第144話 そうだ、ゲームをしよう!
「ねぇねぇ、蒼太くん。美月が一緒にゲームしたいって言ってるんだけど、今日ってうちに来れないかな?」
学校に向かうバスで優香と一緒になると、すぐに優香がそんなことを言ってきた。
「もちろんいいぞ。何のゲームをするんだ?」
「それは内緒にして欲しいって、美月に言われてるの。ごめんね」
優香が申し訳なさそうに、顔の前で両手を合わせる。
「ははっ、美月ちゃんらしいな。きっと優香に伝えてもらうんじゃなくて、自分で直接言いたいんだろうな」
「多分ね。あの年ごろの子って、そういうところあるから。かくいう私も昔はそうだったから、人のことは言えないんだけど」
「あるあるだな。俺も出たばかりのおもちゃを買ってもらった時とか、いいだろーって言いたくて言いたくてしょうがなかったもんなぁ」
美月ちゃんの可愛くて子供らしい考え方に、俺はなんともほっこりしたのだった。
というか優香は今だって、ラインで連絡をくれたらそれで済むのに、こうやって直接話したがるよな。
もしかして俺と直接、話をしたいからだったり――なんてことを、優香のことをことさらに意識するようになっている最近の俺は、少しだけ考えてしまう。
もちろん俺の勝手な思い込みだ。
優香は真面目だし、お願いをするんだから顔を合わせないと失礼、みたいな考えなのかな?
ま、俺的には優香のお願いなら、ラインだろうが矢文だろうが、天気がいいからと前触れもなく呼び出されようが、二つ返事でOKなんだけども。
「じゃあ今日の放課後にお邪魔するな」
「ありがと♪」
◇
そして学校が終わってから優香の家に遊びに行くと、
「おねーちゃん、お帰りなさい。そして蒼太おにーちゃん、いらっしゃいませ」
玄関を開けるとすぐに美月ちゃんが小走りでやってきて、礼儀正しくお出迎えをしてくれた。
帰りに優香が家にいた美月ちゃんに電話をしてくれていたので、美月ちゃんは俺たちが来るのを待ち構えていたようだ。
「ただいま美月」
「美月ちゃん、こんにちは。お邪魔させてもらうな」
優香と俺は笑顔でそれに応えると、
「それで、あの! 今日は蒼太おにーちゃんと、一緒に遊びたいゲームがあるんです」
早速美月ちゃんが本題を切り出してきた。
「優香から聞いてるよ。でも何をするかは聞いてないから、教えてくれるかな?」
はてさて、美月ちゃんは一体何のゲームをしたいのかな?
「美月がしたいのはこれです」
そう言うと、美月ちゃんはずっと後ろ手に持っていた何かを、得意げに見せてくれた。
それは1枚の大きなシートだった。
シートの表面には、4種類の色をした小さな円がいくつも描かれていて、とてもカラフルだ。
これって――、
「ツイスターか」
ツイッターと名前がよく似ているが、Web作家が投稿小説で微妙に名前を変えて使うパチモンSNSとかではなく、複数人で遊ぶ、アメリカ発祥の有名なパーティゲームだ。
「はい! この前テレビで見て面白そうだなって思ったら、パパが会社から持って帰ってくれたんです」
「会社から……?」
ってことは、2人のお父さんはおもちゃ会社に勤めているのかな?
タ力ラトミーとかバソダイとか?
それとも宴会の余興かなにかで使うんだろうか?
宴会部長をやってる的な?
まぁ、大人の宴会とかよく知らないから、なんとなくのイメージだけど。
「どうかしましたか?」
「ごめん、なんでもないんだ。えっとルールはたしか、触る色を指示する人の言葉に従って、2人が色のついたサークルを交互に触っていくんだよな」
「はい、だから遊ぶのに3人いるんです」
「なるほど、だから俺が呼ばれたわけだな」
美月ちゃん、優香。
そして2人の共通の知り合いである俺。
納得の理由だった。
でもそっか。
そういう意味では、今の俺ってかなり特別なポジションにいるんだよな。
優香の友達がみんな美月ちゃんの友達ってわけじゃないだろうし、逆もまた然りだ。
なにせ高校生と小学、年齢は7歳差。
交友関係はほとんど被らないはず。
2人の交友関係を深くは知らないから推測だけど、俺は優香と美月ちゃんの両方が気兼ねなく付き合える、数少ない存在なのかもしれなかった。
およっ?
よくよく考えてみたら、今の俺って超絶に破格のポジションにいるんじゃね?




