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青春空手道部物語 ~悠久の拳~ 第2部  作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
第4章 大嵐の大激闘! 拳士の闘志に限界なし!
74/106

2-74、個人組手、大混戦!

   ~~~ 個人組手を三回戦まで行います! 各コート、選手、入場ッ! ~~~

   ♪ パパパァーン ♪ チャララーン ♪ ジャジャジャァーン ジャンジャン ♪


   ワアアアアアアアアアアアアアアーッ!  ワアアアアアアアアアアアアアアーッ!


 音楽とともに各コートに選手たちが入場。前原たちは栃木陣営から応援に回る。

 一回戦、田村はAコート第七試合。二斗はDコート第八試合。川田はEコート第九試合。小笹はHコート第二試合だ。


「いやー、うちのまなみもインターハイ選手か! こうして見ると、すごい選手らと当たるんだなぁ! あー、見てて楽しみだーっ!」

「川田さん、うちの尚久なんか、またあの瀬田谷学堂の水城選手がいるコートですよぉ。まったく、くじ運がいいんだか悪いんだかわかんないねぇー、うちの子は」


 保護者たちも、まもなく始まる個人戦に様々な思いがあるようだ。前原たちも、日新学院や等星女子、そして堀庭たちと一緒に、栃木県勢へ声を張り上げて応援している。


   ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ  ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ


「赤、兵庫県! 凪川学院高校、谷川選手!」

「はああいっ!」

「青、栃木県! 海月女学院高校、末永選手!」

「はぁーいっ!」


   ~~~選手!~~~


「・・・・・・ツアアアーイッ! アアアァァーーーーイッ!」


   ヒュンヒュンッ!  バシバシバシイッ!  シュババンッ!


「(な、何やこの動きと構え! よ、読めんわ!)」


   シュラアッ! パアッカァァァンッ!

   ワアアアアアアアアアアアアアアア  ザワザワザワザワザワザワザワザワ


「止め! 青、上段蹴り、一本っ! 青の、勝ち!」

「くすっ。ま、初戦はこんなもんよねぇーッ! 兵庫の凪川学院、そこそこ強かったねえッ!」


 まずは小笹が出陣。相手は近畿地区の名門、凪川学院の選手。

 立ち上がりこそ連続ポイントを取られた小笹だったが、だんだんと波に乗り、いつもの変則的な構えからの足技を駆使して大量得点となり、12対4で難なく一回戦突破。

 同様に各コート激戦が繰り広げられ、Aコートでは田村が出陣。


「赤、富山県! 水見学園東高校、柴山選手!」

「おおおぉす!」

「青、栃木県! 県立柏沼高校、田村選手!」

「うぉっす!」


   ~~~選手!~~~


「「「「「 ファイトォォォーーーーーーーーーッ! 」」」」」

「(うっし! 腰も足も、だいじだ。さぁて、どんな相手かねぇ、こいつは・・・・・・)」


 監督席にいる新井にピースサインをし、田村は富山の選手と対戦。


「ああああぁーーいっ! あいしょぉーっ! ああああぁーーいっ!」


   ドシュンッ! ズババババンッ! バアンッ!


「「「「「 田村先輩ーーーーーーーっ! ファイトーーーーーっ! 」」」」」

「止め! 青、中段蹴り、技有り!」


   ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ!


「ぬあああああああっ!」


   ドガアアアーッ!


「止め! 赤、中段突き、有効!」

「(いてぇなこのやろう! 栃木パワーをなめんなぁ!)」


   バババババァッ! バチュンバチュンバチュンッ! ドカアアッ・・・・・・


   ~~~ ピー ピピーッ ~~~


「止め! 8対6。青の、勝ち!」

「ふぃぃー・・・・・・。ノーマークだったけど、思ったより強ぇやつだったなぁー」

「田村君ナイスファイトーっ! やったね一回戦!」

「いいぞーっ、尚ちゃん! おつかれーっ!」


 時間いっぱいまで戦い抜いた田村。団体戦の疲れも多少あるのか、動きは思ったほど軽やかではなかった。でも、きっちりと相手にリードされることなく、2ポイント差をつけ一回戦突破。

 終わったあとは前原たちの方へ、のほほんとした表情で拳を振っていた。


   ワアアアアアアアアアアアアアーッ!  ワアアアアアアアアアアアアアーッ!


「「「「「 ファイトォォォッ! 二斗先輩! ファイ! ファイ! ファイ! 」」」」」

「ぅぅううるるおぉあっしゃぁーーーいっ!」


   ドッゴォォォッ!  ドガァン! ドオンッドオンッ! ズドオンッ!


「「「「「 ちばりよぉーーーっ! 宮城、負けんなぁーーーっ! 」」」」」

「「「「「 取り返すさぁーーーっ! ちばりよーっ! ファイトーーーーーっ! 」」」」」

「だらあぁぁっ! だらららららぁぁっ!」


   パパパパァン!  パパパパァン!  パパパパァン!  パパパパァン!


「止め! 赤、上段突き、有効!」

「止め! 青、中段突き、有効!」


   ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ


 田村が終わったと思ったら、Dコートでは二斗の試合が始まっていた。

 地元沖縄県の、県立石垣新城高校の宮城選手と激突。地元選手が出てるためか、Dコートへの声援がものすごい。


「うあしゃぁ! うるるおぉあっしゃぁぁいっ!」


   バチインッ  バタアンッ!  ズッドオオオンッ!


「止め! 青、上段突き、一本! 青の、勝ち!」

「・・・・・・。」


 一回戦で地元選手を下した二斗。先制点は許したものの、順調にポイントを重ね、最後には足払いで転がした相手の側頭部へ突きを決め、一本。9対1の圧勝で、一回戦突破。


「みんな、大暴れしてますね! すごいなぁ、先輩たち! ほんと、すごい!」

「紗代、よーく見ておくんだよ! このインターハイ、わたしたちは試合こそ出てないけど、こうして見学するだけでも、取り込めることはいっぱいある。真衣も、目を離さないでね」


 阿部が一年生たちの面倒をしっかりと見ている。茶帯の二年生三人も、この大会が終わってからすぐ、来月には昇段審査がある。だんだんと、阿部は黒帯取得に向けても意識が高まっているのかもしれない。


「赤、石川県! 石川陽稜高校、高梨選手!」

「はい!」

「青、栃木県! 県立柏沼高校、川田選手!」

「はあいっ!」


   ~~~選手!~~~


「「「「「 川田先輩、ファイトォォォーーーーーーーーーッ! 」」」」」

「「「「「 がんばりまっしぃーっ、高梨先輩ーーーーーーーっ! 」」」」」

「(菜美も個人形で石川県と当たったけど、アタシもか。さぁて、行くぞーっ!)」


 Eコートでは、川田が石川県の選手と激突。ずっと試合をしたくてたまらなそうだった川田だが、その思いを一気に解放したかのように、ものすごい躍動感溢れる動きで攻め込む。


「たあああああぁぁーっ! たああああーっ!」


   シュタタッ! シュンッ!  シュパパパパパパパァンッ! ズパパァンッ!

   ワアアアアアアアアアアアア  オオオオオオオオオオオオッ


「せいやああああーっ! せあああああっ!」


   パパァンッ  パパァンッ!  スパパァンッ!

   ババババババババチュンッ! パチンパチンパチンッ!


「(な、何てことや! 攻撃当たらんのぉっ?)」

「たあああああああーいっ!」


   ドシュンッ! シュバアッ!  ドバババババッ!


「止め! 青、中段蹴り、技有り!」

「止め! 青、上段突き、有効!」

「止め! 青、中段蹴り、技有り!」

「止め! 青・・・・・・」

「「「「「 川田先輩、ナイス中段でーーーーーすっ! 」」」」」


   ワアアアアアアアアアアアアアアア  ワアアアアアアアアアアアアアアア


「・・・・・・青の、勝ち!」

「やったぁ! うん、アタシなかなか調子いいわ! このまま一気に勝ち上がろうっと!」


 川田は、試合序盤に相手と壮絶な突き技の応酬となったが、朝香並みの受け技をもって全て打ち落とし、相手を寄せ付けなかった。

 終始、攻撃力と防御力のバランスに優れた試合運びで、川田が圧倒。スピードで上回り、次々と技を決めていった。結果、8対0で一回戦を突破。

 川田は笑顔で松島にガッツポーズを見せ、二回戦へと駒を進めた。

 

「しかし、田村はすごいなぁ。団体戦で瀬田谷学堂の水城とあれだけやったあとでも、個人戦を余裕で勝つんだもんなぁ。くそっ、個人形、一回戦抜けたかったなぁー」

「堀庭君も、ほんと、あの形は惜しかったよね。でも、田村君は表情には出さないけどけっこう疲れ

てるかもしれない。それでもああやって勝つから、僕もすごいと思うよ!」

「前ちゃん。尚ちゃんの次の相手、山之手学院の荒木だろ? 確か、尚ちゃんがやりたくなさそうな苦手な相手って言ってたよな? だいじかな?」

「うーん、僕も何とも言えないけど、きっとだいじだよ。あの水城龍馬君とあれだけ戦える底力があるんだもん、田村君なら、きっと!」


 一回戦が終わり、全コート人数が半分に減る。

 そして、二回戦から出場するシード選手が次々と現れた。


   ~~~ 個人組手二回戦を行います! 各コート、選手、整列ッ! ~~~

   ♪ パパパァーン ♪ チャララーン ♪ ジャジャジャァーン ジャンジャン ♪


「さて、個人戦も楽しませてもらおうか。さぁ、誰でもこの俺にかかってくるがいい」

「やっと出番たい! ばってん、俺を相手にびびるやつとやっても面白くなかとばい!」

「とも姉、まい姉。おれは朝香家の長男や。朝香家の誇りを持って戦うかんな!」

「・・・・・・高校最後のインターハイ。私は、私の自由のために、無心で戦う・・・・・・」

「早く戦おうや! うち、もう待ってんの飽きたんやぁ! たくさん暴れさせてーなぁ! あー、待ちくたびれたわぁ! 何やねん、もうーっ!」

「はぁ、待ち時間がなげぇっちゃ! 身体が、おがしぐなっちまったら、嫌だべ!」

「ふふっ。さぁ、お姉、二回戦からうちら出場やね。決勝で、お姉を倒して朝香家へ連れ戻してやるからなぁ? 楽しみやわぁ。お姉を超える瞬間が、ね!」


 水城龍馬を筆頭に、須藤光則、朝香光太郎、朝香朋子、藤崎さつき、岡島玲菜、朝香舞子。名門校の注目選手が続々と各コートに足を降ろした。

 各校の部旗が、ひらりひらりとゆらめく館内。

 各々の闘志と想いを拳に乗せ、試合は早くも二回戦へと進む。


   ワアアアアアアアアアアアアアアア  ワアアアアアアアアアアアアアアア


「「「「「 斉木先輩ーーーーーーーっ! 自分から自分からぁーっ! 」」」」」

「「「「「 おびえんなや斉木ーっ! ファイトだ! 」」」」」

「(な、なんて迫力や・・・・・・。無理無理! これが、絶対女王、朝香朋子・・・・・・・っ!)」


   ・・・・・・キィンッ!   パシャアアアアァァァンッ!


「止め! 赤、上段蹴り、一本! 赤の、勝ち!」


   ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ!


 9対0。まさに、格の違いを見せつけた試合だった。

 朝香は、愛媛県の今針女子商業高校の斉木選手をまったく相手にせず、わずか二十秒で試合を終えた。


「ツアアアァーーーイッ!」


   シュバアッ!  バッチィィンッ!


「止め! 青、中段蹴り、技有り!」


   ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ!


「末永ちゃん、がんばれーっ! ナイス中段ーーーーーっ!」

「続けて、始め!」

「(栃木の末永小笹! 噂には聞いてたけど、こんなデタラメな強さなんて・・・・・・)」

「せやあああーーーっ!」


   シュパパンッ! パパァンッ! パァン!


「くすっ。ツアアアァーーーッ!」


   クルンッ   ヒュラアッ・・・・・・  パッカァァンッ!


「止め! 青、上段蹴り、一本! 青の、勝ち!」


   どよどよどよどよどよどよ  どよどよどよどよどよどよ


「「「「「 (すごい、あの子! 蹴りだけで勝ったよ!) 」」」」」

「ふうっ。あははははっ! やったぁッ! ありがとーございましたっ! くすっ」


 小笹は二回戦で、福島県代表 県立合津女子高校の山越選手に9対1の圧勝。

 独特なステップと体捌きで、突き技を使わずに足技だけで二回戦を勝利した。他県の陣営からは、あちこちからどよめきの声があがっている。


   ・・・・・・ドバシャアアァッッ!  パッカァァンッ!  ズバシャアアァッ!


「止め! 赤、上段蹴り、一本!」

「止め! 赤、上段蹴り、一本!」

「「「「「 ちばりよぉーーーっ! あすかぁーっ! 蹴りを潰すんさぁーっ! 」」」」」


   ワアアアアアアアアアアアアアアアー  ワアアアアアアアアアアアアアアアー


「「「「「 豊美城先輩ファイトーーーーーッ 」」」」」

「(ウフフフゥ! アハハハハァ! 面白くありませんわぁん。アナタ!)」

「(じ、地元の声援もあるんだから、負けられんさぁ! くっ・・・・・・。こ、この蹴りを防げば・・・・・・)」


   ドッスウゥゥッ!


「(うっ・・・・・・。かはっ・・・・・・)」

「止め! 赤、中段突き、有効! 赤の、勝ち!」

「ホーホホホホ! アナタごときが、このワタクシに勝とうなんざ、ありえなくてよん」


 小笹を超える足技を駆使し、変化技で相手を翻弄し惑わすミランダ。地元沖縄の金城東学園の豊美城選手を、嬲るように8対0の完勝で下していた。


   ウオオオオオオオオオオオオッ ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ!

   オオオオオオオオオオオオッ  ザワザワザワザワザワザワザワザワ


「いやぁ、朝香さんも末永さんもすごいなぁ! どのコートも目が離せないよ!」

「男子も迫力あるし強いやつだらけだけどよ、女子もあちこちすげぇ試合だな、悠樹!」

「あ! 井上君! 川田さんがいつの間にか始まってる! Eコート!」

「ほんとか? どこだ真波!? ほんとだ! って・・・・・・やべぇ、真波、負けてんじゃんか! ファイトーっ! 真波ぃーっ!」


   ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ  ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ


「止め! 赤、上段突き、有効!」

「(くっそぉ、さすが名門、宮崎第二! なんて速い突き込み! アタシより速い!)」

「(どげんしたと? 真っ正面から私と打ち合うなんて、愚かな選択たい!)」

「続けて、始め!」

「「「「「 川田先輩! ファイトーーーーーっ! 」」」」」

「「「「「 濱野ぉーーーーっ! 勝たなぁいけんとよーっ! 押し切れぇ! 」」」」」

「たあああああああーいっ! たあああああぁぁーっ!」


   シュパパンッ! シュバッ シュバババババババババババァッ!


 川田は九州の名門 宮崎第二学園の濱野選手と対戦中。現在、スコアは7対5。残り時間はもう七秒。このままでは、川田は負けてしまう。


「川田ファイトだ! 相手は直線の選手だ! 狙え! 躱せーっ!」

「川田さん、真っ正面はだめだよーっ! 相手のが手数もスピードも上だよ!」

「がんばれ川ちゃん! 相手の突っ込みを外せーーーっ!」

「「「「「 川田先輩! 頑張ってぇーーーーーーーっ! 」」」」」

「っしゃああぁーーーーいっ!」


   キュンッ!  ダシュッ!   ドドドドドドドドドッ!


「(中村、了解っ! アタシだって・・・・・・こんなとこで負けらんないよぉっ!)」


   サササッ!   シュバアッ   ドカアアッ!


「(うぐっ! よ、横からっ!)」


 ものすごい手数と突進力の相手に対し、川田は振りかかる連突きをギリギリで横跳びして左へ躱し、相手の右脇腹へ強烈な足刀蹴りを見舞った。


「止め! 青、中段蹴り、技有り!」


   ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ  オオオオオオオオオオオオッ


「ナイス中段、川田先輩ーっ! ほら、やったよ敬太! 充! 川田先輩、追いついたよ!」


   ~~~ ピー ピピーッ ~~~


「・・・・・・引き分けっ! 延長戦に入ります!」


 終了ギリギリで追いついた川田。7対7で本戦は終わり、先取り勝負の延長戦へ移行。


「あぁー、うちやま、わたし延長戦見るのいやなんだよー。川田先輩、頑張れ!」

「さよ。たくさんお祈りしよう! 川田せんぱいが、負けるわけないよ! 勝つよ!」

「延長戦。勝負、始め!」

「(え!)」


   ダダダダダダダッ  ダシュンッ!  ドシュウウッ


「っしゃあああぁーーーーっ!」

「(そ、速攻ーっ! そんな! まずいーっ! 動け、アタシの足ーっ!)」

「とああああぁーーいっ!」


   シュバアッ!  シュパアアァァーンッ

   ダアアアンッ  ドッパアァァァァァァンッ!


「(よし!)」

「(あっ!)」


 延長戦開始早々に、相手は開始線から猛ダッシュ。ものすごく低くて遠い距離からの中段逆突きを川田へ放っていた。

 一瞬だけ反応の遅れた川田は、同じく前へ踏み込んで何とか中段逆突きを合わせたが。


「まだ! 主審はなにも言ってないよ。真波ーーっ! まだ! まだだよーっ!」

「気ぃ抜くんじゃねぇーっ、真波! 次! 次を打てぇ!!」


 森畑と井上がEコートに向かって叫ぶ。その声が聞こえた小笹は、自分のいるHコートからEコートへ視線を向け直していた。


「(やった! 私のが速い! もらったとね!)」

「(え? あ! まだ、審判の止めがかかっていない! ・・・・・・こんのぉーっ!)」


   スウイッ  グイッ  スパアッ!   グララッ・・・・・・


「(な、なぁにぃっ!?)」

「とぉあああああーーっ!」


   スパアアァァァァンッ!

   ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ!


「止め! 青、上段突き、有効! 青の、勝ち!」

「「「「「 川田先輩ナイス上段でーーーーーすっ! やったぁぁぁぁぁ! 」」」」」


 川田は、相打ち気味になった中段突きの打ち合いは相手の方が速かったと判断していた。

 しかし、主審は試合を止めていなかった。

 森畑と井上の声に反応した川田は相手よりも一瞬速く引き戻り、その際に前足を引っ張るように払って相手の体勢を崩した。そこへ、至近距離からの上段突きを決め、辛くも勝利。


「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。あ、あっぶなかったぁー・・・・・・。よかった、決まって!」


 メンホーをはずし、汗を袖で拭う川田。ギリギリの勝負だったが、何とか二回戦を突破。


「いやー、ヒヤヒヤしたな。川田は今、やられててもおかしくなかったタイミングだ。だが、あの中段逆突きから戻る際の足払いは見事だった! 咄嗟の判断が勝敗を分けたな」

「陽二、俺はもう心臓止まりそうだったぞ! 真波のやつ、あっぶねぇ試合しやがって! まったくよぉ! 真波がこんなとこで負けたら俺、やってらんねぇよー」

「相手も強敵だったね。川田さんのいる山は、Eコートの中でも強豪が固まっているんだね! まだまだ三回戦も、侮れないだろうしなぁ・・・・・・」


 川田は、松島となにか言葉を交わし、観客席の方へ苦笑いをして手を振っていた。


   ワアアアアアアアアアアアアアアアー ワアアアアアアアアアアアアアアアー

   オオオオオオオオオオオオッ ザワザワザワザワザワザワザワザワ


「前原先輩! 川田先輩の試合でほっとしていられません! Aコートでは田村先輩が!」

「え! ほんとだ。いつの間に! ・・・・・・うわーっ、まだ2対2!」

「長谷川! 田村が始まってからどれくらい経っているんだ? おれたちはEコートを見ていたからわからなかったんだが」

「えっと、あと一分くらいっす! 序盤はお互いに探り合いみたいな感じでしたから・・・・・・」


   ワアアアアアアアアアアアアアアアー  オオオオオオオオオオオオッ


「(くっそぉー・・・・・・荒木、強ぇ! こいつの待ち拳をどう崩すかねぇ・・・・・・)」

「(瀬田谷の水城と互角じゃねーんかよ? スピード、こんなもんかこいつ?)」


 Aコート、田村は神奈川県代表 山之手学院高校の荒木選手と対戦中。

 待ち拳型の相手に苦戦している田村。やはり、団体戦で消耗した分のスタミナ差が出ているのだろうか。


「うらあああっしゃぁ!」


   ヒュンッ  ズバァン! ズバババンッ!


「(くっそぉ! 速えワンツーだ! ・・・・・・だけど、カウンターなら俺もできるからねぇー!)」

「ああああぁーーいっ!」


   パンッ  ズドオンッ!


「止め! 青、中段突き、有効!」


   オオオオオオオオオオオオッ  ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ!


「ナイス中段だ田村! それでいいーっ! 手堅くリードするんだ!」

「田村ファイトーッ! カウンター、いいよぉ! 手堅く重ねてーっ!」


 待ち拳を信条とする中村と森畑が、一斉に田村へ声援を送る。その声が届いたようで、田村は栃木陣営の方へ視線を向けずに拳を握って、しっかりと応えた。


「続けて、始め!」

「あああああぁーーーーいっ!」

「うらあああああああぁっしゃぁ!」


   ヒュバッ!  パパァンッ!  シュンッ・・・・・・ バシャアアァァァッ!

   ズドオンッ! パパァンッ!  スパパァンッ!  バッチインッ!


 両者譲らぬ打撃戦。田村が攻めれば、相手はカウンターで返す。相手が攻めてくれば、田村はそれを捌いて後の先で返す。お互いに技が決まらないまま、時間は刻々と過ぎていった。


   ~~~ ピー ピピーッ ~~~


「止め! 3対2。青の、勝ち!」


   ワアアアアアアアアアアアアアアア  ワアアアアアアアアアアアアアアア


「ふぅいぃー・・・・・・。やばかったぁー。やっぱり荒木は苦手だねぇー」

「ちくしょう。追いつけなかったぜ。やるじゃん。水城龍馬と互角なだけあるぜ」


 勝ち名乗りを受けた田村は呼吸を整え、相手の荒木選手とがっしり握手してコートから出た。

 監督席にいる新井と、苦笑いしながら何か話しているようだ。

 個人組手はどこもまさに死闘の連続。全国選りすぐりの拳士達の闘志は、さらに燃え上がり、会場をものすごい熱気で包んでゆく。

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