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異世界でかけあがれ!!  作者: れのひと
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 今日俺は5歳になった。5歳というのはちょっとした区切りで、この世界ではお祝いをするのが普通らしい。それはもちろん俺も同じで朝から使用人たちが忙しそうに動き回っていた。


 バタバタバタバタ…バンッ


 大きな音がして俺の部屋の扉が開いた。その先にいたのは息も切らさずじっとこっちを見ているまだ幼い2つの瞳。


「クルーガッ 5歳おめでとう!!」

「…ありがとう姉さん」

「もう何よ! 折角一番に祝いにきたのにその態度は~っ」


 これには思わず苦笑いを浮かべるしかない。だって姉さんは寝起きのままで髪の毛も寝ぐせがついているし、着替えもしておらず寝間着のままなのだ。もしかしたら顔すら洗っていない可能性もある。7歳にもなる女の子の行動とは思えない。これでも一応学園に通っている年齢で今は冬の休み期間で家に帰ってきている。


「アンネ様~ 部屋に戻ってくださいよ。私が怒られてしまいますっ」

「すぐ戻るわ。目的は達成できたしね」


 遅れてアンネ付きのメイドが呼びにやってきた。アンネは気が済んだのかメイドとともに部屋を去っていった。まるで嵐のような人だよなと思わず笑みが漏れる。


「おはようございますお父様、お母様」

「ああおはよう。5歳おめでとう」

「ありがとうございますお父様」

「おはようクルーガ。立派な5歳ですね」

「はい、5歳として恥ずかしくない成長が出来たと思います」


 身支度を整え食堂で両親に朝の挨拶を。2人とも今日の俺の誕生日を祝ってくれた。


「今晩は近隣からお前の祝いに人が集まるから稽古などは無しになるからな。それよりも少し作法の見直しなどをしておいてくれ」

「わかりました」


 食事をしながら今日の予定を聞かされる。どうやら5歳の誕生日のお祝いは家族だけじゃなく他にも人が来るらしい。もしかするとちょっとしたお披露目のようなものなのかもしれないね。となると第一印象が肝心。下手なことは出来ないな。


「あっ ちょっと今のとこ違うわよ」

「え…こうやって、こうでしょ?」

「そうじゃなくてこっち!」


 食事が終わったアンネとダンスのおさらいだ。今日一番最初に一緒に踊ることになっている。姉にとってダンスは剣の稽古と変わらないらしい。リズミカルな動きが、スムーズな足運びが剣の型をやる時と同じもんだとか言っていた。俺にはとてもそうは思えないんだけど。まあステップは多少違っていてもいい。2人で踊る時にお互いの足を踏んだり、ドレスの裾を踏むようなことが無ければ何とかなるものなんだとか。


「姉さんちょっと休憩しようよ」

「何言ってるのよ…まだそんなに踊っていないでしょう?」

「いや…夜も何度か踊ることになるんだから今ここで張り切らなくていいと思うんだけど」

「それもそうね…じゃああと一回通して踊りましょうよ。ね?」


 姉さんはずるいと思う。あの綺麗な青い瞳で見つめられると何も断れなくなってしまう。少し重い腰を上げ俺はまたアンネと踊った。


 夜になり俺の誕生日兼お披露目パーティが始まった。普段は使わない大広間を解放し、半分はテーブルがあってその上に色んな料理が並び、半分はダンスのために開けられている。


「本日はわが息子の5歳の祝いに来てくださりありがとうございます」

「5歳になりましたクルーガ・フォン・マキシマータです。本日はありがとうございます」


 父に促され簡単な挨拶をする。それが終わるとまず俺と姉だけでダンスをした。広い空間にたった二人きりのダンスだ。音楽が流れ練習の通りにステップを踏む。お互いがお互いだけを見つめ踊り続ける。姉の瞳の色は本当にずるいと思った。見つめろと言われればいつまでも視線をそらさずにいる自信があるくらい綺麗なんだ。


 気がついたときにはダンスが終わっていた。2人で手を繋ぎお辞儀をすると軽く拍手が起こった。


 それにしても主役というのは疲れるものなんだと初めて知ったよ。今目の前にいる令嬢と軽い挨拶をしていたところだ。ダンスが終わった後はこのパーティの参加者が順番に俺にお祝いの言葉を届けるという、まあ…お互いの顔合わせみたいなやつが続く。娘を一生懸命紹介する親が多くてちょっと笑えそうになってしまったが必死でこらえた。だって5歳にうちの娘はどうですかって…ありえない。しかも俺高校生の時の記憶があるもんだから5歳なんてなんとも思わないし。せめてあと数年成長してからにして欲しいよね。


「クルーガ…」

「姉さん?」


 挨拶が終わったのでテラスで少し休憩しているとアンネがやってきた。


「ここは寒いわね」

「今は冬ですからね」

「本当5歳おめでとう。私まだ覚えているのよクルーガに初めて会った時の小ささに驚いたこと。ちゃんと5歳になれてよかったわ」

「姉さん…」

「まああんたは流石に覚えていないでしょうけども」


 覚えているよ。生まれた時から記憶があるんだから。最初の1年くらいは本当にきつかった…体が小さすぎて生きていくだけで必死だった。体調も良く崩したし、そのたびアンネが寄り添ってくれてたのも覚えている。


 2人でぼんやりと冬の空を眺めながら気が済むまでそこで過ごした。

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