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異世界でかけあがれ!!  作者: れのひと
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 少しだけ古ぼけた建物の前にあるドアノッカー、俺はそれを手に取り音を鳴らす。コンコンと鈍い音がすると、その扉の向こうから声が聞こえてきて少しして扉が開いた。


「来たね」

「来たというか呼んだのはそっちだと思うんだけど?」

「細かいことはどうでもいいよっ さっさとおあがり」


 ほとんどが白髪へと変わってしまった女の人が家の中に入るように言うので俺はその後をついて入り、扉を閉めた。ここが指名された今日の俺の仕事先だ。


「じゃあまずは前と同じように掃除を頼むよ」

「いいけど、まだそれほど日はたっていないよ…もうそんなに汚れたの?」

「うるさい子だね~ 依頼人がやれって言ってんだ、大人しく仕事をすればいい」

「はぁ…まあいいけど」


 まずはこの女の人の家を掃除する。それが前回俺が受けた仕事だ。もちろん今回も内容は同じ…一つ違うとすると指名されているということ。前回仕事が被ってしまって他の人と一緒にここで掃除をすることになったんだ。実はそのもう一人の人に指名をして、俺が受けたのはその人が来なかったらやってもらいたいという形だった。だけど偶然同じ日にその仕事を受けてしまったため半分ずつ仕事をやると言うことで話がまとまる。その時にちょっとしたもめ事もあったんだよね~ よし、まずは掃除を終わらせてしまおうか。


 この家は平屋で2階はない。だけどそれなりに広くて、今住んでいるのは一人なのに個人で使用する部屋が5つもあるんだ。その5つの部屋と居間、調理場、食堂、厠、さらに風呂までついている。結構裕福な家だよね。一般家庭に風呂は普通ついていないらしいし。


 順番に部屋を回り廊下も含めてクリーンをかけていく。スキルでちゃちゃっと終わるので時間はそんなにかからない。


「終わったよー」


 食堂を最後にクリーンしてから調理場にいる女の人に声をかけた。


「本当に早いね! こっちはまだ準備できていないというのにっ」

「あー手伝うよ」

「そうかい」


 初めからそのつもりだったのか、女の人は俺の言葉にニヤリと笑った。


 2人で準備をし、それらを食堂へと運ぶ。去り際に調理場にもクリーンをかけておいた。これで掃除は完了だね。

 テーブルの上にカップを並べ、お湯を注ぐ。次にお菓子が入った皿をテーブルに置いた。


「そろそろいいんじゃないか?」

「そう?」


 俺はお湯が入ったカップの中に入っているお湯を別の器に移し、ティーポットを手に取る。蓋を押さえながらゆっくりとさっき温めていたカップに注いだ。まあ身長が足りないのでちょっと行儀が悪いが椅子の上で立ち上がっての作業なのは仕方がない。


「よっと」


 カップにお茶を注ぎ終わった後、椅子から一度降りてティーポットなどを片付けた。それから椅子に座りなおす。まああれだ。一人暮らしのお年寄りの家を掃除するついでに一緒にお茶を飲みながら話し相手をする。これが俺が受けた仕事になる。


「相変わらずいい香りだね」

「ふんっ いっちょ前に違いが判るって言うのかい」

「あのね。子供だって香りの違い暗いわかるってもんだよ」

「どうだかね」


 そう言いながらも女の人はどことなく楽しそうに口の端をあげている。内容は何でもいいんだ。こうやって会話をすることに意味がある。


「…あの子ももうちょっとこうやって話し相手になってくれればいいのに」


 また前と同じことは口にした。あの子って誰だろうか? 女の人はチラリと飾られている絵に視線を向けた。確かあれは自分の子供の小さなころの絵だという話。つまりあの子とはその子供のことなんだろう。もしかするとろくに話し相手になってくれないのかもしれない。だからこうやって代わりに俺との会話を求めているってところか。


ダンダンダンダン!!


 扉が乱暴に叩かれる音が聞こえてきた。女の人は顔をしかめるだけで、返事も返さない。


「出ないの?」

「どうせ勝手に入ってくるさね」


 なんだろう? 何もなかったかのようにお茶を飲んでいるんだけど。本人が僧院だからこれ以上俺が聞いたって何も話してくれないかもしれないな。


「母さん!!」


 いきなり扉が開いて男の人が入ってきた。


「うるさい子だね。お茶もゆっくり飲めやしない」

「そう思うならさっさと出てくれればいいのに」

「最近ちょっと耳が悪くなってきたせいかもしれんね」


 突然やってきた男の人がその言葉に顔をしかめた。


「まあいいよ。それよりいい加減俺に権利を譲ってくれないか?」

「…いやだね」

「母さん何度も言うけどこのまま母さんが死んでしまったら、すべてなくなってしまうんだよ? そうなる前に絶対俺に渡すべきだって」

「こっちも何度もいったさね。お前にはやらないと」


 すると男の人はチラリと先ほど見た飾られている絵を見た。そういえば子供の小さなころの絵ってことはこの人なのかなこの絵。少しも似てないような気もする。


「いつまでもこんな絵を…」


 男の人は絵に近づくとそれを手に取った。


「母さん…権利はこれと交換だ!!」


 絵を抱え男の人は家を飛び出していく。あれ…なんかちょっと変じゃないか?? ちょっと意味が分からないんだけど。ずっと黙ってその様子を眺めていた俺は女の人の方を見た。

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