15. 2日目 一人
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「貴族院一日目にして自分専用の研究室を手に入れられたのは運が良かったな。これで王宮で過ごす間に積もらせていた鬱憤を研究で消化できるというものだ」
まったく…王宮では休まる場所なんて自室しかなかったからな。兄上や宰相達からの視線が鬱陶しくてたまらなかったんだ。ルーナはルーナでうるさいし……。
(アリア姉上の姿を拝める回数が減るのは少し悲しいがな…)
午後の授業を受け終えて、急いで令嬢達に捕まらないようここに来たがなかなか静かな空間でもうすでに気に入っている。それに旧棟の実験室は全て私のものだから、改造し放題だ。
「うーん…取り敢えずこの階の部屋は全て壁を取っ払って一部屋にしてしまうか?どうせ上の階にも部屋はあるんだ。ここは大きなモノを入れるための部屋にしてしまおう!」
部屋の改築など初めての体験で少し浮かれてしまうな。魔法の制御をしくじらないように注意しよう。
「闇魔法―――盗人の腕」
背後から黒く大きな腕が、宙に浮く渦の中から出現し壁を壊すとその掌に残骸を吸収してしまう。いつ見ても魔法というものは恐ろしいな。これほどの質量を一体どこに隠してしまうんだ…。
貴族ならば生まれながらにして得られる魔力…。そしてごく少数の確率で生まれる魔力持ちの平民達。私達は何故魔力が持てるのか―――未だにその研究は進んでいない。
(……と言うよりか、研究を進められないという表現の方が正しいか)
魔法省の連中は貴族の始祖たる者が神から授かったのだ!その事を疑うような研究は認められない!とエルヴィス王国だけでなく、他国での研究も邪魔しているらしい。だが、どの道今から始める研究も彼らにとっては罪にあたる部分だろうし、その研究も追々やっていこう。クラスに局長の次男がいるからバレるのも時間の問題ではあるが…。
(まぁ、今はそんな事を気にしている時間はない)
「さて、アリア姉上の魔力量でも多種多様な魔法が使えるよう魔力回路の研究に取り掛かるか!成功すれば貴族内での魔力量による差別もなくなるだろうし、パワーバランスなぞいとも簡単に崩れるだろうな!!!あ~あ楽しみだ!魔法局の連中が『神への冒涜だ!』などと騒ぐだろうが、これで貴族院が潰れればこの馬鹿げた魔力主義に終止符を打てるかもしれん!!!生徒達の学び舎を奪ってしまうことにはなるが、あんな主義を体現している場所など無くした方が良いに決まっている」
(王族の権限を乱用して留学先を斡旋させれば済む話だしな)
さてと、かなり広くなった研究部屋の床に自室から持ってきた研究概案の紙を広げる。かなりの案を考えてきたんだ。一つぐらいは実を結ぶものになって欲しい。
「どれから始めよう?やはり姉上の得意魔法の研究から手をつけるか…?いや、それだと今の姉上の魔力量を正確に測定しに行く必要がある。……継承戦が始まった今、他の候補者と接触するのは兄上達に要らぬ警戒をさせてしまうし…、何より姉上が身の危険を感じて測定させてくれない可能性が大いにある。………う~ん、…仕方ないここはまず基礎属性の魔力回路を解析することから始めるとするか」
実験室に設置してある設備の中で、ランタンのような道具が置かれているのでまずそれを五つ用意する。基礎属性は―――風、水、火、闇、光の五つだ。魔法の種類は派生系が多いため流石の私でも全ての魔法を扱えるわけではない。取り敢えずそれぞれの蓋を開け、詠唱を唱えて中に魔法を保存する。
「風魔法―――そよ風の灯。水魔法―――清流の渦。火魔法―――焔。闇魔法―――黒炎。光魔法―――聖球」
よしよし上手くいったな。蓋をしめて…あとはこれらの耐久時間の測定とその差を生み出す魔力回路の違いを分析して、他の属性に組み込めないかやってみるとしよう!
「それにしても…やはり私の部屋にもプレートは提げておいた方が良いのか?クラウスの所には自身の専門学を名前に入れていたな。……ならば『魔法技術学実験室』とでもするか!」
略して魔技学…悪くはあるまい。早速作成に取り掛かるとしようか。こういうのはルーナが代わりに手掛けて一人ではやらせてもらえないからな、デザインは凝ったものにしてみたい。
「あ~一人は気楽でいいな!」
フンフフン♪っと―――。




