第133話 「今日は結婚記念日~♪」
「それじゃあ話も一段落したことだし、そろそろ家の中に入りましょうか?」
「そうだな。家まで来たのに、玄関前で立ち話する必要はないよな」
「はい、どうぞ上がって」
すまし顔で言ってから家に向かって歩き出した優香に続いて、門を通ろうとした美月ちゃんは、しかし思い直したようにくるりと180度ターンして振り返ると、俺のところに駆け寄ってくる。
そして俺の隣に並ぶと、俺の手をちょこんと可愛らしく握ってきた。
「えへへー」
「どうしたどうした? 今日はいつにも増してご機嫌だな?」
「それはもちろん、蒼太おにーちゃんとおねーちゃんが、結婚の約束をしましたから!」
「あ、うん……うん、はい、うん……」
「これで蒼太おにーちゃんは、本当におにーちゃんになるんですよね!」
「そ、そうなるのかな……?」
「結婚、結婚~~♪ 蒼太おにーちゃんとおねーちゃんが結婚~♪ 結婚~~♪」
「う、うん……」
「今日は結婚記念日~♪」
「う、うん…………(滝汗)」
それはもう嬉しそうな声で、俺と優香の結婚記念日認定をされてしまいました。
なんかもう、引き返せないところまで来てしまった感がある今日この頃です。
いやほんと、どうしよう。
美月ちゃんの中で俺、完全に優香の婚約者になっちゃってるんだけど。
「それに蒼太おにーちゃんに、いっぱい話したいことがありますから」
「そ、そうか。今日はどんな話を聞かせてくれるんだ?」
とりあえず目先の結婚の話題から話をそらせたかった俺は、美月ちゃんに先を促した。すると、
「あのねあのね。美月、今日学校で発表会があったんです」
美月ちゃんは手をつないで歩きながら、嬉しそうに俺を見上げて話し始めた。
「おー、発表会か。懐かしいな」
「!! 蒼太おにーちゃんも、発表会をしたことがあるんですか?」
「もちろんあるぞ。ほんと懐かしいな、小学校の授業で時々あったよなー、発表会」
「さすがは蒼太おにーちゃんです!」
「みんなやったから、さすがってわけじゃないんだけどな。それで美月ちゃんは何の発表をしたんだ?」
「美月は、班ごとに分かれて町の歴史を調べて、それを画用紙にまとめて、みんなで発表しました」
「町の歴史調べか。俺もやったよ。昔は今と違うところを川が流れていたとか、町名の変更や、その理由とかを調べたりしたなぁ」
「ふるさと学習って言うんですよね」
「へぇ、あれってそういう名前なんだな。知らなかったよ。美月ちゃんはよく知ってるな。偉いぞー」
学習内容の呼び名なんて、今まで気にしたこともなかった。
手を繋いでなければ、えらいえらいと頭を撫でてあげるところだ。
ちょっと残念。
「えへへ、褒められちゃいました。それでね、それでね! 美月の班は昔の名産品について調べて――」
美月ちゃんが目を輝かせながら、俺を相手のセカンド発表会を始めようとしたところで、
「はいはい、美月。続きは家に入ってからね? 蒼太くんは逃げないんだから、そんなところで話していないで、家の中でゆっくりお話ししましょ」
いつまで経っても門の外で話している俺と美月ちゃんを見て、玄関前で振り返った優香が呆れたように苦笑した。
「あぅ、そうでした。じゃあ早くお家に入りましょう!」
美月ちゃんが、急かすように俺の手を引っ張って歩き始める。
俺は小さな手に引かれながら、久しぶりに姫宮家にお邪魔したのだった。
その後は優香の家に入って、美月ちゃんの発表会の話を聞かせてもらったり、お菓子を食べたり、みんなで白熱のゲームをしたりと、久しぶりに姫宮姉妹と楽しく過ごしたのだった。




