現代でヒヨコ転生したんだが……
死んだら鳥になりたいとあの時は思っていた。
現実は弱者に厳しく冷たい鉄格子だ。
悪意の檻に閉じ込められて、次第に呼吸が苦しくなってとうとう俺はドロップアウトした。
何の因果か望みは叶えられ、卵の黄身のような体毛に丸みをあるボディ。
そうヒヨコだ。雛の段階で気づいてしまった。軽い失望感に沈んでいると
「そんなにうなだれてどうしたんだ。兄弟」と声をかけられた。
そこには癖毛のあるヒヨコの姿があった。
「生後デビューに失敗したのかい。気にすんなって。俺たちはまだ若い、これから立派なオスになってハーレムを囲うことにも夢じゃないんぜ」
「そんなんじゃねーよ。いいか。俺たちの未来は……」
そいつの目を見た瞬間、俺はその先を言葉にするのを止めた。
「ああそうだな。ハーレム王に俺はなる。お前の分はないかもな」
「何を言うか。俺が先だ」
などと言い合いながら、俺たちは仲よくなった。
それから俺たちは何百という数のメスたちをナンパした。
そんなある日、俺たちはいつも通りナンパをしていると。
「ち、今日はしけてるぜ。収穫ゼロだ」
「同じく、駄目だ。ここら辺オスしかいなくないか」
「今日はやめとくか」
「そうだな。そろそろ、お開きにするか。んん何か音がしないか」
音は段々と近づいていく。それに伴い誰かの叫び声が聞こえてきた。
「人間が来たぞ。逃げろ」
いつもはエサを入れにしか来ない人間が柵に入ってきたのだ。
俺たちはあっという間に捕まり、工場のような場所に連れ込まれた
「殺処分は、このあたりまで後はエサ用で出荷だ」と人間はちょうど俺と兄弟の間に指して言った。
俺は殺処分側のヒヨコだった。
人間は俺を掴もうとしたが、俺を吹き飛ばし捕まったのは、兄弟だ。
「何でこんな事を」
「つい体が動いんだ。お前なるんだろ。ハーレム王に」と微笑みながら連れ去られた。
この瞬間、俺の魂に火が灯った。
この後、伝説になった一羽の鶏がいた。彼は、エサ用として出荷されたにもかかわらず、驚異的な生存能力を発揮し生き残り、最後は、鶏小屋に舞い戻り、多くのメスに看取られてこの世を去ったという。