第128話 テスト返却ウィーク
俺なりに確かな努力をした実感のある中間テストと、優香との距離が少し縮まったような気がした突発お泊まり会があった週末も終わり。
テスト明けの月曜日からは、続々と中間テストが返って来る返却ウィークになったのだが。
午前の授業が終わって、テスト結果にクラスメイト達が悲喜こもごもな昼休み。
食堂に行ったり、お弁当を食べ始めたりする彼らを尻目に、健介が俺の席までやって来た。
「化学のテストはどうだったんだ? 俺76点」
健介は4時間目に返って来たばかりのテスト用紙を俺に見せてくる。
中学に入ってからずっと、テストの点を見せあいっこするのが俺と健介の暗黙の了解だ。
「俺は84点だよ」
俺は同じく返って来たばかりのテスト用紙を健介に見せた。
「はぁ!? おいおい蒼太、1時間目の現国からずっと、なんだその高得点はよ!? コミュ英も数2も化学もどれもこれも80点越えとか、お前いつから頭いい系キャラにモデルチェンジしたんだよ!?」
健介が驚きに声を震わせながら言った。
「まじめに勉強したのに、なんで怒られないといけないんだ。むしろ俺の努力を褒めろよ、心から」
それに至極まともなツッコミを入れる俺。
「なるほどそうか分かったぞ。指定校推薦狙いだな?」
しかし健介は俺のツッコミを華麗にスルーした。
「なに勝手な想像で納得してるんだよ」
「あれは3年になってからじゃ遅いもんな。2年の頭からなら、ギリ間に合わなくもない。で、どこ狙いなんだ? おら、言ってみろよ」
「受験なんて、そんな先のことなんて考えてないっての。単にまじめに勉強しただけだよ」
「ふぅん……」
「なんだよ?」
「ま、姫宮さんは成績がいいもんな。同じ大学に行こうと思ったら、そりゃ勉強にも精が出るか」
「なんでここで優香が出てくるんだよ。これっぽっちも関係ないっての」
「姫宮さんと一緒にテスト勉強をしたんだろ? 知ってるぞ」
「……情報源なんて聞かなくても分かるけど、確認のために一応聞いておく。新聞部だな?」
「正解」
「はぁ……本当に何もないんだけどな」
俺は盛大にため息をついた。
ついこの間、突撃インタビューを撃退したばかりだって言うのに、まだ俺と優香の関係を疑っているようだ。
そのうちきっと、
『学園のアイドルに熱愛発覚か!? 一緒にテスト勉強会。お相手は同じクラスのK野S太』
みたいな、あることないこと好き放題書いたゴシップ記事でも出るんだろう。
嘘八百もいいところなのだが、最後に『か!?』と付けるだけで憶測ってことで何の問題もないらしい。
無実の若者をいたぶることを良しとした、大人社会の酷く醜いルールであることよ。
一応、今から心構えはしておこう。
それと健介の口ぶりだと、突発お泊まり会についてはさすがに急過ぎたので、新聞部も情報は持ってないみたいだな。
とりあえずそこだけは良かった。
あれがバレた日には何を書かれるか分かったもんじゃないからな。
「なにも、ねぇ?」
「だいたいそういう健介だって、いい点数を取ってるじゃないか」
意味深に呟く健介に半ば呆れながら、俺は強引に話を変えた。
「まぁそれなりにな」
ちなみに健介のやつは、こう見えてかなり頭がいい。
地頭がいいっていうのかな?
飲み込みが早くて記憶力もいいので、たいして勉強をしていなくてもいい点数を取るので、正直羨ましかったりする。
対外模試になると、学校の成績よりも格段にいい順位になるし。
今回の中間テストも、健介はここまでの全教科、余裕で70点をクリアしていた。
一生懸命頑張って80点台な俺からすると正直、頭の良さを分けて欲しいところだぞ?
健介とそんな話をしていると、
「蒼太くん、化学のテストどうだった?」
優香がとてとてと可愛らしい歩き方で、俺のところまでやってきた。




