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恋よ咲け  作者: Lilly
恋が咲くまでのお話
3/27

第三話 恋って・・・難しい

「知っていきましょう。恋について」

 私がそう言うと、白谷さんは明るく笑った。

「じゃあ、美華って呼ぶべきなのかな」

「恋人になると、呼び捨てで呼ばないといけない文化でもあるんですか?」

「・・・いや、そんなことはないけど」

「じゃあ、無理して呼ぶ必要はないと思います。いつか、呼びたくなった時に呼ぶ。それでいいと思います」

 私の提案に彼は目をパチパチとさせて、笑った。

「そうだね」

 白谷さんは、目をパチパチとすることが多い。それは多分、私が今までの彼女と違うからだろうか。

「じゃあさ」

 そう言って、白谷さんは私の目の前に座った。

「敬語は無しでお願いしてもいい?」

「・・・分かった」

 私の返答に満足そうに笑った後、白谷さんは「また明日」と言って帰っていった。


「それで、付き合うことになったの!?」

 帰ってきた瑠璃に事の顛末を教えると、瑠璃は嬉しそうに笑った。

「じゃあ、これから恋についてたくさん知っていってね。みーさん」

「私が白谷さんを好きになる保証はないよ?」

「それでもいいの。誰かと付き合うってすごく特別なんだってことを、まずは知ってよ」

 妙に大人びた表情で瑠璃はそう言う。 

 その言葉を、私は一生忘れない気がした。


「おはよー」

 朝、教室に入ると白谷さんに挨拶された。

「・・・おはよう」

 そのせいで、クラス中からの視線が痛かったけれど。

「え、円城寺さんと涼くんって仲良かったっけ」

「わかんない。でも意外、涼くんってあんな陰キャとも仲良くするんだね」

「それな。涼くんって優しいんだね」

 そんな会話が聞こえた。

 周囲の視線が痛い。私のような陰キャが白谷さんと話していること自体が、クラスの女子は許せないのだろう。

「ねぇ、円城寺ちゃんはさ、甘い物だと何が好き?」

 私が周囲からどう思われてるかも知らずに、白谷さんは永遠に話しかけてくる。

「ワッフル。・・・ねぇ、円城寺ちゃんって何?」

「美華ちゃんって呼んでも良かったんだけど、円城寺ちゃんの方が響きが可愛いかなって思って」

「そう・・・ですか」

「あ、敬語は禁止って言ったでしょ」

「・・・ごめん」

 そう話している時の視線も痛い。しかも、瑠璃は気を使ってか知らないが私に全然話しかけいない。頼むから話しかけてほしい・・・。

「今日の放課後って、何か予定ある?」

「・・・何も」

「じゃあさ、一緒に遊びに行かない?」

「どこに?」

 私の質問に、少しだけ悩んだ後白谷さんは、笑顔でこう言った。

「円城寺ちゃんの行きたいところ」

「・・・私の、行きたいところ?」

 そういえば、そろそろ新しい本を買おうと思っていたんだった・・・。でも、白谷さんみたいな人が本屋さんに行くのだろうか・・・。

「円城寺ちゃんの行きたいところなら、どこでもいいよ?」

「・・・じゃあ、本屋さんに行きたい」

「本屋さんか、いいね。そうしよ」

「え、いいの?」

「うん、僕本好きだよ」

「そうなんだ・・・」

 白谷さんのような陽キャでも、本を読むんだ・・・。


 放課後、私と白谷さんは駅前の本屋さんに行った。

「円城寺ちゃんは、何を読むの?」

「推理小説・・・かな」

「へ〜、面白い?」

 私が頷くと、白谷さんは私の頭をぽんぽんと撫でた。

「え?」

「あ、ごめん。撫でられるの嫌いだった?」

「慣れてなくて、驚いただけ。白谷さんは、よく人の頭を撫でるの?」

「僕、昔おばあちゃんによく頭を撫でてもらってたんだよね。頭を撫でてもらうと、温かい気持ちになれて嬉しかったんだ。だから、よく人の頭を撫でているんだと思う。相手にも、温かい気持ちになってほしいからね」

「それは・・・すごく、良いと思う」

「じゃあ、これからも円城寺ちゃんの頭を撫でるね」

 そう言って、白谷さんはまた私の頭を撫でた。

 なんだか、温かい気持ちになれた。


 家に帰り、スマホを開くと瑠璃からの通知が溜まっていた。

『みーさん、デートどうだった!?』

『え、待って全然返信して来ない!そんなに長くデートしてるの!?』

『詳細分かったら、連絡してよ!ていうか、電話して!!』

 ・・・・・・とりあえず、電話をかけよう。

 電話をかけると、スリーコールで出てきた。

『あ、みーさん!!デート終わったの!?どうだった!?』

「テンション高い・・・。本屋さん行っただけだよ」

『え、それで終わり!?もう、もっと頑張ってよ』

「何を・・・?」

『デートらしいこと』

「デートらしいことって?」

『ん〜手を繋ぐとか』

 瑠璃は、難しいことを言う。私は経験がないんだから、デートらしいことが分からない。

『でもさぁ、デートらしいことしてないと白谷くんもつまらないんじゃない?』

「え・・・」

 考えたこと、なかった。私はデートらしいこととか、カップルらしいことが分からない。でもー

「でも、白谷さんは私の好きなとこに行こうって言ってくれたよ?」

『そんなの、気を使ってるに決まってるじゃん!もう、ちょっと考えれば分かるでしょ?』

 分からない。分からないよ・・・!白谷さんがどう思っているのかも、私が本当は取るべき行動も。

『・・・みーさん』

「何?」

『諦めないでよ。恋することを』

「瑠璃は、難しいことを言うね・・・」

 私はそう言って、電話を切った。

 机の上に置いた今日買った本が、目に入った。

「白谷さんは、楽しくなかったの・・・?」

 言葉を鵜呑みにしてはいけなかったのだろうか。私は恋を知らない。デートも、カップルもよく分からない。白谷さんも恋を知らない。でも白谷さんは、デートも、カップルも知っている。私と白谷さんの違いはそこだ。やっぱり、私じゃ駄目だったのだろうか。

「恋って・・・難しい」

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