26. 5日目 レイラSide② 家出
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「ドコだ…?」
アイツの家からはもう十分距離を取ったけど、ガムシャラに走ってたからよく分かんない場所に来ちゃった…。
「さっきの所よりもフンイキが暗いし、なんかキライな臭いもする」
建物が高いせいで、太陽の光が道を照らしていないみたいだ。それに周りのニンゲン達の表情も暗い感じでここに居たくないな…。けどさっきの場所に行こうにも道がわかんないし。
―――ジャラッ。
ピクッとボクの耳が聞き覚えのある音に反応した。ついこの前までよく聞いていた音な気がするけど、どこで耳にしたんだろう?アッチの方からしたよね。
「んっ。音が近くなってる」
ここから早く立ち去りたいけど、音の正体が気になるし…。ボクは入り組んだ路地の中に踏み入って、音の発生源へと向かう。人通りもほとんどないけど、何かあればすぐ逃げれるようにしておけば問題ないよね。ニンゲンとは違ってボクにはこの脚があるんだから、とっとと逃げ出しちゃえばいんだ。
「―――はどうですか?」
「―――や、こっ――は?」
ダレかいるな…。こんな人気の少ない場所で何の話をしているんだ?
うっ…。少し怖く―――いや!ボクは誇り高き白狼族なんだぞ、別にたかがニンゲンの一人や二人怖くなんかっ――――――。
「―――こちらの奴隷なんてどうです?この女にはある程度の性技を仕込んでありますので、夜の営みも十分に楽しめるかと…」
「ふぅむ。悪くはないがもう少し見目の良いモノは売っていないのか?それと私は胸の大きいほうが好みなんだがね」
「そうしますと―――」
あっ…。
そっか、どこかで聞いた音だと思ったら鎖の音だ。ボクの首輪にも付けられていたあのイヤに重量感のある鎖。奴隷用の商品として売りに出される時に逃げ出さないようにと、男達が下卑た目でボクを見つめていたのを覚えてる。
思わず一歩下がって路地の壁に背中をつける。男達は会話に夢中でボクのことには気がついていないみたいだけど、首に鎖をつながれた商品のうちの一人と目が合った気がする。たまらず顔を引っ込めたけど、そっとバレないようにもう一度さっきの人を見てみる。
(やっぱり気付いてる…)
また視線が交わった。何となく笑っているように見えるけど、よく自分が売られるかもしれないっていうジョーキョーであんな顔ができるな…ニンゲンは頭がおかしい生き物だ。……そんな事を考えてたら、男達が何か商品達に向かって二言、三言言った後にどこかに行ってしまった。
その様子をじっと見てたら、さっきからボクを見ていたオンナが手招きする。あの男達が暫く戻ってこないのかな?……ボクに急ぎの予定なんてないし、あの人が危害を加えてくる様子もなさそうだから、彼女達の前に姿を現すことにした。
「あらあら、奴隷に興味があるのかと思えば随分可愛いお嬢さんね」
「何だ、コイツ?お前知っている奴か?」
「いいえ。ただ、ずっとこちらを窺っているみたいだったから呼んでみたのよ」
「ふあ~あ。どうでもいいけど、客が帰ってくる前に消えてよね」
以前のボクみたいに汚い布切れのみを纏った三人のオンナ達は同じ鎖に繋げられているみたいで、あまり身動きがとれないみたいだ。けど、それに慣れているのか不自由な様子は見せず器用にボクを取り囲んで頭の上から声を掛けてくる。
「それでお嬢さん?どうしてこんな所に居るのかしら?」
「ふっ、お前も奴隷を買いたいってか?」
なっ!そんな風に思われてるのか!?
「ちっ、違う!ボクはお前達を買いたいだなんて考えてない!!!」
「じゃあ何でここにいるのさ?ここは人身売買の取引場としてよく使われてる場所なんだけど?」
うっ……そんなの知らないよ。たまたま辿り着いただけだし、ボクはアイツから遠ざかれればそれで良いんだ。
「こ、ここに来たのはグウゼンだ。そんな事より、何でお前等は抵抗しないんだ?このままじゃ、さっきのヤツに奴隷として買われちゃうんじゃないのか!?そしたら、もう自由がなくなっちゃうんだぞ?」
ボクが早口でまくし立てる様にそう言うと、オンナ達は顔を見合わせて笑い出した。
「なんだよ!何かヘンな事言ったか?ホントなんだぞ!一度奴隷になったら最後、お前らの自由はその所有者のモノになるんだ!」
ケーケンシャが言ってるんだ。ちゃんと聞いてないと後悔するぞ。
「アハハッ。あ~お腹痛い!」
「ふふっ。子供の口からそんな事を言われるなんて…」
「何を今更って感じ~!いい?君が何を考えてそれを言ったのかは解らないけど、そんなのコッチからしたら当たり前の事実なの。それでも私達は早く買ってもらいたいから今日だって店の主人に頼んでこうして取引場に連れてきてもらったんだから」
「……え?な、なんでさ!?意味がわかんない!だって奴隷だぞ!自由がないんだぞ。買ったヤツによっては酷い暴力を受けるかもしれな―――」
「―――うるさいな、何も知らないガキが。よく聞け。この国じゃあ、そもそも人身売買自体が少し疎まれているんだよ。だから奴隷に寛容な他の国とは違って、ここでは世間の目を気にする貴族達がいっぱいいる。つまりだ、この国では酷い扱いを受けることが少ないんだ。たとえ性行為目的で買われたとしても、商店での暮らしに比べたら天国だろうな。それに奴隷の中で地位を上げれば更に良い暮らしをさせてもらえる可能性も十分にある。解ったか?うちらは無理やり奴隷にされるんじゃなくて、自らの意志で奴隷になりたいんだ。下級奴隷の中でも魔力のないうちらは貴族様にとっては買いやすくて重宝されるしな」
―――意味が解らなかった。このオンナが言っている事がボクには理解できない考え方で。
だって…奴隷になったらもう家族にも会えないし、好きな服も着れない。外に出してもらえないかもしれないし、それこそ身体目当てのヤツに買われでもしたら。
「ふふ、この子には少し早かったんじゃない?可愛いお嬢さん、大丈夫?そんなに吃驚な内容だったかしら?お姉さんが慰めてあげようか?」
「まぁ、もしうちらを買いたくなったらまたここに来るんだな。今の話を聞いてうちらが可哀そうって思うんなら頑張って金を貯めてこいよ。その様子じゃ無理だろうけどね」
オンナ達が笑う。ボクの言っている事が間違っているとでも示すように嘲笑う。
おかしいだろ。ボクはホントの事を言ってるんだぞ。だってアイツがボクにそうしてるんだ!アイツがボクの身体をアヤツリ人形みたいに命令で動く身体にして…言葉遣いにさえ制限を掛けられて…その上魔力だって……。
「ねぇ、そろそろ客が戻ってきちゃうから帰ってくれない?ほら―――」
オンナの一人がボクの背中を押す。その勢いに逆らえず、ボクは一歩前へと足を出すと、何だか急にここに居たくない気持ちが強くなって、後ろから発せられた言葉に振り向くことなく駆け出した。行き先なんて決めてない。
けど、とにかくここから立ち去りたくて脚の動く限り、目一杯走った。
もうちょっと心情や描写が上手く書けるようになりたいですね…
言い回しとか勉強しないと(;^ω^)




