34. 6日目 仲良し
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「これからこの森で狩りを行うが、その前にライリー・エルヴィス、他の生徒達に何故あの魔法を選んだかの理由を説明してくれ」
「まず第一に、水魔法は黒炎熊と相性が良いから。第二に、体中から炎を発生させるための…人間でいうところの汗腺を塞いでおきたかったから。そして第三に溺れさせれば容易に戦闘不能に持ち込めるから。以上です。魔石の破壊も考えましたが、位置の判断がつかなかったため今回はこの方法を取りました」
「一年生でそこまで考えられたなら十分…というより十二分によろしい。さて、想定よりも遥か斜め上の解答をたたき出してくれた生徒が居る訳だが、今日の授業の目的は君らの知識量を測るためであり、魔力量の測定ではない。さきほどの彼女の行動に踊らされることなく、自分の出来る範囲でテストに望むように」
クラウスの言葉に少し安堵した表情を浮かべる生徒達に少しだけ申し訳ない気持ちがあるが、だがテストに全力で挑むのは学生であれば当然の事なのだから許してほしいという気持ちも無きにしも非ずだ。
そんな私の気持ちなど知りもしないクラウスは生徒一人ずつに記録魔石を配る。なるほど流石にこの人数を見るのは大変だしな。
「モンスターとの戦闘の様子をこの魔石に記録するように。そして王国から出て、すぐの森とはいえ危険は高い。そのため三人一組で行動しなさい。お互いがお互いの戦闘を記録すればいいだろう。誰と組むかは自由だ。狩りが終わった生徒からこの場所に戻ること。何かあれば魔法を一発空に向けて発動すれば、私が駆けつけよう。以上だ。では…テストを開始しなさい」
クラウスは近くの切り株に座り込み、あとは生徒達に任せるというスタンスを取るようだ。こちらとしても、全ての事に指示を出されるより、ある程度の自由が認められている方が楽だから有難い。
……のだが、これはこれで。
「ライリー様!私と組んでいただけませんか?」
「いいや、ライリー様。この僕と!!!」
「いいえ、ぜひ私と!」
「「「お願いします!ライリー様!!!」」」
―――仲良いな、君ら。
「悪いが、私は一人で行動するつもりだ。君らで組むと良い。それにこの狩りは危険が伴うものだ。グループのバランスを考えるべきだと思うが?もし人数の関係で組めない生徒がいたら考えるが君らとは組まない方がいいだろう」
「いや、しかしですね…爵位を考える必要もあるかと。貴女様は王族なのですから」
「―――そうか。なら、私はあそこにいる生徒二人と組むことにしよう。こんにちは、ステラ嬢にハリソン殿。お二人はまだグループが決まっていないように見えるが、良かったらこの私と組んではもらえないか?」
「ラ、ライリー様!?そ、そそそな、そんな、私ではなくてもっと爵位の高い方々と組まれたほうが…私はその男爵家の娘ですので。あ、えっと、その不釣り合いかと存じます」
「同じくです!私では貴女様の足を引っ張るだけで……」
「足を引っ張るも何もこれは個々の試験なのだが?今回、三人一組をつくるのは安全性の確保と試験の進行をスムーズに行うためだ。それらを加味した上で考えて、私は君達を誘ったまで。爵位など気にする必要はどこにもない。もちろん、君らからすれば私という人物は厄介この上ないのだろうが、モンスターが潜むこの森において、私以上の安心材料となれる人材はいないと思うのだがどうだろうか?」
…というのは建前で、あまり爵位が上のご令嬢やご子息と組むと後々派閥勧誘の嵐に巻き込まれそうだからで。それにいい加減試験を開始させてくれというのが本音だ。
これだから貴族は面倒で困る。家の地位が院生活の良しあしに直結するなど馬鹿馬鹿しい。
「それは、その確かに、そうですね。先程のお手並みを拝見しましたので」
「安全第一ではありますが…」
「以前にも伝えたが院内での私は生徒であり、王族ではない。立場を気にしているようなら…気にしないでくれとしか言えないな。何か問題が起こったとしてもその責任を問うことはないと誓おう。何かあればクラウス先生が証人となるはずだ。どうだ?」
「「そこまで言われると…言外に断るなと言っておりますよ」」
おっおう。まぁその発言は否定しないが…何だ?急に仲良しだな、二人とも。




