってきた。



部屋に入るとすぐに携帯電話の着信音が鳴り始めた。



電話の相手は井川で内容は山本が首になったと伝えてきた。



でも、多額の退職金をもらい、次の勤め先も決まっていると言っていた。



咲子は堪えようの無い怒りを覚え電話を切りそして木枠の方に目をやった。



「どうして、どうして山本は、どうして」



言葉が見つからない程の怒りがこみ上げてくる。



咲子の手が自然に木枠を取り呪文の様に「どうして」を繰り返し唱えていた。



顔の表情は変わり別人の様な咲子は鏡の破片を1つとり



「借金まみれになれ、借金まみれになれ、借金まみれになれ」



そう言いながら破片を木枠に埋め込んだ。



カチャ



乾いた音が静かな部屋の中に響く。



鏡の破片が埋め込まれた木枠が咲子の顔の額と右頬を映す、鏡に映った咲子の口元が少し笑っていた。



  (4枚目)



次の日、咲子が目覚めた朝は雨が降っていた。



電話の音で起こされてしまった。



着信の表示を見ると会社からの電話、咲子は出る事なくそのままにしておいた。



キッチンでコーヒーをセットして出来上がるまでの間にシャワーを浴び、そしてリビングに戻って出来上

がったコーヒーを飲み始める。



何気に携帯電話を見ると着信が3件、会社の電話番号だった。



留守番電話も入っていたから、仕方なく咲子は留守番電話を聞いてみた。



「神部さん、どうですか、まだ会社に来る事はできないですか、もしよかったら連絡してください」



咲子は無造作に電話を切って出かける準備をし始めた。



咲子の向かう場所は、解体された物件の土地を以前持っていた地主の家。



場所は咲子のマンションから車で30分程走った郊外にあるらしかった。



資料に書いてある住所と地図を頼りに、1時間半程かかってようやくたどり着いた。



大きな門がある家で、少したじろいだけど勇気を出して咲子はインターホンを押した。



返事が無い



何度もインターホンを押して会社名と名前を言っても返事が返ってこなかった。



「やっぱり、電話で確認してから来た方がよかったみたいね」



咲子がここに訪れようと思ったのは突然決めた事、電話で確認するより来た方がい早いと思ったからだ。



仕方なく咲子が帰ろうと、自分の車に戻りかけた時



「どなたですか?」と言う声がどこからか聞こえてきた。



咲子が声のする方を見ると、買い物籠をもった年配のおばさんが道路に立っていて不思議そうに咲子を見

ていた。



「あ、不動産会社の物で、以前売っていただいた土地の事でお聞きしたい事があったんですが。あの、こ

ちらの方ですか」



「そうですか、私は親戚の者なんですけど」



彼女は少し考えて



「この家の者はもう居ないですよ」



「えっ、どう言う事ですか?」



「20日程前に亡くなってしまって。私は整理とかで手伝いに来てるんです」



「じゃあ、土地の事を知っておられる方はもう」



「そうね、でも一応どの土地の事か聞いておきましょうか、後で分かるかもしれないから」



「そうですか、お願いします」



おばさんは咲子を案内して家の玄関まで連れてきた。



そして、咲子を玄関に残し、一旦奥に入って行き、数分後お茶を持って戻ってきた。



咲子は土地の住所といつ売られたかを言うと



「そこですか」



おばさんは渋い顔をしてこう切り出した



「最後に売られた土地よね、その土地の事は知ってるわ」



「えっ、何かあったんですか」



「まあね、知ってると言っても詳しい事は分からないけど、昔、子連れが住んでいたのだけど、子供が悲

惨な死に方をして事件になった事があったのよ」



「事件ですか」



「そう、母親が自分の子供、女の子だったんだけど虐待をしてね」



「虐待」



「ええ、日頃から酷く怒っていたらしんだけど、ある日女の子が酷い火傷をしてね、しかも顔を。すぐに

病院に運ばれたんだけど、ショックで亡くなったそうなの」



咲子の脳裏に洗面所の鏡越しに見た女の子、夢に出てきている女の子の泣き声が蘇ってくる。



「その火傷はどうして」



「よく知らないけれど、それもお母さんがって、噂ではね」



「そうですか、それでお母さんの方は」



「母親のほうは警察の虐待の容疑で連れていかれたみたいだけど、すぐに出てきたみたい、その後はすぐに引っ越しをして出ていったそうよ、その後にあの占い師があの部屋に入ったって」



「そうですか」



「私の知っている事はそれくらい、後はもう知っている人はいないかも」



「分かりました、ありがとうございます」



咲子はお礼を言って地主の家を出ていった。



帰りの車の中で咲子は子供の事を考えていた。



あの部屋でおこっていた子供の火傷の事やそして夢の事。



「関係あるのかな」



そう言って、何気なく後が気になりバックミラーを見てみると、そこには子供の姿が後のシートに



「きゃ」



咲子は急ブレーキをかけ車ははねる様に停止し、咲子の体が激しく前のめりになり、シートベルトが胸のあたりに食い込んだ。



「いたぁ」



咲子は痛む胸を押さえながら怖々後ろのシートを見ると、誰も居ない空っぽのシートだった。



「気のせい、気のせいよきっと、そうあんな事考えていたから。そう気のせいなの」



まるで自分に言い聞かすように呟いていると



プップゥー



後ろの方からクラクションの音が聞こえてきて咲子が後を見ると一台の車が止まっていた。



咲子は急いで車を走らせ、マンションへと急いだ。



マンションに帰ってきて急いで部屋に入り鍵を閉める。



そしてすぐに洗面所に行って何度も顔を洗う。



顔を上げ鏡に映る自分の顔をじっと見つめる、そこには明らかに怯えている目をした自分がいた。



何とか落ちつこうと、咲子はコーヒーを入れ、静かな部屋を少しでも音を聞きたくてテレビの電源を入れる。



暖かいコーヒーが胸のあたりを通り過ぎるのを感じながらテレビ画面を眺めていた。



少し落ち着き始めた頃



「そう言えば会社からの連絡が無かったわね、今日は」



そう思って携帯を見てみるが着信が無い、家の電話も見てみるが着信が無かった。



「諦めちゃったのかな、まあいいけど」



咲子の心の中に気になっている事が蘇ってくる



「山本はどうなったんだろ、私の願いは叶ってるのかな」



そう考え始めた時、咲子の気持ちの中に言いようの無い感情が湧いてきていてテーブルに置いてある木枠に目がいった。



「山本に、山本に復讐をしなきゃ、もっと不幸になってもらうのよ」



咲子はソファーに腰を掛け木枠を手に取り、鏡の破片を左下の開いている所にはめ込んだ。



カチャっと軽い音がして隙間なくはまり込む、咲子の目と鼻の部分を除いた顔が鏡に映しだされていた。



唇の両端少しつり上がり笑っている様に見えた。



テーブルに木枠をそっと置くと咲子は急に眠気に襲われそのまま眠ってしまった。



“また、ここ”



暗闇の中、咲子はまた膝を抱えた状態で座っていた。



左側に今回も一筋の光が縦に走っていて、そこから声が漏れてくる。



「もう、あんたってどうしてそうなの」



「わぁ~ん」



「泣いたって許さないから、ちゃんとしなさい」



今度ははっきり声が聞こえてくる



「なに、その鏡、どうしたのよ」



「おじちゃんに、おじちゃんにもらったの」



「おじちゃんって誰よ、誰なのよ」



「知らない、知らないおじちゃん」



「知らないおじちゃん?」



「うん」



女は怒りを爆発さしたようで



パシッと乾いた音がしたと思ったら女の子は大声で号泣し始めた。



「こんなの、知らない人からなんでも貰うんじゃないわよ、かしなさい、かしなさいよ」



「いやぁ、いやぁ」



「かすのよ」



「いやぁ~」



一瞬静かになったと思ったら



ガシャ~ン



「これ、私が帰って来るまでに片付けておくのよ、いいわね」



「うん」



そして、女はすぐに部屋を出ていったようだった。



咲子は暗闇の中、女の子が泣きながら片付けているであろう音を聞きながら、瞳に一筋の涙を流していた。



  (最後の一枚)



夜中、一度咲子は目覚めた、暗い部屋の中、ソファーで眠っていた事で体のあちこちが痛かった。



とりあえずシャワーを浴びるためにバスルームに向かい裸になる。



シャワーのお湯が心地良く顔にあたり心の中まで流してくれている様に思えた。



バスルームから出てそのまま、リビングに向かった。



テーブルの上に置いてある携帯に着信があった事を知れせるイルミネーションが光っていた。



着信表示を見ると会社からの電話で留守番電も入っているようだった。



咲子は気が進まなかったが仕方なく留守番電話を聞いてみる事にする



「神部さんどうしていますか、もしよかったら連絡お願いします。解体した物件の事で聞きたい事がありますから。それと、山本さんですが次の所も首になったそうですよ、うちでやった事がバレタみたいで即首だったそうです。去年大きな家建てたところなのに、どうするんでしょうねこれから。まあ、神部さんにした事の罰ですね。それじゃ連絡待ってます」



咲子の口元が少し上がり一瞬笑ったがすぐに真顔になりテーブルの上に置いてある木枠を手に取った。



4枚の鏡の破片がきっちりおさまっていて真ん中に歪な形の空間があいている。



テーブルの上に一枚の鏡の破片が置いてあり、咲子は手に取った。



「これで、これで最後、山本に与える罰も終わるのよ」



咲子の破片をもっている手は小刻みに震え、木枠の方にゆっくり近づけていく。



そして



「死して償え、死して償え」



咲子の顔は豹変している、髪の毛はシャワーの後の濡れた髪が垂れ下がり、水滴が滴り落ちている、目はつり上がり口元は笑みを浮かべていた。



カチャッ



乾いた音は暗い部屋に一際大きく響く。



最後の一枚がはまり込んだ鏡は、ゆっくり境目が四隅から消えていき、最後に一枚の鏡になった。



そこに映された顔を見て咲子は驚愕した。



そこに映されていた顔は咲子の顔では無く、女の子の様な顔、赤黒く頬の肉が不気味の垂れ下がっている、まるで焼かれた後の様に。



そして目だけがギョロッと見開いていて咲子の方をジッと見つめている。



しかも、唇の無い口は笑っている様に見えた。



「だ、だれ、どうして、こ、こんな」



「これが、あなたの姿よ」



鏡の中の少女のただれた口元がいびつに動いてそう言った。



「うそ、うそよ、そんなのうそよ」



咲子はそう言って鏡を投げつけた



激しく床に叩きつけられた鏡は割れることなくそのまま床に転がり、そして上向きにとまった。



その時咲子は気を失ってしまった。



気が付いた時咲子は暗闇の中にいた、いつも見ている夢の中にいるように。



一筋の光が咲子の顔に当たっている。



その光の方に目を向けようとした時、向う側から声が聞こえてきた。



「ねえ、お譲ちゃん、お母さんは」



その声は男の声だった。



「さっき、お仕事に行った」



「そう、この間あげた鏡はどうしたの」



「えっ、あれは」



「あれは?」



「壊しちゃった、ごめんなさい」



「壊しちゃったのか」



咲子は男の声のトーンが変わった事を感じ何かよくない事が起こると感じた。



「どうして、こわしたんだい、あれほど大事にしてと言ったのに」



「だって、だってお母さんが」



明らかに怒っている男の声に、おびえて答えている女の子の声、咲子は今にも飛び出そうとしていた。



「あれほど、言ったのに、あれほど大事にしてと言ったのに」



「ごめんなさい、ごめんなさい、おじちゃん、ごめんなさい」



ひたすら謝り続けている女の子声はもう泣き声になっていた。



咲子はどうしようか迷っていると男の足音は少し離れ、そしてすぐに近づいてきて



「やめて、おじちゃんやめてぇ」



女の子が叫び声に近い声でそう言った時



ジュ-



「イヤァー」



女の子の叫び声が部屋中の響きわたり



「痛い、痛いよ、おじちゃん痛いよ」



女の子の痛がる声と痛さにのたうち回る音が咲子の耳に響く



「鏡を壊した罰さ、ははは」



咲子が体を動かし、出ていこうとした時



ガチャっという音がして



「なに、してるの山本さん、こんな所で」



「いや、なに」



男は明らかに動揺していて



「それじゃ」そう言って急いで部屋から出ていったようだった。



残された女の足音が近づいてくると



「いやぁ、どうしたの、どうしてこんな事に」



女は自分の子供の状態を見てそう叫び



「救急車、早く救急車を呼ばなきゃ、お願い死なないで、すぐに呼んで来るから死なないで」



そう言いながら急いで部屋を出ていった。



咲子はいそうで暗闇の空間から出て部屋に入る。



振り返ると、咲子の入っていた所は、その部屋の押し入れだった。



そんな事を気にしながら、咲子は女の子に近づいていった。



小さな体がそこに横たわっていた。



女の子の横には蒸気が立ったヤカンが転がっている。



咲子が女の子の体の横に座り、状態を見ようと覗き込むと女の子の顔全体が赤くただれ火傷をしている様に見えた。



「まさか、熱湯を顔に、なんてひどい事を」



咲子の目に大粒の涙が流れだした。



そして、急いで台所に行き、布を探しだし水道の水を布に湿らして女の子の方に戻っていった。



すぐに濡れた布を口と鼻を塞がない様に当てた。



「うぅぅ」



女の子のうめき声を聞いて咲子はまだ息のある事に気が付き抱きかかえるようにした。



「大丈夫、大丈夫よ、今お母さんが救急車を呼んできてくれるから、すぐに病院に連れて行ってあげられるから。大丈夫よ」



咲子が抱きかかえながらそう言った。



抱いている女の子の呻き声が咲子の耳元で低く聞こえた。



咲子はその声に違う声を聞いた様な気がして女の子を少し離そうとすると、女の子の腕に力が入り咲子の体に抱きついてきた。



凄い力、女の子とは思えないほどの力で咲子の体を締め付ける。



「大丈夫よ、すぐにお母さんが救急車を呼んでくるから」



そう言って女の子の体を離そうとした時



「どうして助けてくれなかったの、ずっと見ていたくせに」



「えっ?」



咲子は驚いて女の子の顔を見ようとすると。



「あなたのせいよ、許さないから」



その言葉に咲子は力いっぱい女の子の体を引き離し、その勢いで部屋の壁に思いっきり体を打ち付けてしまった。



「うぅぅ」



咲子は低いうめき声をあげて横たわると、小さな影が咲子の体を包み込む。



咲子が目を開け上を見ると、顔のただれた女の子がすぐ側に立っていて咲子を見下ろしていた。



そして、女の子は湯気の立っている小さなヤカンをもっていて、今にも咲子にかけようとしている。



「お願いやめて、そんな事、止めて」



咲子の言葉を無視するように、女の子はゆっくりヤカンを傾け



「ふふふ、助けてくれなった罰よ」そう言って一気にヤカンを傾け、咲子に向かって熱湯が落ち始めた。



「いやぁー・・・はぁはぁはぁ」



ソファーから飛び起きた咲子は辺りを見渡した。



「ここは、私の部屋、はぁはぁはぁ、夢だったのね」



咲子は時計に目をやると午前7時半を差していた。



落ちつこうと、テレビを点けキッチンいってコーヒーを入れる準備をしていた。



テレビの音がキッチンにまで聞こえてきていて、咲子は何気なく聞いていると今朝のニュースの声が聞こえてきた。



コーヒーメーカーの音を聞きながマグカップを手に取った時



『深夜、○○公園の公衆トイレで男性の遺体が発見されました。身元は無職の山本和夫さん53歳で、発見された時には意識は無く病院に運ばれたものの死亡が確認されたそうです。死因は出血多量によるショック死で額に激しく打ち付けた後があったそうです。現場検証の結果、トイレに備え付けてある鏡が割れているのと、取り付けてあった場所が損傷していたため、事件と自殺の両方を視野に捜査をしているとの事です』



咲子は画面に映った山本の写真を見て驚きマグカップを落としてしまった。



そしてすぐに床に落ちている例の鏡を手に取っていた。



その鏡は真ん中にヒビが入りバリバリに割れている、そして、真ん中に少し赤い液体と、少しの細い糸みたいな物が数本点いていた。



咲子は恐る恐る赤い液体の辺りに指で触ってみた。



ヌルっとした気持ちの悪い感触が伝わってくる。



そして指に付いた赤い液体をまじまじと見て震えだした。



「こ、これ・・・血?」



そして細い糸の様な物もよく見てみるとそれは髪の毛に見えた。



「オエッ」



咲子は吐き気をもよおし、鏡をおいて口を押さえ洗面所に走っていった。



吐くものは無いが何度も嗚咽を繰り返し、ようやくおさまった。



「はぁはぁはぁ、あれは、誰の、もしかして、そんな事ってありえるの」



顔を伏せながらそう言い、そしてゆっくり顔を上げて、大きな鏡の自分の顔を映してみた。



「いやぁ~」



咲子は鏡に映る自分の顔を見て叫び声を上げる。



そして両手で覆う様に触ろうとするが怖くて触れず序所に後ずさりをしていく。



そこに映っている咲子の顔は赤黒くただれていて、まるであの鏡に映っていた女の子の顔の様に見えた。



すると、鏡越しの咲子の後に女の子の姿が現れ、その顔は咲子そのものだった。



その姿を見た咲子は力が失せた様にその場に倒れ気を失ってしまった。



遠のく意識の中で咲子の耳の女の子の声が聞こえてきた。



「願いを叶えてあげたわ、でも始めの一枚目、あなたの気持ちが見えなかった、だから代償ももらう事にするわ」



その言葉を聞いて咲子は暗闇に落ちて行った。



  エピローグ



数日後、咲子が目覚めた所は白い天井で白いカーテンに囲まれたベッドの上だった。



顔の状態が変に思え、自分の手で触ってみると顔中包帯で巻かれていた。



呆然としていると、カーテンがサッと空き看護師が入ってきた。



「よかった、意識が戻ったんですね。大丈夫ですか、今先生を読んで来ますから」



そう言って看護師が出ていってしばらくすると先生が入ってきた。



咲子は状況が分からない、先生の言葉も何を言っているのか分からない状態だった。



目覚めた数日が過ぎると、三橋が見舞い訪れた。



三橋は咲子の状態を見て、慰めの言葉を失った。



でも、どうしても伝えたい事があった三橋は静かに話し始める。



「神部さん、あれから色々調べてみたんだよ、あの物件の事。占い師が住む前に住んでいた母親と女の子の事も。大変な事が分かったよ」



咲子の表情は包帯で分からないが、目の動きで興味があるのが三橋には分かった。



「いいか、話しをしても」



咲子は言葉に出さず、頷いた。



「その親子なんだけど、確かに母親の虐待はあったみたいだね、隣に住んでいたお婆さんに話してくれたよ。どう言う訳か話すのを嫌がっていたんだけどね、しつこく聞いたら渋々ね。当時あの部屋で何度も怒鳴る声が聞こえてきたって。だけど、女の子が死んだ時、お母さんは仕事に行く途中だったようで、お婆さんが言うには隣で男の声がしたって言うんだ。そして、女の子の悲鳴が上がり何かおかしいと思ったお婆さんが部屋を出て行こうとした時お母さんが帰ってきて、すぐに何か話し声が聞こえたと思ったら男の走る音、そしてお母さんが叫びながら走っていったらしいんだ」



咲子は黙って三橋の話を聞いている。



「で、その男がおそらく女の子を死に追いやった犯人だからね。気になって調べてみたんだけど」



三橋は話しを止めた。



しばらくの沈黙が流れ、咲子の脳裏に夢の中でお母さんが言った男の名前が浮かんできた。



その名前は



「山本和夫だったんだよ、その男」



咲子の目が見開き三橋を見つめる



「昔、三橋はあの地区を担当していたそうなんだ。そして当時、不倫をしていて、子供が出来てしまった女をあそこに住ましたそうなんだ。でも、女は子供が大きくなるにつれ、山本と別れ話をするようになってある日、あの事件が」



“あの夢は現実の起こった事だったのね”そう思うと咲子の瞳に涙が流れ始めた。



「神部さん、部屋にあったあの鏡なんだけど、知り合いの霊媒師に頼んでお祓いをしてもらって処分しておいたから、安心してもいいよ」



「どうして、鏡の事を」



「ああ、神部さんと会った時君の仕草が気になっていてね。そして山本の事をニュースで知ってすぐに君の所に行ったんだ。そしたら君が倒れていて。君が救急車で運ばれて行く時にリビングに割れた鏡があったんだけど、血と髪の毛が付いていたからヤバいかもって思ってね」



「そうですか、ありがとうございます。なんだかスッとしたような」



「そう、でも」



三橋は何かを言いかけたが止めて



「じゃあ、それだけを伝えたかっただけだから、もう帰るね」



「ありがとうございます」



「じゃあ、お大事に」



三橋はそう言って病室を出ていった。



その夜、咲子はトイレに行こうと病室を出て廊下を歩いていた。



トイレはナースステーションの前にある。



トイレの前まで来た時、ナースステーションの中を一瞬見ると誰も居なかった。



気にせずトイレに入る。



用をすまして洗面で手を洗い何気に鏡を見た。



自分の顔が包帯で巻かれていて、目だけがはっきりと分かる。



自然に涙が流れだしてきた。



数分、顔も上げる事も出来ない位涙を流していると、遠くで人の歩く音が聞こえてきた。



咲子は自分の姿を見られる事を怖がりその場を離れようと顔を上げ一瞬鏡に目がいった。



「えっ?」



そこには包帯で巻かれた咲子の顔の横に、咲子の顔の女の子がほほ笑みながら立っていて咲子を見つめて

いる。



そして、ゆっくり唇が動きだしこう言った。



「どうして、生きているの?あなたが死ぬまで憑いていてあげる」



咲子の悲鳴が病院中に響きわたった。



       End


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