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第66話 新聞部、突撃レポート!(1)

 それは優香と一緒に登校した時のことだった。


 最近の俺は、おおむね2日に1回くらいは15分早く家を出て、優香と一緒のバスに乗っているんだけど(どうしても毎日は起きられない)――。


 校門を入ってすぐに、

「2年1組の紺野蒼太くんと姫宮優香さんですよね?」

 俺たちは見知らぬ女子生徒から突然声をかけられていた。


 ネクタイのラインが緑色なので、とりあえず3年生の先輩だということだけは分かる。

 女子の先輩って時点で、俺の知り合いでないことは確定。

 ってことは優香の知り合いだろうか?


「はい、そうですけど」

「ねえねえ、蒼太くんの知り合い? 私、先に行ってようか?」


「え? 優香の知り合いじゃないのか?」

「私の知り合いでもないんだけど……」


 どちらの知り合いでもないと分かって、俺と優香は思わず顔を見合わせた。


「えー、突然ですみません。私は校内新聞部の者です。本日はお二人に簡単なインタビューをさせていただけないかなと思いまして」

「校内新聞部……?」


 ってあれか!

 俺が振られた話を翌日に誤報オッケーで拡散しやがった、あのクサレ外道の新聞部か!


「問題ないようでしたら早速インタビューに入らせていただきたいんですけど。おふたりは最近とても仲がよろしいようですが、ズバリ付き合っていますか?」


 まさに出会い頭からの不意打ちの質問だった。

 付き合っているかと聞かれて、優香への恋心が見透かされたのかと思って一瞬ドキリとしてしまう。


 後で健介に教えてもらったんだけど、いきなり核心をつくことで相手を動揺させて、考える暇を与えずに本音をポロリと零れさせるという、あくどい取材手法らしい。


 そういや「あくどい」って、「悪どい」は間違いで、語源的には「灰汁どい」らしいな。

 いや別にそれはどうでもいいんだけれど。


「いいえ、付き合ってはいませんよ。少し仲がいいだけのただのクラスメイトです」


 しかし俺は内心の緊張とか動揺を微塵も見せることなく、サラリと答えた。

 というのもだ。

 優香と仲良くなった以上は、こういう質問を新聞部にされるであろうことは当の昔に想定済みだったからだ。


 むしろ俺が振られた話を翌日に流しやがった新聞部にしては遅いくらいかな。(この鬼畜の所業に関して、まだ俺は少し根に持っているぞ)


 そしてここで変に動揺したり下手な嘘をついたりすると、さらに余計な詮索をされることは明白だった。


 ダンマリもよくない。

 そもそも俺にはやましいことは何もないのだから、黙る必要がない。

 むしろこれをチャンスととらえて、冷静に淡々と事実を積み上げ、疑いの余地を完全になくしてしまう方がいいまであった。


 根も葉もない噂が立って優香に迷惑がかかるのだけは、なんとしても避けたいからな。


「なるほど~。ですがその割にはお互いに下の名前で、とてもフレンドリーに呼び合っているようですけど?」

「俺は仲のいい友達はみんな名前呼びしてるので、優香も単にその一人ってだけですよ」


 これも嘘ではない。

 残念ながら仲のいい友達は優香の他には健介くらいしかいないのだが、自信をもって嘘ではないと言える。


「学校帰りに一緒にご飯を食べていたのも、単に仲が良かっただけでしょうか?」

「学校帰りにご飯を食べるくらい、普通の友達付き合いの延長ですよね? それってそんなに不思議ですか?」


「姫宮さんの家に遊びに行ったという情報もありますが?」


 ……よく調べてるなぁ。

 俺のことストーカーでもしてるのか?


 ま、今日まで時間をかけて入念に調べあげた上で、満を持して直接アタックに来たのだろう。


 仕方ない。

 俺が答えた端から次々と矢継ぎ早に質問を繰り出してくる新聞部の先輩に、俺はこれらの質問を完膚なきまでに封殺する、とっておきの切り札を繰り出すことにした。


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