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側室出身王女と正室出身王女の世界転覆  作者: 空色 蒼
序章 王位継承戦の始まり
4/43

4. 1日目 覚悟

まさか一週間と経たずに評価が頂けるとは、嬉しい限りです。

明日からは、かなりゆっくりしたペースでの更新となります。何卒ご了承ください。


ブックマーク、評価をして下さり、ありがとうございます!

□■□



 赤いマントを翻しながら、ゆっくりと。しかしどこか力強く一歩一歩玉座に向かって歩く父上。

 後ろには近衛騎士団を率いる団長と副団長が兜を脇に抱えて、こちらも白いマントを翻しながら歩いてくる。そうして、父上が数段の階段を上り、玉座に座ったのを確認すると二人は玉座の左右に分かれてこちらを見据えてくる。


 場が整ったのを感じ取ったのか、父上が口を開く。


 「よく集まった」


 ザッ!

 王の言葉、いや声というものの圧力がここまでのものだったかと改めて認識してしまった。


 (たったの一言で、皆が姿勢を正してしまったぞ)


 「明日からはライリーが十三の年となり、貴族院に通うことになる。これで、ようやく皆が同じ立場となったわけだ。よって我は此処に宣言する」


 大げさに私の方へと手を翳す父上に、私は目を見開いて今日の謁見に何故全員が集合させられたのかを悟ってしまった。


 (やめろ、やめてくれ。貴方は本当に―――)


 「この場にいる六名を正式な王位継承候補とする!」


 (自身の子の死を望むつもりか…父上)


 今までは、私が無事十三まで生きていられる保証が無かった。だから、周囲の者達は分かっていても私達を表立っては王候補としては扱わなかった。あくまでも王族の一員という認識のもと私達に関わってきた。


 だが、その関係も今日で終わる。王からの宣言によって、私達は本格的に王位を継ぐ者として扱われる。

 それが、どんな地獄を招くかお分かりのはずなのに!


 「さて、次代の王候補どもよ。貴様らの覚悟を聞こう」


 覚悟。

 その言葉の意味に、誰も勘違いはしない。王の問う覚悟とは『死ぬ覚悟』のことだ。

 エルヴィス王国の王位継承争いで死人が出ない―――などという奇跡は一度として起こっていない。必ず王位継承者の誰かが死んでいる。その理由はまたしても、この国の悪しき実力主義にある。強者は生き、弱者は死ぬ。それだけだ。


 「マクシミリアン」


 「はっ!このマクシミリアン、覚悟ならとうに出来ております。必ず、このエルヴィス王国の名を世界中に轟かせてみせるとお約束致します」


 玉座の前に跪く兄上の姿を見て、私は嫌気がさす。


 「エレノア」


 「はい、陛下。わたくしも覚悟ならとうの昔に。兄様よりも素晴らしい国にすることをお約束致しますわ」


 隣で跪く兄上に牽制するように父上への誓いを立てる姉上。


 「ライリー」


 (こうなる事は想像していたさ…けれど、父上。私はやはり、貴方が我が子に向ける良心をまだ持っていると信じたかった。信じていたかった)


 「…はっ!」


 名を呼ばれ、ルーナを部屋の隅で待機させたまま私だけが王の許へと足を進める。


 もう()()()()()()()()は終わりだ。これからは―――再び私の自由を取り戻すための仮初の時間を満喫するとしようか。


 「えぇ、覚悟なら。この瞬間から持ちましょう。幸いにも私は六名の中で最大の魔力量を秘めております。なら私こそが王となるに相応しいでしょう。それこそ、今すぐこの場で全員殺しましょうか?今からでもこの国を統べてみせます」


 「「「「「……っっつ」」」」」


 遠回しなんてものじゃない。直接的すぎる牽制に兄上と姉上達は五者五様の表情をうかべる。


 「なるほどな。楽しみにしておこう」


 人間の情なんてこの御方にはもう残っていないのかもしれないな。少しの反応も見せないとは…。


 「ありがたき幸せ」


 私はそのままエレノア姉上の隣に跪く。


 「アダルウォルフ」


 「はっ!このアダルウォルフ。自身の生を授かった時より覚悟は持ち合わせております。自身の名に恥じぬ王国を作り上げてみせると誓いましょう」


 流石は兄上。先程の動揺が嘘のように堂々としていらっしゃる。


 「アナスタシア」


 「はい、陛下。もちろん覚悟なら以前から持ち合わせております。歴代の女王達に見劣らぬ統治者となりましょう」


 アナスタシア姉上もアダルウォルフ兄上の隣に跪く。


 「アリア」


 「……はい、国王陛下。覚悟ならあります。私はこの国を平和な国にしてみせます」


 平和…という言葉に私以外の全ての者が反応する。それらは些細なモノではあったが、王の隣に控える団長と副団長には見えていたことだろう。


 (貴女は王女らしくて…王女らしくはないですね。アリア姉上)


 全員が横並びで王に頭を垂れる。

 

 「貴様らの健闘を祈る」


 王はその言葉を残し、謁見の間から去っていった。



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