16. 3日目 商人ライルの誤解
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「まったく…ルーナがいないから大丈夫だと思ったのに…まさかクラウス達に止められるとはなぁ」
今日は楽しみにしていたオークションの日だ。一応クラウス達にはバレないように行こうと考えていたが、前日にそのクラウスから―――
「―――ライリー・エルヴィス。君は重々自分の立場を考慮するように」
と、遠まわしな制止の言葉を掛けられたのだ。だが、しかし―――それで諦めるようならルーナに嫌味を言われたりしないさ。私は私の思うままに行動する。いくら教師といえど、その言葉を鵜呑みにして従う必要はどこにもない!!!
「というわけで…幻影魔法―――道化師の戯れ」
闇魔法の系統魔法の中でも特に使い勝手のいい魔法だ。時々これで市民に変装して市街地を堂々と歩き回ったりもするんだ。市民の者達が知らずに話しかけてくれるものだから、この姿での知り合いも多い。
「商人のライル。準備完了だ!」
さてと、そろそろオークションに向かうとしよう。貴族でもないのに馬車を使う訳にもいかないし、オークション会場は裏街にあるという。あそこは小道で入り組んでいて、徒歩の方が行きやすい。
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「ほーぉ、これが会場か。てっきりもっと小さいものかと思っていたが、これならそこそこの人数が入れそうだ」
「入場する方はこちらからお願いしまーす!」
入口はあっちか。帽子を少し上げて向こうの方をみると続々とオークション参加客が中へと入っていく。あまり遅くに行くとクラウス達と鉢合わせするかもしれないし、もう会場入りをしておこう。
「オークションの参加希望なんだがいいかね?」
「はいはい。では入場料に一万エルいただきますよ」
「あぁ、これでお願いするよ」
「はい…丁度ですね。席は自由なのでどうぞお座りになってお待ちください」
「ありがとう。そうさせてもらうよ」
中に入るとすでに席の大半が埋まっており、前の方はもう空いていないな。……あそこに座っているのはクラウス達か。どうやら遅かったのは私のようだな。念のため、後ろの方にいるとするか。
それにしても、一人で参加しているものは少ないようだな。少人数のグループで一まとまりになってブツブツと話し合っている。時々周囲を警戒する様子を見せるが、どの商品を競り落とすかの作戦会議でもしているのか?
「んっ?」
会場内の照明が一斉に消える。そして、一筋の光がステージの中央に当てられ、そこにはモノクルをかけた小太りの男が両腕を広げ立っていた。
(あれが狩人組合の責任者か…?)
「皆様、本日は我々狩人組合が主催するオークションへの参加をして頂きありがとうございます。これよりオークションを始めさせて頂きます。皆さま、奮ってご参加ください!!!それでは、まず初めに…………」
「五万六千!」「五万七千!」「七万!」
カンカーン。
「26番のお客様、落札!!!お次の商品は≪光≫輝爪鳥でございます!」
(おっ!クラウス達が狙っている商品か…)
オークションは順調に進行され、商品も三分の一程度競りが終了した。
「七万八千だ!」
(おやおや、気合の入りようが違うじゃないか。それだけこの商品が欲しいんだな)
クラウスが大声になる場面などそうそう無いだろうからな、じっくり見させてもらおう。
「七万八千が出ました!他に名乗る出る方はいらっしゃいますか?……それでは13番のお客様、落札!!!」
ほぉ、競り相手がいなかったか。運が良いな。
「お次は皆さまがよくご存じの≪闇≫黒鳥でございます!」
(ようやく、来たか)
え~と、この番号札を掲げながら金額を言えば良いんだよな?これまでの最低額が四万エル程度だったから、少し上げて五万五千くらいにするか。
「五万五千だ!」
「ごっ…!?ご、五万五千が出ました!他にはいらっしゃいますか?」
うん?何故彼は言葉を詰まらせたんだ?というより、何故周囲の者は信じられないとばかりに驚いた表情を私に見せる。おい、クラウス。君もか…。何故だ?別におかしな金額ではないだろう?
「……まじかアイツ、黒鳥ごときに五万も出しやがったぞ…」
「いや、見たところ商人みたいだし、雇い主があの金額提示を指示したんじゃないか…?」
「おいおい、どんだけ無知なヤツなんだよ…」
うん、聞こえているからな貴様ら。……なるほど、黒鳥に対して出す金額じゃなかったのか。クラウス達から買いたい者はいると聞いていたんだがな、思っていたより相場が低かったみたいだ。
「それでは109番のお客様、落札!」
おっ、落とせたようだな。まぁかなり高く言ってしまったから相手の競争意欲を削いでしまったかな?
それから暫くオークションは続き、いよいよ商品が残り五つになった時だった。
ソレが現れたのは…。




