第131話「ちょ、え!? ご両親に、俺と付き合ってもいいかどうか聞いたのか!?」
「ダメって、なんでですか?」
美月ちゃんが不思議そうに首をかしげた。
「なんでって、だって……」
「おねーちゃん、どうしてダメなんですか?」
「それはその……あれで……」
途端に優香がしどろもどろになった。
おや?
しっかり者の優香が、目に見えて狼狽するなんて珍しいな?
どうしたんだろう?
「おねーちゃん、理由を教えてください」
「えっと、だから……」
「おねーちゃん?」
「だからその……そ、そう! 年が離れすぎてるでしょ?」
どうやら優香も、俺と同じことを問題だと感じているようだった。
言い淀んでいた理由は分からないが、今はそれは置いといてだ。
「だよなぁ。俺が16歳で、美月ちゃんが9歳だから、7歳差だもんな。結構離れてるよな。俺の方がほぼ2倍くらい生きてるし」
正確には1.77倍くらいか?
なんにせよ、かなりすごい差だよな。
しかし美月ちゃんは自信満々に言ったのだ、
「それなら大丈夫です。美月、ママとパパに聞きましたから」
――と。
「ぶふぅっ!? ちょ、え!? ご両親に、俺と付き合ってもいいかどうか聞いたのか!?」
なにそれ怖い!
超怖い!
お父さんがガチお怒りになって、
『紺野蒼太とか言ったな、このクサレ外道ロリコンが! 貴様のようなクズ・オブ・クズには、娘の代わりにこの怒りの拳をくれてやるわ! 地獄に落ちろ! 天誅!!』
とか言って鉄拳制裁をされちゃいそうなんだけど!?
もうやめて、俺のライフはもうゼロよ!
けれど、どうやらそういうことではないようだった。
「ママとパパは6歳差なんですよ」
「美月ちゃんのご両親が? ああ、そういうことか」
聞いたっていうのは、ご両親の年齢差を聞いたってことな。
ふぅ、やれやれ。
驚かせないでくれよ。
まったくもぅ、美月ちゃんは男を手玉に取るイケナイ子だね。
「はい。そして美月と蒼太おにーちゃんは、7歳差なのでパパとママの差と1歳しか違わないんですよ。そうですよね、おねーちゃん?」
「う……っ!? そ、それはその……」
「だから美月と蒼太おにーちゃんが付き合っても、全然大丈夫なんですよ」
美月ちゃんがえっへんとばかりに、胸を張って言った。
だがそれもうなずけるほどの、なるほど納得の理論だった。
なにより、まだ小さいのに最初から順序だてて話せて偉いよなぁ。
俺が小学校3年生の時、こんな風にしっかりとロジックを組み立てて話せただろうか?
これには俺と優香も異論は言えない――ことは、ないようだった。
「そ、その1歳差が大きい……のよ?」
「えっ、そうなんですか?」
なんとも自信なさげな優香の言葉に、しかし美月ちゃんは大きく目を見開いた。
「そ、そうなのよ。うん、そうなの! その1歳差が、月と地球の間ってくらいに大きく違うんだから」
「そ、そうなんですね! 美月知らなかったです!」
「そ、そ、そうなのよ~」
「月と地球の間は、たしか新幹線で2か月もかかる距離だって、『天体のふしぎ』っていう本に書いてありました! 6歳と7歳はすごく違うんですね!」
「う、うん。そうなの……よ? まったくもう、美月はまだ子供だから分からないんだろうねぇ~。うんうん、そうなの~……」
「すごいです、そんなことまで知っているなんて、さすがおねーちゃんです!」
「そ、そうなのよ~。そうなんだから~。そうなんだもん……」
なんだか自分ともども、無理やり納得させようとしたっぽいように見えてならないような?
そんな感じがするような、しないような優香だった。




