第121話 ベッドの上では積極的な優香
次に第2の可能性だが、も、も、もしかして、優香は俺のことが好きだったりするとか?
だってこれってつまり『そういうこと』とも取れるよな?
夜に2人きりなのをチャンスと思って、一気に距離を縮めようとベッドに入って来たって可能性が考えられなくもない。
いわゆる既成事実的なアレだ。
しかしその場合、俺は優香が待っていたにも関わらず、自分からは何もしなかった超絶ヘタレ野郎だってことになってしまうのが悲しいところだ。
あまりに察しが悪すぎるぞ。
とまぁパッと思いついたのはこの2つくらいなんだけど、当たらずとも遠からずではないだろうか?
後者についてはひたすら俺に都合のいい展開な気はしないでもないが、俺だってこの状況にテンパってるから仕方ないんだよ!
そんなことを考えている間に、今度は優香の手がするりと俺の腰に回される。
優香の柔らかい手がTシャツの裾から中に入ってきて、俺のおへその辺りに直に触れてくる。
さすさす。
「ふぁん!?」
下腹部に極めて近いところで素肌と素肌がそっと優しく触れ合う感触に、俺は思わず情けない声を上げてしまった。
ゆ、優香ってば普段は控えめなのに、ベッドの上だとものすごく積極的なんだな!?
うん、これはもう2だな。
2しかありえない。
優香は俺のことが好きで、突発お泊まり会を契機に、一気に俺との距離を詰めようとしているんだ――!
そして女の子にここまでさせて、男の俺が何もせずに受け身なままでいいのだろうか?
否! 断じて否!
いいわけなどない!
俺は優香の情熱的な行動に、男としてしっかりと応えようとして――、
「すー、すー……」
そこで初めて、優香がゆっくりとした規則正しい寝息を立てていることに気が付いた。
「……ええっと、優香? もしかして、寝てる?」
俺の問いかけに、
「すー、すー……すー、すー……」
しかし優香は規則正しい寝息を返してくるだけ。
なんだ、寝ぼけていただけか。
なんだ、そうか。
寝ぼけていただけ。
そうか…………はぁ。
ガクッ。
勘違いを残念だと思うと同時に、行動に移す前に気が付いてよかったと思う俺がいた。
これ幸いと寝ぼけている優香に襲い掛かってしまっていたら、優香は2度と口を聞いてくれなかっただろう。
さてと。
優香が寝ぼけていただけなのは分かったとして、この状況をどうしたものかな?
というかですね?
ベッドで優香に密着されていると、俺もどうしても身体の一部が悶々としてしまうわけでですね?
お年頃の男子高校生なら、避けては通れない自然の摂理が発生してしまうわけでしてね?
この天国のような地獄に、俺はいつまで耐えればいいんだぁぁぁぁぁ!(蒼太、心の叫び)
しかし少しすると、優香の手は俺の身体から離れていった。
多分だけど、暑かったんだと思う。
俺は優香を起こさないようにそっとベッドから抜け出ると、優香と入れ替わるようにして、床に敷いてある布団に入った。
つまり優香が俺のベッドで。
俺が優香が寝ていた布団へと、入れ替わる。
「なんかガックリ来たら急に眠くなってきたよ……寝よ寝よ」
俺は掛布団を首元まで引き上げた。
優香の匂いがしたけれど、無駄に精神的に疲弊したからか、さっきまでとは打って変わって今度はすぐに眠気が襲ってきて、俺の意識は一瞬でブラックアウトした――




