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レスキューレンジャー  作者: 黄昏のあっぷる
1/1

家族の秘密

初めに、こんにちはこんばんわ、初めての方は初めまして。

本日から、レスキューレンジャー復活です。

と言っても、趣味でこの小説を書いているので、気まぐれでこれからは投稿になります。

過去に書いていた物とは内容は変わりませんが、書き方等を大幅に変えました。

これから、どうぞよろしくお願い致します。


さて、レスキューレンジャー第1話です。

レスレンの世界は現実的では無く、魔獣や魔法等がある世界なので、苦手な方はここで戻ってください。

それでも大丈夫な方は、少々長めですが最後まで見ていってください。


『レンジャーさん』


『レンジャーさん!』


その声に周りを見渡すと、沢山の色んな人の顔があった。


『助けて……!』


その声に助けなきゃ、早く、早くっと焦り始める身体がビクッと痙攣した。


「っ……! ゆ、夢か……。」


起き上がり、頭を抱える。


『レスキューレンジャーと言う使命を捨て、もう5年になるのに。』


【レスキューレンジャー】略してレスレン。


大まかに、人や魔獣、世界の安全を守る大規模な組織。

与えられたミッションやクエストをこなす為、命を懸けて働く職業でもある。


だが、中にはミッション途中で救助者やレスレン仲間が死ぬ事も少なくない。

それが原因で精神的に追い詰められ、レスレンを辞める人も多い。


そんなレスレンの本拠地はバトリーア地方と言う場所にある、バトリーアレンジャーユニオンだ。

ユニオンにはオペレーションがあり、そこにいるオペレーターから依頼を貰ってその依頼を解決するのが通常の務めで、難易度が高いミッションがあると【トップレスキューレンジャー】と呼ばれる通常のレスレンより上の組織が動く。


5年前、そのトップレスレンだった記憶が蘇り、嫌な記憶が頭をよぎる。

『はぁ』とため息が出て、頭を抱えていた手を下ろし、窓の外を見た。


「レスレンをするのが、自分の使命なんだろうか。」


そう呟いたその時、ピアノの音が聞こえて来た。

心地よい音につられて、ピアノがある部屋へ移動する。

部屋の前に着き、部屋の扉をそっと開けた。

まだ4つしか年を重ねてないのにピアノを一生懸命弾く小さな影に、つい微笑んでいた。


「あっ! ままっ! 起きたの?」


小さな少年はそう語り掛けた。


「うん。ピアノの邪魔だったかな?」


そう言うと、少年は首を振り、にこっと笑った。


「全然! まま、聴いててね。」


すると、再びピアノを弾く。

そんな少年をそっと抱き寄せ、頭を撫でながらピアノを聴いた。


『この子の為にも、身を隠さないと。』


そう心の中で呟いた。


『何があっても、正体がバレてはいけない。バレてしまえば、沢山の人の目にとまり、下手をすれば殺されてしまうかもしれない。』


そう思い、少年を抱き締めていた。


  ☆


あれから5年が経ち、少年は9歳になった。

少年の名は、空飛そらとび 勇希ゆうき

3人兄妹の長男で、明るく優しく、兄という立場があるせいか我慢強く、そして、何をやらせてみてもすぐ上達するほどずば抜けて賢い子だった。


勇希の母の鈴音りんに、父の淳矢あつやは、そんな勇希をとても可愛がっていた。

鈴音の職業は研究員をしていて、淳矢の職業はケーキ屋を営むパティシエをしている。

勇希の2個下の妹の海未うみに、5つ下の弟の豊河ゆたかは2人ともお兄ちゃんっ子で、何にでも甘えている。

何不自由無く暮らす家族だが、そんな空飛家には【ルール】があった。


1つ、余程のことが無い限り外へ出ない。

2つ、些細な事があっても何かあれば必ず信頼出来る誰かに言う事。

3つ、他人に質問されても苗字は偽名を使う。

4つ、外へ出る場合は必ず録音をする。

5つ、何かが起こったら必ず家の大人に連絡する。

この5つが基本的なルールだった。


誰も文句も言わず、それが当たり前だった。

このルールを守っていた勇希は、家から初めて外に出たのは6歳の時だった。

それでも、指で数えれる程しか外へ出た事無かった。


そのまま9歳の勇希は、兄妹仲良くかくれんぼをしていると、入った事の無い部屋が少し開いているのを見つけた。

どうしても気になり、子供の好奇心に勝てず部屋に入ってしまった。


その部屋は真っ暗でカーテンが閉じており、周りを明るくするため電気をつけた。


カチッ


勇希「ん……。わぁ……!」


思ったより明るくなった部屋を見渡すと、金銀に輝くトロフィーやメダル、王冠やティアラまで壁一面のショーケースに飾られていた。

ふと、ショーケースの中にある写真を見つけ、勇希は背伸びをして見つめた。

小柄で栗色の長い髪に、焦げ茶色の瞳。

少し赤い頬をしていて、優しく微笑んでいる人を見て、そっと口を開く。


勇希「……ママだ。」


そう呟くと、不思議な気持ちを勇希は感じていた。


『何故、ママはこの部屋の事を教えてくれなかったのだろう。』


そう思ったその時、後ろに気配を感じて勇希はハッと振り向く。


「あーあ。勝手に入っちゃダメでしょ?」


声の主は、鈴音の【パートナー魔獣】のパチュリィだった。

パートナー魔獣とは、【人と魔獣が共に歩む事を約束し、互いに印を付け生涯を共にする契約を結んだ関係】だ。

パチュリィは元は白い兎で水と電気の魔法を使う魔獣なのだが、鈴音の研究で細かな魔力の調節と人の血を使って【人型】になる事ができ、鈴音の魔獣達は皆人型で暮らしている。


人型のパチュリィは白い髪に浅葱色あさぎいろの瞳をしていて、見た目は高校生くらいのお姉ちゃんの様な感じだ。

そんなパチュリィに勇希は呆気なく捕まり、肩を落とした勇希は「ごめんなさい」と謝った。


パチュリィ「別に私怒ってないよ。【トロフィー部屋】が気になったんだよね。鈴音には内緒で解説してあげる。」


勇希「えっ、い、いいの?」


パチュリィ「もちろん。賢い勇希なら教えてもちゃんと分かってくれる年頃だと思うし。」


すると、パチュリィは勇希が見ていた写真をショーケースから取った。


パチュリィ「この写真が気になったんでしょ?」


出してくれた写真を見せてもらうと、3体の魔獣と鈴音が写った写真だった。

他のも見ると、鈴音は真っ黒の狼の様な魔獣に自身の頭に乗せられてた王冠を乗せている写真に釘付けになった。


勇希「ねぇパチュリィ。この写真は何してる写真なの?」


パチュリィ「うん? ……そうだね、この魔獣はランパルトだから、ランパルトに聞いてみたらいいんじゃないかな。……あ、もう少しで鈴音が来るからもう出ようか。」


パチュリィは壁の向こうを見つめていた。

まるで、この家の何処に誰がいるか全て把握しているかのようだった。

パチュリィに連れられて勇希は部屋を出て行き、勇希の部屋へ移動した。


勇希の部屋の椅子に腰掛け、勇希は考えていた。

トロフィー部屋にあった机の上に【タブレットの様な物】が着いた装置が2つ置いてあったのが勇希は引っかかっていた。


勇希「……見た事あるような気もするけど、何かが違うし……。」


目を閉じ、深く考え込んでいると後ろから声を掛けられた。


パチュリィ「【スリンダー】の話をしてるの?」


パチュリィがいた事を忘れ独り言を呟いていた勇希は、ガタッと肩を震わせるほど驚いていた。


パチュリィ「えぇ……ずっといたじゃん。」


勇希「ご、ごめん。忘れてた。」


謝罪した後、勇希は顔色を変えてパチュリィの方を向いた。


勇希「スリンダーって、さっき部屋で机に置いてあったやつ?」


パチュリィ「うん。そうだよ。あれは、レスキューレンジャーの主軸の様な物。」


そうパチュリィは言うと、勇希は頭を傾けた。


勇希「レスキューレンジャー……?」


勇希はここで初めてレスキューレンジャーと言う存在を知った。

もっと知りたくなり、勇希は立ち上がってパチュリィに近寄って興味津々に話を聞いていた。


【スリンダー】とは【腕時計型タブレット端末機】で、レスキューレンジャーにとっては無くてはならない品物。

【連絡機材】であり、【武器】でもあり、【体調管理システム】でもある有能なアイテムだとパチュリィは説明した。


パチュリィ「だから、スリンダーと言うのはレスレンの心臓って呼ばれる程大切な物なのよ。壊されたりなんかされたら、ちょっと強いただの人間になる。」


勇希「そうなんだ。じゃあさ、何でお母さんはレスレンだったって言うことを僕に教えてくれなかったんだろう?つまりは、人を助ける仕事だったんでしょ?とても誇らしい事だと思うんだけど。」


そう勇希が言った途端、パチュリィは顔を曇らせた。

細くて白い指をぎゅっと握り、小さな溜め息をつく。


パチュリィ「……レスキューレンジャーは、上に上がれば上がる程背負う物が大きいの。トップになってしまえば、【悪人を逮捕する手伝い】も【人を殺める事】もミッションに加わる。だから、【恨まれる事】もあるのよ。【命を狙われる事】も少なくない事になるの。」


この時パチュリィが言っていたこの内容は、9歳の勇希にとってそこまで【重要性】を感じていなかった。

どうして命が狙われる程恨まれてしまうのか理解が出来なかった。


勇希は、レスキューレンジャーと言う存在を深く知りたくなり、パソコンで隅々まで調べ尽くしていた。

パチュリィには、レスキューレンジャーの話は鈴音と淳矢には【秘密】と言われ、言えなかったのだが、だんだん勇希自身がレスキューレンジャーになってみたいと【夢】を持つようになった。



数ヶ月後のある時、勇希は鈴音と淳矢に相談する事にした。

たまたま淳矢は鈴音にケーキを差し入れに届けに行く途中を勇希はついて行き、研究室で話をした。


勇希「お父さん、お母さん。相談があるんだけど。」


いつも突然話を切り出す子じゃなかった勇希に、鈴音と淳矢は物珍しそうに勇希を見つめた。


鈴音「うん、どうしたの?」


鈴音は、淳矢から受け取ったフォークを片手に勇希を見つめ、淳矢は他の研究員のメンバー用のケーキを皿に乗せつつ勇希の話に耳を傾けていた。


勇希「僕……。レスキューレンジャー……やってみたい。」


そう勇希が言った途端、フォークが地面に落ちた。

この部屋だけ時間が止まったかの様に静まり返り、機械の音だけが部屋中を響かせていた。


淳矢「……な、なんで?どうしてレスキューレンジャーなんかっ!」


鈴音「淳矢っ!……落ち着いて。」


張り付いた空気の中、鈴音は淳矢の手首を掴みながらそっとしゃがんだ。

そして、勇希をじっと見つめた。


鈴音「どうして、レスキューレンジャーになりたいって思ったの?」


鈴音のその言葉に、勇希は【背筋が凍るくらいの恐怖】を覚えた。

【全てを悟ったような冷たい視線】に【落ち着きのあるいつもより低い声】、何より【威圧感】が耐えられない。

お父さんとお母さんのレスレン時代の事をみて、自分もやってみたいんだとは、とても口が裂けても言えなかった。


勇希「えっ……と……。人や、魔獣を助ける仕事を……自分の手でやってみたいから……。」


鈴音「自分の事も守れないんじゃ、レスキューレンジャーなんて出来ないよ。人や魔獣、この世界を救うにはそんな無垢な心でできっこない。世の中も知らない子が人や魔獣を助ける仕事なんて……」


つらつらと話す鈴音を遮るように大きな手が鈴音の肩を掴んだ。


「待った。」


鈴音「あ……ランパルト。」


ランパルトはパチュリィと同じく鈴音のパートナー魔獣で、人間に憧れて沢山の勉強をし、逞しくて強い人だった。


ランパルト「なぁ勇希。ちょっとこっちに来なさい。」


そう言うと、ランパルトは勇希の手を握った。

勇希はこくんと頷き、ランパルトに手を引かれて研究室を後にした。

勇希とランパルトがいなくなった研究室内では、淳矢は床に座り込みながら震え出した。


淳矢「な、なんで……どうしてレスキューレンジャーを……勇希が……レスレンになったら……っ。」


鈴音「淳矢……。大丈夫、大丈夫だから落ち着いて……。」


取り乱すほどの恐怖を淳矢は思い出してしまった。

きっと、『もし淳矢自身の身に起きたことが勇希に起きてしまえばとよくない想像をしてしまったんだろう』と鈴音は感じ、優しく抱き締めていた。

すると、鈴音は淳矢を抱き締めた時、淳矢の首筋から背中にかけて【大きな傷】の後が痛々しく見えた。

その傷を見て鈴音は顔を伏せた。


【この傷は、淳矢がレスキューレンジャー時代の最後に起きたミッションでつけた傷】だった。



その頃、勇希とランパルトは近くの部屋に入った。

そこはランパルトの部屋で、先に目に入ったのは大量の本が大きなテーブルに積み重なっていて、少し奥にパソコンと近くに小さな冷蔵庫が常備されていた。

少し見渡すと、ランパルトは、【床が1段下がった場所にダブルくらいの大きさの寝床】があり、少し不思議な作りをしていた。


ランパルト「ふぅ。俺の部屋初めて来たよな。ちょっとちらかってるがそこの大きなテーブルの近くの椅子に座ってくれ。」


勇希は頷き、椅子に座った。

ランパルトは慣れた手つきでココアを作っていた。


勇希「……ねぇランパルト。質問いい?」


ランパルト「ん?なんだ?」


勇希は寝床を指さして質問した。


勇希「なんでベットじゃなくて、なんかその、不思議な作りの寝床なの?」


そう勇希に言われ、ランパルトはココアをクルクルとかき混ぜながら寝床を見つめた。


ランパルト「あぁ。俺が疲れ過ぎて地面に倒れて寝る事が多いから、1段地面を下げてそのまま倒れる様に寝れるって事と、後はベットから落ちないって言うのもこの寝床の利点だ。」


日々徹夜して少しの休みで気絶したかのように倒れて眠る事が多いランパルトは、特別部屋を好きに設計していいと言われていて自由にDIYしている様だった。

よく見れば、大きな窓の奥に露天風呂まで付いていた。


ランパルト「ほら、ココア飲みな。落ち着くだろう。」


勇希「あ、ありがとう。」


貰ったココアを飲むと、体の芯まで暖かくなった。

優しい甘さで落ち着く香り、思わずホッと暖かい息が出た。


ランパルト「……勇希。俺からも質問だが、レスキューレンジャーってどこで知ったんだ?今まで話した事無いはずだが。」


その質問に勇希は答えられなかった。

パチュリィには【秘密】と言われていたから、言えるはずが無かった。


勇希「たまたま、トロフィー部屋に入っちゃって、レスキューレンジャーの物とか見つけたの。それで、自分なりに調べてだんだん興味が湧いてきて……。」


そう言うと、ランパルトはそうかと納得してくれた。


ランパルト「鈴音と淳矢はな、レスキューレンジャーをやってて【大きな事故】が起きたんだ。特に淳矢は、頭が5センチ割れて首から背中にかけて8センチ切れていたのもあり、3ヶ月間意識が戻らずにずっと危険な状態だった。」


突然そう告げられ、勇希は驚いていた。

ランパルトは勇希を見つつ、話を続けた。


ランパルト「鈴音はその淳矢をずっと支え続けた。淳矢を事故前に戻れるくらい回復させる為に一生懸命看病をし、薬も作り始めた。そのおかげで今少し走れるくらいまで回復し、こうしてパティシエも出来ている。でもな、問題はもうひとつあった。」


勇希「問題……?」


ランパルトの話に耳を傾け、勇希は真剣に真っ直ぐランパルトを見つめていた。


ランパルト「淳矢のその事故が起きる前、行なっていたミッションの内容が淳矢の【家族】の事だったんだ。今淳矢が生きてる事が知り渡れば、淳矢は再び【殺される可能性】がある。そして、勇希。淳矢の【血の繋がった息子】がいる事もバレてしまえば、勇希も殺されるかもしれない。だからこうやって身を隠しているんだ。」


かなり深刻な内容に、勇希はただ固まるしか無かった。

『苗字は他人に決して言わないで』と言われていた意味がようやく分かった。

鈴音は、旦那の淳矢と自身の子供達を守る為に家から出るなと厳しくそうしつけていた。


勇希「……僕は、なんてこと言ったんだろ。お母さんもお父さんも、僕を心配して怒ってくれて……。」


そう呟くと、ランパルトは頭をポンポンと撫でた。


ランパルト「俺から言えるのは、ここまでだ。ここまで知った上で、レスキューレンジャーになりたいかなりたくないかは自分で決めろ。俺的にはあまりおすすめは出来ない。でもそれが夢とか希望だと言われたら俺は何も文句は言えないよ。俺だけじゃなく、鈴音も淳矢もな。」


そう言われて鈴音の言葉が頭を過った。


『もし、勇希が夢を見つけて、その夢があまりに過酷で難しくても、勇希が諦めないと言うのならお母さんは何も文句は言わないよ。やるならやりきりなさい。』


そう鈴音は勇希に言ってくれた。

勇希は深呼吸をし、じっと考えた。

考えた矢先、勇希は決めた。


勇希「……ランパルト。それでも僕はレスキューレンジャーやりたい。どんな危険が待ち構えてようと、僕は諦められない。真剣にこの仕事をしたいんだ。」


ランパルト「……そうか。だってよ、鈴音。やっぱり血は争えないな。」


そうランパルトは扉に向かってそう言うと、扉が開き、ため息混じりで鈴音が現れた。


鈴音「何でそんなことわざ知ってるの。ちゃんと使い方あってるし。」


鈴音は腕を組み、部屋に入って勇希を見つめた。


鈴音「……私達がレスキューレンジャーだったから、勇希もなるんじゃないかって思ってたけどやっぱりなりたいのね。……人を助ける仕事がしたいの?」


鈴音の真っ直ぐ心の奥底まで見つめられてる様な鋭い視線に、勇希も負けず真っ直ぐ目を見て頷いた。


勇希「うん! 色々調べたけど、お母さんとお父さん、たっくさん人を助けて魔獣も助けて、国も助けたんでしょ? 体を張って沢山のもの守ってすごいって思った。そんな自慢のお母さんとお父さんだから、僕も同じ様に、お父さんとお母さんにとって自慢の息子だと思って貰えるくらい沢山の人達を救って行きたい!僕自身もっともっと強くなって、簡単に倒されないように強くなる! だから……! 」


鈴音「わかった! わかったから。……はぁ。でもね、勇希。レスレンになるには学校に通わなきゃ行けないし、その手続きもしなきゃだから時間はかかる。その間勉強と運動をしっかりして。勇希の事だから、勉強は読むだけでも頭にしっかり入るだろうからそれは良しとして、問題は運動。」


鈴音はしゃがみこみ、説明を始めていた。

勇希はきょとんとした後慌てて鈴音の説明を遮る様に焦り始めた。


勇希「ま、待って! え? お母さん……レスキューレンジャーの学校に行かせてくれるの……?」


勇希はしばらく否定され続けると思っていたせいでまさか許可してくれるとは思わず頭が追いついていなかった。

鈴音は頭を傾け、拗ねた表情をした。


鈴音「なに? 今更行きたくない訳?」


勇希「ち、違うっ! だって、まさかそんなすぐ許可してくれるなんて……。」


そう勇希が言うと、鈴音は勇希の肩を掴んでじっと目を見つめた。


鈴音「勇希を【信じてる】から許可したの。もちろん出来るならやめて欲しいとは思ってる。でも、勇希はどうしても行きたいんでしょ? 言い争いするくらいなら行きたいと言う息子の願いを叶えるのが親の務めじゃない?」


そう鈴音は言い切った。

その言葉に勇希は固まり、徐々に目に涙を浮かべてパッと両手で目を覆った。


勇希「あ……ありがとう……ござい、ます……っ。」


鈴音「う……。そんな泣かなくたっていいじゃない。」


鈴音は勇希を抱き寄せて、頭を撫で始めた。


普通の学生は、この世界の基礎や言葉、算数や社会、魔法学や科学、魔獣等の生物学を5歳から学び始め、10歳で基本的な学業を終えて義務教育は卒業する。

10歳以降は専門学や他の地方への留学、または魔獣と契約を交わして旅をする。

そのため、専門学となるレスレンの学校はまだ9歳の勇希は本当は行くのでさえ早い。

だが、とある方法を行えば転入として入る事が出来る。


それは……。


鈴音「……あ、もしもし。レンジャーズスクールでしょうか? 私、大空おおぞら すずと申します。ええ、実は、私の息子がそちらの学校に入りたいと言っておられまして、もう義務教育は卒業しているのですが……」


実は、勇希は【オンライン授業】にて義務教育は8歳までに【飛び級】で卒業していた。

勇希は学校側に対し、病弱で外へ出られないが勉強はしたいと言ってあり、【パソコンを通じて授業を参加】し、プリント類やテストも全てパソコンやタブレットで行っていた。

そんな状況だったが、勇希自身やりたい物が無く、進学はしなかった。

約1年間、家で妹と弟の面倒を見つつ、やりたい事を見つけてはその事を1から知ろうと調べ、手を伸ばして挑戦すると言う1年だった。


『でも、今回ばかりはきちんと学校に通ってみたい。』


そう感じた。


鈴音「飛び級で卒業したものでやりたい物が見つからず、色んな事を見つけては1から学び直して挑戦したりで、今回初めてレスレンをやりたいとの事なので入学したいんですが。」


珍しく鈴音と勇希は2人で家を出て、【フラワー地方】の【ラベンダーシティ】から電車乗ってフラワー地方第2の都市と言われる【ナナカマドシティ】へ来た。

大きな都市じゃないと国外の施設に連絡出来ず、片道1時間半かけてレスレンの学校に連絡を取るため訪れた。

鈴音は【偽名】を名乗り、わざわざ【苗字を変える為の手続き】まで行ってくれていた。

勇希は何から何まで自分の為にやってくれた鈴音に、親の偉大さを思い知ってちゃんと親孝行しようと心に決めた。


鈴音「はい、いいんですか?……ありがとうございます。では、その様にしますのでよろしくお願いします。失礼します。……ふぅ。勇希、いいってさ。1ヶ月後にバトリーア地方レンジャーズスクール入学決まった。」


勇希「……えっ!? し、試験とかは?」


突然の事の進み様に流石に勇希は驚いた。

鈴音は当然の様に慣れた手つきで手帳に何か書き込み、手帳を閉じると鞄にしまって勇希を見た。


鈴音「試験とかはあるっちゃあるけど元々人数少ない学校だからね。レンジャーズスクールとは言うけど、レスレンになる人はほんのひと握り。才能が無い人はレスレンの勉強さえしないの。ただ普通に体を動かす為の学校となって【5年間通う事】になるんだよ。」


勇希「そうなんだ……。でも、今5月なのに6月から入ってもいいものなの?」


そう勇希が質問すると、鈴音は勇希の服の襟を直しながら説明をした。


鈴音「あそこの学校は卒業式はあるけど入学式とかそんなの無いの。基本的試験さえ受ければ勝手に入れる感じだし。【免許取ると同じ様なもの】だから、配布された教科書を1年で理解してテストが4月と8月と12月と3月にあるからその時に点数となる。後は出席日数とレスレンの実技も必要ね。」


その話を聞いて勇希は、まだやらなくてはならない事が大量にあると思った。

すると、鈴音は勇希の頭を撫で、そっと微笑んだ。


鈴音「ゆっくりでいいから、頑張ってこうね。さて、帰るか。」


建物から出ると、外は天気はいいが少し肌寒い。

きょろきょろと周りを勇希は見渡していると、鈴音は勇希にフードを被せた。

鈴音もフードを深く被り、冷たい風がローブを揺らしている。


勇希「うん。ちょっと寒いから早く電車乗ろ。」


勇希は鈴音の手をぎゅっと握り、引っ張った。

いつもそんな甘え方はしない勇希に、鈴音は驚いたが嬉しくなり、つい柔らかく微笑む。


鈴音「ふふっ。勇希の手は暖かいのね。……帰ったらレスレンの学校の事を全部教えてあげるからね。」


鈴音も手を握り返し、2人で歩きながら話をしていると、遠くで何かが光って見えた。

それに勇希は気が付き、光った場所をじっと見つめる。


勇希「お母さん、ちょっと待って。なんか見えた。」


そう勇希は言い、鈴音は勇希が向いてる方を見たその途端……


「きゃーっ! 」


悲鳴が上がった。

その瞬間、鈴音の表情が変わって胸の下まである【ネックレス】を握った。


鈴音「あ、あー。聞こえる?デュアリュ?今うちナカドの駅方面にいるんだけどハンターっぽいやつが魔獣連れ去ったのが透視で見えた。勇希もいるから音速で来て。」


そう報告しながらも鈴音の【目はずっと何かを追って】いた。

決して見逃す訳には行かないと真剣に見つめてるのが他から見ても誰でも感じ取れる【集中力】だった。

すると、連絡して10秒も経たないうちに目にも止まらぬ早さで、肩につくくらいの紺色の髪を一つに縛った背の高い人が目の前に現れた。


デュアリュ「はい、ディアリュが到着しました。」


その言葉を発した時、現れた衝撃で勇希と鈴音の髪と服がファサッと風になびかれた。

デュアリュは涼し気な表情で鈴音を見つめていると、鈴音は頷いてデュアリュの腕を掴んだ。


鈴音「勇希を頼んだ。勇希、もしうちの事見たいのならデュアリュに頼みなさいね。いい子にしててね。」


鈴音は勇希に微笑みかけると、今までに見た事のないくらいの速さで鈴音が走り去っていった。

すると、デュアリュは勇希の頭を撫でながら小さくため息をついた。


デュアリュ「全く、人使いの荒い奴だよな? 勇希。」


勇希「あはは……。でも、これがお母さんのもう1つのお仕事なんだよね。」


そう呟くと、デュアリュは勇希を片手でヒョイっと持ち上げた。


デュアリュ「よし、勇希。【鈴音の仕事】見に行くか。」


突然そう言ったと思えば、勇希の頭を包む様に抱えて軽くジャンプした。

すると、まるで体が軽くなったかのように空高く上がって行った。


勇希「わわぁっ! ……た、高い。」


デュアリュ「大丈夫だ。落ちない。俺だって魔獣なんだから空飛ぶことくらい出来るよ。でも、このままだと街の人とかにバレちゃうから【見えないように】しないとな。」


勇希はまるで無重力空間にいるかのようなデュアリュの空の飛び方に違和感を覚えつつ、デュアリュを抱き締めていた。


デュアリュ「今誰の目にも俺らの姿は映らない様にしたから。【地面に降りたり地上にある物を触ったりしたら解ける】から気を付けてな。」


そうデュアリュは言うと、ゆっくり地上に向かって降りつつ鈴音の姿を目で探していた。

勇希もきょろきょろと探していると、【不自然な荷台トラック】が見えた。


勇希「デュアリュ、あっちに車ある。」


デュアリュ「うん? あ、本当だな。……あれハンターだな。」


じっと見つめてデュアリュはそう一言呟いた。

すると、荷台の方には5匹程の生き物が積まれていて、怯えていたり威嚇したり様々な様子だった。


勇希「……早く助けないと。」


そう呟いたその時、走って来たハンターが運転席に乗り込み、すぐエンジンを付けて走行を始めた。


ハンター「くそ……厄介な奴め。」


悔しそうな表情でそう口にし、物凄いスピードでナナカマドシティを遠ざかっていた。

その時、荷台から大きな音がした。


『ガチャンっ! ガチャンっ! 』


その音が聞こえたハンターは急ブレーキをかけて車を停め、急いで荷台の方へ行くとケースに入れていたはずの生き物が逃げ出していた。


ハンター「な、なんて事だ……。」


ハンターはかなりショックを受けていたが、少し奥に倒れていた茶色の子狐か子犬ような生き物がふらふらと立ち上がり、ハンターに対して威嚇をしていた。


ハンター「……お前がここにいた珍しい魔獣を逃がしたのか? 魔獣の分際でなんて事してくれたんだ! 」


すると、そのハンターは魔獣を掴み、思い切り地面へ叩き付けた。

そして、鉄骨を手にしてぐったりとしている魔獣の所へゆっくり向かっていた。


魔獣「テュゥ……ゥ……ッ……。」


魔獣はか細く声を出していた。

その声は、勇希には助けを求める声だと確信し、つい体が動いてしまった。


勇希「やめてっ! この魔獣に手を出さないで!」


勇希は、ディアリュの腕から抜け出して勝手に地面に降り、魔獣の前に両手を広げて立ち塞がった。

魔獣は、【少し驚いた様子】だったが少し虚ろな目をしていた。


ハンター「ああぁ? んだこのガキ。生意気なガキが引っ込んでろっ! 」


そう叫び、鉄骨を振り下ろしたその刹那、【殴られた様な音】が聞こえたが勇希に【痛みはなかった】。

目を閉じ、殴られる覚悟をしていた勇希は、そっと目を開くと前には鈴音が立っていて、腕で鉄骨を防いでいた。


鈴音「痛っ……。勇希、怪我は無いね?」


勇希「あ……お母さんっ……。」


無事を確認した鈴音は、ハンターを睨み付けると鉄骨を奪い取りハンターと戦っていた。


鈴音「うちの息子に手を出そうなんて薄汚い盗人共が。お前だけは指一本だけじゃ許さないからな。」


すると、鈴音はハンターをほぼ半殺しにしていた。

勇希は足の力が抜けて地面に座り込み、ふと我に返って振り向き、ボロボロな魔獣の側へ寄った。


勇希「君っ……大丈夫?! こんな怪我して……。今治してあげるからね。」


そう勇希は言うと、虚ろな目をした動けない魔獣を優しく抱き上げ、そっと支えた。

もう弱々しく、【全て諦めたかのように魂が抜けた状態】の魔獣に、勇希は優しく囁いた。


勇希「【ヒーリング】……。」


そうすると、勇希の手から黄色く柔らかな光が溢れ出して魔獣を包み込んだ。

勇希は真剣に魔獣を回復させていると、突然吐き気が込み上げた。


勇希「うっ……っ。」


デュアリュ「勇希っ! もう回復させなくていい、俺がやる。」


まだ【魔力を思い通りに操れない】勇希に、デュアリュは慌てて止めに入った。

勇希は頷き、魔獣をデュアリュに渡すと回復を続けてくれた。

すると、戦い終えた鈴音はすぐ勇希の元へ駆け付けた。


鈴音「勇希! もう……良かった無事で。慣れない【ヒーリング】使ったのね? 勇希はまだ【魔力の調節が出来ない】んだからあまり使わないようにって言ったのに……。」


そう鈴音は言うと、勇希の胸に手を当てて魔力を注いだ。

その時の鈴音は、少し寂しそうな表情をしていた。


勇希「ん……ごめんなさい……。」


勇希は謝ると、鈴音は薄く微笑んで抱き締めた。


鈴音「……うちの子だからしょうがないよね。お母さんも、勇希と【同じ立場】ならそうしたと思う。だから、謝らなくていいよ。正しい事をしたんだから、ね?」


鈴音は怒らなかった。

勇希の気持ちが分かり、文句が言えず怒れなかったから。

すると、デュアリュが魔獣を勇希の前に差し出した。


デュアリュ「とりあえず魔力供給させてヒーリングもした。今はすっかり寝てるがもう元気にはなっただろう。」


勇希「デュアリュ、ありがとう。」


そんな会話をしていると、サイレンが聞こえてきた。


鈴音「あ、警察来たみたい。ちょっと説明してくるから先駅の方行ってて。」


そう言った後、鈴音はパトカーの方へ走って向かっていった。

デュアリュは勇希を隠す様に歩き、そのまま駅の方へ向かって歩いていた。



1時間程で駅に着いたと同時に、鈴音は少し息を切らして走って来た。


鈴音「お待たせ! ふぅ。さてと、帰りますか。何か1人多くなったけど。」


デュアリュ「しょうがない。呼んだのは鈴音なんだから。」


そう得意げにニヤつきながら言うデュアリュに、鈴音はため息混じりで頷いた。


鈴音「まぁそうだね。助かりました。はい。」


デュアリュ「え、冷たぁ……。せっかく助けに来たのに。」


話しながら駅のホームまで行き、ボックス席に座ると鈴音は【腕をさすって】いた。

それを見た勇希は、抱えていた魔獣を膝に置いて鈴音の手を掴んだ。


勇希「ねぇ、お母さん。腕……見せて?」


鈴音「あ……わかっちゃった……?実は、結構痛くてね……。」


そう言いながら腕をまくると、鈴音の右腕が真っ青に腫れていた。

それを見て、デュアリュと勇希は驚いた。


デュアリュ「お、お前それは痛かっただろ。いくら痛いのが我慢出来るからってそれはほっとけないぞ。」


勇希「もしかして……僕の事庇ってくれた時の……?」


鈴音「そうだけど、大丈夫よ? 家に着くまで動かさなければ平気だから。」


すると、デュアリュは持っていた肩掛け鞄からスプレーとタオルを出し、応急処置を始めた。


デュアリュ「とりあえず冷やして固定だけするぞ。」


手際よく処置をする姿に、鈴音は優しく微笑んでいた。


鈴音「うん。ありがとう。それと、勇希。勇希が悪い訳じゃない。うちが咄嗟にバリアが貼れなかったせいだから。【レスレン時代よりもうかなり劣ってる】みたいだから、うちもまたちゃんと訓練からやり直すわ。」


鈴音はそう言うと、腫れてない手で勇希を撫でた。

列車が走行中、【救助した魔獣】を勇希は見つめていると、デュアリュと鈴音は【魔獣について】話し始めた。


デュアリュ「その魔獣、鈴音は【確認】出来てるの?俺は見た事ないから。」


鈴音「まぁ、珍しい方の魔獣だよ。うちは持ってないけど、【姿が変わって強くなる子】もいれば【このままの姿で半端ない魔力を出す子】もいたはず。この子の名前は、【テュナブイ】。」


勇希「テュナブイ……。」


勇希はテュナブイと言う魔獣を優しく撫でた。

すやすやと眠り続けるテュナブイに、何とも言えない感情になる。


鈴音「テュナブイは、【神魔獣のアメウス】の下で仕える【七賢人】と呼ばれる程の【珍しい魔獣】だよ。」


デュアリュ「そうなんだ。つくづくと思うけど、人間は面白い表現の仕方をするんだな。」


考えた表情でテュナブイを見つめるデュアリュに、鈴音はデュアリュを見つめながら少し微笑んだ。


鈴音「そういえば、【アメウスの右腕】がここにいたわ。」


デュアリュ「え? 俺そんな位高いの?」


鈴音「そんな事言うんならアメウスの周りの話うちに聞かせなさいよ。全部分かったら世紀の大発見よ?」


難しい話を始めたデュアリュと鈴音に、勇希はついていけず窓の外を見つめ出した。


『今は晴天とは言えないが、とても天気がいい。』


『でも、きっとまだ寒いくらいの気温で長時間外を歩くのはまだ自分には早いのだろう』と考えていた。



続く……

最後までご覧いただきありがとうございます。

次回は、12月頃に投稿する予定でいます。

Twitterからも投稿事項を話すこともあるので、そこでご覧になるといいかもしれません。

私の趣味を少しでも面白いと思ってくださったらとても嬉しいです。

これからもレスレンをよろしくお願いします。

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