2. 1日目 謁見準備
まさか一日経たずにブックマークをしていただけるなんて!
ありがとうございます。楽しんでいただければ幸いです。
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「あぁ、やはり。ライリー様はご自分の魅力に気付くべきです!ドレスを着ることでさらに美しさが際立っております。この王宮で働いてからというもの、ライリー様の専属侍女に選ばれたことに不安が無かったと言えば嘘になりますが、今は本当に貴女様の傍に居られることが出来て嬉しく思います」
王族の中でも珍しい黒髪の私と同じ色の漆黒のドレスを、他の侍女たちと協力して私に着させたルーナは手を口許にもっていき、感極まった表情を見せる。
さすがに黒一色では縁起が悪いということで、他の装飾品で色を付け足してはいるが悪くはない。
まぁ、元々私は他の令嬢達が好むような白や黄色などの明るい色は着たくはないため、黒は嫌いではない。
(だがなぁ、これでは姉上達にまた何か言われそうだ)
「今日の謁見には誰が来るんだ?」
私は近くにあった椅子に座り、午後の謁見で顔を合わせる人達が誰なのかをルーナに訊ねた。来る人達によっては、謁見に訪れる順番を考慮しなければならないからだ。
「はい。本日の謁見には第一王子のマクシミリアン様、第二王子のアダルウォルフ様。第一王女のアリア様、第二王女のエレノア様、そして第三王女のアナスタシア様の王位継承権をお持ちの全員が来られる予定です」
「はぁ、よりにもよって全員とは…。父上は兄弟喧嘩でもご覧になりたいのか?」
私は側室出身なのに加えて、第四王女である身。つまり王位継承権は最も低い地位なのだが…。それは他国での話だ。ここ―――エルヴィス王国では表向きの意味しか持たない。
この国は、古くから貴族制度を導入していたために見栄という下らないものに固執したがる傾向がある。先祖たちは他国に侮られないように、国を統べる王を魔力量で決めていた。もちろん、それだけではないが、そこに重点を置いていたのは確かだ。しかし、その基準によって選ばれた王の一人が愚王だった。本によれば危うく王国が崩壊する程だったそうだ。
そのため、新たな基準が設けられた。それは魔力主義に加えた実力主義という―――まぁ、単純なことだ。国を統べる者は完璧でなくてはならない。馬鹿はいらないということだ。その愚王以降の王達は、頭脳明晰かつ魔法の腕が素晴らしい文武両道を体現する方達だ。だが、その名君を輩出するためには数が必要になる。つまり、エルヴィス王国では、王位継承権を持つ人数が多いということだ。成功作を創るためには、それ相応の数の失敗作が積まれる。それがエルヴィス王国の王族達の考えだ。
(それでも以前は十人以上での王位継承争いが常だったことを考えればマシな方ではあるのか)
「何か兄上や姉上たちの側仕えから連絡は来ていないのか?謁見時間を遅らせろなどの要望は?」
「はい。マクシミリアン王子とエレノア王女の側仕えからそれぞれ来ております」
「内容は?」
自分を最も毛嫌いしている二人からの要望だ。応えないわけにはいかない。
「お二方とも同じ内容です。『先に謁見の間で頭を下げて、待機していろ』とのことです」
「なるほど。それ位のことならお安い御用だな。ちなみに謁見の順番は王位継承権順か?」
「……いいえ。陛下からは、マクシミリアン様、エレノア様、そしてライリー様の順で謁見せよとの御命令でございます。後の方々はアダルウォルフ様、アナスタシア様、アリア様の順番でなされる予定です」
私はそれを聞いて思わず顔を顰めて、机に肘をつき頭を抱える。
何度でも言うが、私は側室出身王女だ。それに加えて、母が側室に選ばれたのは最後だったために側室内での地位も最底辺。
だと言うのに!それなのに―――なぜ同じ側室出身でも天と地ほどの差があるアダルウォルフ兄上とアナスタシア姉上が後なんだ!
そして問題はアリア姉上だ!彼女は!唯一の!正室出身の王女だぞ!継承権第一位の方だぞ!
「もう無理。胃が痛い……」