7. 2日目 規則
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「まず貴族院では身分の差は考慮されない。ここは国内で生活する十三歳以上の貴族であれば、誰でも通うことが出来る場だ。そのため、全てのクラスは身分ごとに区別されたものでは無い。また、この院には独自の規則がある。この規則を破った者は、たとえ公爵家であろうと厳しく罰せられることを覚えておけ」
「実際に罰を受けた生徒はいるのですか?」
「あぁ、私の受け持ちではなかったが、去年も処罰対象となった者がいたぞ。いいか?くれぐれも規則を破ることなどしないように」
クラウス先生の言葉に半信半疑の生徒が多いようだが、本当のことだろう。名前までは憶えていないが、侯爵家あたりの生徒が自宅謹慎を言い渡されたとの噂を耳にしたことがある。
「規則の内容だが、―――生徒間に身分差は生じないものとする。生徒は皆平等の立場にある。他者を陥れる行為をしてはならない。院内での権力支配を禁止する、とこの四つが主なものだ。あとの細かいものは全て四つの規則から派生したものだ」
(なるほど。最後の規則が貴族にとっては最も嫌な規則だろうな)
貴族という生き物は、他者を権力でねじ伏せることに快感を覚える。そんな彼らに、餌を前にして喰らいつくなというのは貴族院もなかなか考えたものだ。
「それでは次に自己紹介の時間を設ける。ちなみにここでは生徒より教師の立場が強いことから、爵位に関係なく呼び捨てさせてもらう。それではライリー・エルヴィス。君から自己紹介を始めてくれたまえ」
「ライリー・エルヴィスだ。これから一年、同じクラスの生徒としてよろしくお願いしたい。私からは以上だ」
「では、次に……」
次々と行われる自己紹介という言葉の羅列に思考を割くことなく、私はこれからの行動に関する計画を考え始めた。