冬の夏祭り
ラジオ大賞投稿作品です。
思い付きで勢いで書きました。
「オーストラリアで真夏のサンタに抗議活動だってよ」
横でそんなことを達也が言っている。
「何だそれ」
「何でも筋肉マッチョなのが、老人であるサンタへのヘイトだとさ。それにフィットネス業界がシニア選手への侮辱だと反対に抗議してるらしい」
「はぁ、どこも変な騒動があるんだな」
そうため息を吐くも、うちの町も他人事じゃない。
はじめは「夏祭りを夏しかしないのはおかしい」という頭ダイジョブかって発言をした奴が湧いたことだった。
何故か、それに同調した奴らが集まって、よりにもよって俺達の町で「冬の夏祭り」なんてのを開催しようと目論見やがったんだが、今度は「夏祭りを冬になんて冬をバカにしてる」という正論なんだか、良くわからん連中が抗議し初めて、そしたら、「そもそも祭りに春夏秋冬の区別をつけるからいけない」なんてのまで湧きだした。
気がつけば町内でそれぞれの勢力が夏祭りやら、冬祭りやら、なんか良くわからん祭りやら、そもそも祭りをやるなって抗議やらをおっ始めて。
「なぁ、なんで、こんな年に町内会長なんてなっちまったんだろうな」
「諦めろ、取り敢えず、あちこちの騒ぎで起きちまった訴訟について整理して貰ってるから、町議会のほうと調整頼むぞ」
また、ため息が出る。
「良いじゃねーかよ、冬なんだから冬祭りでよー」
「何だかんだで村起こしにはなってるから、頑張っ! 」
「俺の犠牲はーっ! 」
「惜しい奴を亡くしたが、丁重に弔ってやるよ。そしたら、またひとつ祭りが出来るな」
「不謹慎過ぎんだろー。訴えてやるっ! 」
目の下のくまを見つめあいながら、俺達は盛大にため息を吐いた。
「もう、祭りなんていらねーっ! 」
結局、町の寺社仏閣は勝手騒いで暴れる配信者や活動家に荒らされることを避けるために、「祭り」期間中は貼り紙とともに門を封鎖したが、結局は暴風のような騒動は町中を荒らして、ある日突然となくなった。
全国からそれなりの人手はあったものの、ろくに金が落ちるでもなし、被害ばかりが嵩むは、それに付随した訴訟で大混乱した。
それも過ぎて落ち着いて来た頃、初詣騒動が起きるとは、この時はまだ知らなかった。
感想お待ちしてますщ(゜д゜щ)