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青春空手道部物語 ~悠久の拳~ 第2部  作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
第3章 開幕   美ら海沖縄総体!  激闘! 熱闘! インターハイ!
40/106

2-40、これが主将の、田村尚久!

「「「「「 (なにわが、栃木に手こずってるよ! 栃木、なかなかやるじゃん!) 」」」」」

「「「「「 (柏沼高校? 県立? わっからんわぁ! でも、実力あるんちゃう?) 」」」」」

「「「「「 (西の強豪じゃろぉ、なにわ樫原。相手の実績は聞いたことないぜよ!) 」」」」」


   がやがやがや・・・・・・   がやがやがや・・・・・・  がやがやがや・・・・・・


 井上の猛反撃で、Aコートを見つめる観衆がどよめく。

 インターハイを見なれた観衆にとっては、西の強豪であるなにわ樫原が、無名の柏沼高校を相手に楽な試合展開をしていないのが、けっこう意外なことらしい。


「やっかましいわ! こっからや! ええかげんにせぇよ! 周りはだまっとれぇーっ!」

「猪渕、熱くなんなや! しっかし、猪渕や井ノ原にここまで食いつくやつらだとは、誰も思わへんて! あの井上っての、どーやら、井ノ原をしばき倒す気の組手みたいやで?」

「せや! 日新学院が、あの柏沼っちゅうやつらに負けたんやろ? なら、単純に、それより強いってだけやんか! 雑魚ちゃうねん、きっと! あいつら、なかなかやるわ!」

「谷山ぁ。辰吉ぃ。俺ら樫原は、大阪一、いや、関西一の名門なんやでっ! 柏沼高校て、正直、どんな学校やねん! よぉわからんわ! 日新ならいざ知らず、そんなイモみたいなとこにウチが手こずって、いい気するわけないやろが! 圧勝せなあかんやろ!」

「ま、井ノ原に追いついてきたあいつ、びびらずによぉやるわ! あの学校、雑魚やないで!」


 わいわいと何か騒がしい、なにわ樫原のメンバー。

 それと同時に、柏沼メンバーも似たように騒がしくなっていた。


「い、井上君が、なんか覚醒した・・・・・・よね?」

「なにわ樫原はさすがに強敵だ。だが、井上は田村の一言で、何か発想を変えたに違いない。さっきまでと、踏み込む速度も距離感も、別物だ」

「しかし、さすがに西日本の強豪校の名は伊達じゃないな。尚ちゃん、さっき泰ちゃんに言ったアドバイス、あれ、何を狙ったんだい?」

「んー? 別にぃ。ただ、井上がモヤモヤして、無駄に中途半端な手数を出してたからさぁ、それなら逆に、思いっきり一発に賭けさせれば迷いも吹っ飛ぶかなぁって。ほら、東恩納さんが言ってた、薩摩坐元流って剣術の理念が、空手の一撃必殺の考え方に影響したっていう、あれだよ。変に手数出すなら、確実にぶっ飛ばす一発のほうが、怖さもあるよねぇ」


   がやがやがやがや  ざわざわざわざわ


「(なるほどな・・・・・・。俺、何だかんだで意識が退き気味だったのかもな。尚久のおかげで、もう、迷わずに突っ込めるぜ。そのほうが、なんか、技に伸びが出てる気がする!)」

「続けて、始め!」

「つおあああっ!」


   タァン!  ススススッ  ススススッ   スススーッ


 井上はこれまでのステップから、滑らかな摺り足による動きになった。

 リズムはさっきまでと変わらないが、ステップのような動きではない分、相手に初動が読まれにくい。


「(なめんなぁボケェ! なにわ樫原の意地、思い知れや! 調子に・・・・・・乗んなやぁ!)」


   グバアッ!   ドバシャアアンッ!


「(ぐあ・・・・・・っ!)」

「止め! 赤、上段突き、有効!」


 先鋒の猪渕もそうだったが、なにわ樫原の足腰、特にダッシュ力の強さは尋常じゃない。

 あの鍛え抜かれたふくらはぎと太腿は、一瞬で間を詰めて飛び込んでゆくための脚力を生み出している。それはまるで、第三の武器と言ってもいいだろう。


「続けて、始め!」


   シュンッ!  ドスウウウンッ!


「(く・・・・・・くそったらぁっ! ホンマしつっこいわ!)」

「止め! 青、中段蹴り、技有り!」


   ワアアアアアアアアッ  ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ!


「(なめんなよ、そっちこそ! 柏沼高校に井上ありと教えてやんぜ!)」


 速攻の中段回し蹴り一閃。相手の後ろ足を踏みつけるかのように、井上は深く踏み込んで相手の脇腹を蹴り抜いた。


   ~~~ ピーッ ピピーッ ~~~


「・・・・・・引き分けっ!」


 なんと、次鋒戦も6対6の引き分け。これで残りの中堅戦から大将戦まで、二勝した方が三回戦へ進むこととなる。


「はぁ・・・・・・。なんとか追いついてやったぜ・・・・・・。強かったぁ・・・・・・」

「なんちゅう意地や! ・・・・・・ここまで食らいついてきたやつ、初めてや・・・・・・」


   すたすた  すたすた   がしっ   ぺこり


 井上も相手の井ノ原も、お互いに歩み寄って無言で握手し、それぞれの仲間のもとへ戻っていった。

 この試合は、井上が新たな組手の境地を開墾した一戦だったように誰もが思った。


「うぉーっ! 井上も引き分けで繋いだよ! まだ、黒星も白星もないのが、見ててすっごい緊張するなぁ! 次は田村か! がんばれーっ! アタシらここにいるよーっ!」

「相手のなにわ樫原高校も、全国レベルでも相当なもんだけど、ちゃんと真っ向から戦って、実力拮抗してるよね! もう、私らも、全国の強豪と戦えるレベルになってたんだね!」

「あ! 川田先輩、森畑先輩! 田村先輩がスタンバイしますよ! ファイトーっ!」


 田村がゆっくりと立ち上がり、井上の掌に拳をぱちんと当ててタッチした。

 井上はガッツポーズをして、前原の胸元を拳サポーターで叩いて笑っている。


   ぐいっ  びびーっ  かぽん

   びびーっ びっ  ぎゅっ  パァン!


 メンホーを装着した田村は、軽くあくびをして、いつもとまったく変わらないような感じだ。

 ものすごくリラックスしている。何故だろう。


「さーて、いっちょ俺も戦ってこようかねぇー。なにわ樫原、なっかなか面白そうな相手だしねぇ」

「た、田村君!? 面白そうなんてレベルじゃないよ! 相手はかなり手強いから! 気をつけて!?」

「尚久。相手の中堅はお前と同じような体型だけど、睨み方がすげぇ! 油断すんなよ!」

「田村。そこまで余裕なのは、何か秘策があるんだな? ま、お前ならおれは安心していられるが、あの名門相手にどんな組手で戦うのか、見せてもらうぞ!」

「尚ちゃん。どんだけあの大阪相手にやるのか、見せてもらうぜ。だははっ!」

「ま、この中堅戦から、一気に勝てるといいんだけどねぇー。ま、頑張ってくるよ。よし!」


   ~~~選手!~~~


「「「「 ファイトーーーーーっ! 」」」」


   すた  すた  すた  すた  ぺこり

   ずだだだだだだだだだだだっ ぺこっ


 手首をぷらぷらさせながら、のたのたとゆっくり開始線へ立った田村。それと相反するように、猛獣が解き放たれたかのような勢いで駆け込んできた、相手の谷山。

 田村はこの二回戦、ふにゃふにゃしていてとてもやる気が見られない感じ。いったい、どうしたのだろうか。


「な、なんだぁ田村? あいつ、やる気無くない?」

「あんなにふにゃふにゃしてて、相手はすごい気迫なのに・・・・・・だいじかなぁ?」

「ふぅん。・・・・・・くすっ。ふにゃふにゃ、かぁ・・・・・・。まさかねぇッ?」


 川田も森畑も、田村のアンニュイな雰囲気を心配しているが、小笹は別な何かを感じているようだ。

 田村は開始線で、相手とほとんど目も合わせていない。主審が両者の様子を確認し、開始宣告をしようとした瞬間に、きらっとその目が光った。


「勝負! 始め!」

「はあああああいやあああーっ!」


   ギュウッ・・・・・・  ダアアアッ シュタアアンッ!

   シュバアッ!  シュバアッ!  バババババァッ!  ズバンズバン!


 相手はまったく田村の様子を見ることなく、開始線から猛ダッシュ。

 右、左、右とものすごい連打を放ち、キレと回転力のある運足で田村へ襲いかかる。


   すうっ・・・・・・   ふらあっ


「(なぁっ? なんやこいつ! なめくさった動きしよって!)」


   クルッ  シュバババッ!  バババババッ!   バババババァ!

   ふわん  ぱしんぱしん  くるり   ふわん   ぱぁん   くるり


 しかし、まるで柳に風のごとく、田村は相手の猛攻に対してふにゃふにゃしたまま、ふらりと横へ歩いて躱してしまった。

 相手はすぐさま方向転換し、さらに田村を追い立てる。だが、まるで田村はその攻撃をふわりひらりと躱して、暖簾に腕押し状態。

 ふわりふわりと相手の突きに掌を絡めるようにして、またくるんくるんと相手の攻撃を躱す。

 まるでそれは、猛牛の突進を往なす、スペインの闘牛士のようでもある。


「なんやねんっ! なめとんのかぁーっ! おいぃ、田村尚久! 真面目にやらんかい、あほんだらあっ!」

「猪渕、なんやあの相手は! 組手やる気あるんかいな? だが、谷山の突きがまったく当たらんのがむかつくわぁ! よくあんな、手首だけで谷山の突きを受けきれるわなぁ!」


   シュバアッ!  シュバババッ!  ぱぁん  くるん  ぱぱぁん  くるくるん


「な、なんだぁ田村君!? 今まで、こんな動き見たことないよ!!」

「一回戦とはまるで違う技法で動いてる。だが、あの連撃で攻める相手に対し、まっすぐ退がるのではなく、常に初弾を捌いて受け流している。・・・・・・すごいな、あのレベル相手に」

「(なんっやねん! 受けばかりの臆病モンか? 雑魚やないのはわかるが、攻めんのか?)」


 相手はメンホー越しにも、受け流されてばかりで苛立っているのが分かるくらい表情を歪ませているのだ。

 この攻防がもう一分近く続いている。まだ、田村は受けているばかりで、まったく攻撃していない。


「・・・・・・止めっ!」


 主審が一度、試合を割って止めた。


「青、もっと積極的に。いいね?」


   ぺこり


 主審は田村に「忠告」などのペナルティは与えないが、積極的な動きをするよう促した。

 どうやら田村は、それでも組手スタイルを変えないつもりの表情だが。


「続けて、始め!」


   ワアアアアアアアアッ   ワアアアアアアアアッ


「はあああぁぁいやぁあああっ!」


   ダシュンッ!  ドドドッドドッ! バババババッ!


「(さぁて・・・・・・。そろそろ、やってみるかなぁー。やれやれ、元気だねぇー、この相手)」


   パァンッ! シュンッ!  グイッ パシイ  スパアアンッ!  ダダァン・・・・・・


「(・・・・・・うおおっ?)」

「あああぁーいっ!」


   シュバッ   バシイイイイッ!


「止め! 青、中段突き、一本!」


   ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ  ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ


「(ふいー。ま、そんながむしゃらに来んなよぉ。こーなっちまうぞぉ?)」

「(な、何されたんやオレ? 今、こいつ、何を仕掛けよったんや?)」

「な、なんやぁ! 井ノ原、おい、あいつ今何しよったんや! 谷山がすっ転がったで!」

「わ、わからへん! 一瞬で・・・・・・あの谷山を、転がしよったわ・・・・・・。は、速くてわからへんかったわ」


 猛連撃を幾度も仕掛けてくる相手に、田村はカウンターを合わせるかのようなタイミングで前に出ながら突きを受け払い、密着するまで踏み込んだ。そして、相手の肩口と内腿に一瞬で重心を乗せて真下に崩し落とした。

 一瞬で倒れた相手の背中へ、田村は軽く突きを決め、余裕の表情で残心を取っている。


「続けて、始め!」

「(くっ・・・・・・。こいつ、もしや崩し技使いか? だったら、こいつに対してヘタに突っ込むのは、アホってもんやな・・・・・・)」

「(にやっ・・・・・・)」


   シュンッ・・・・・・   タタァンッ・・・・・・


「(う、うおあっ! ・・・・・・いきなり目の前に!)」

「あああぁーいっ!」


   バシイイイイッ  ドカアアアッ!


「止め! 青、上段突き、有効!」


   ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ!


「す、すごいな田村! なんか、あの樫原相手にものすごい貫禄の組手だよ! やるねぇ! アタシ、田村のあんな組手見たことないよ。ものすごい風格を感じる!」

「相手の中堅もかなり強いんだろうけどね! でも、田村が無駄のない動きと、まったく動じない雰囲気だから、余計にこっちが強く見えるね!」


   ザワザワザワザワザワザワザワザワ  ザワザワザワザワザワザワザワザワ


   がやがやがや  がやがやがや  がやがやがや・・・・・・


「なっ、何しとんねん谷山! そいつ、柏沼の中でもレベルが一つ上や! ハンパな技で行くな!」

「猪渕。お前があの田村ってのとやったら、どうやったんや? あれは、強いわ・・・・・・」

「どうって、しばき倒すだけやろ! 瀬田谷の水城よりは、絶対格下や! 俺となら、おもろい試合ができるかもしれへん。だが、まぁ・・・・・・辰吉が言うとおり、強いわな・・・・・・」


 猪渕は両拳を床にばしんと打ち据え、谷山の背中越しに田村を睨むように見ている。


「続けて、始め!」

「(突きであかんのなら、蹴りで距離取ってくしかないやろ!)」

「はあああぁぁいやぁっ!」


   シュタンシュタン・・・・・・ ダシュンッ!  シュババババアアァッ!

   ぱぁん   くいっ   ズシャアッ・・・・・・


「(うおおお?)」


 相手の強烈な中段前蹴りを、田村は掌で掬い上げるようにして持ち上げた。それによって、相手はそのまま体勢を崩して転がってしまった。


「あああぁーいっ!」


   パッカァァンッ!


「止め! 青、上段蹴り、一本!」


   ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ!


「「「「「 田村先輩ーーーーーーーっ! ナイス一本でーーーーーすっ! 」」」」」

「つ、強ーっ! なんか田村君、ものすごく組手が進化してる!」

「あっけなく、7対0だぞ! どーなってんだよ、おい、尚久ぁ! いいぞぉーっ!」


 前原たちも、まさか田村がここまで相手を圧倒するとは思いもしなかったのだろう。

 相手が動かなければ、滑るような足捌きとダッシュ力をうまく組み合わせた踏み込みで一気に自分から取りに出る。

 相手が仕掛けてくれば、それを流れるように受け流し、一気に崩して一発で決める。

 まさに今の田村は、スピード感溢れる競技の組手に、伝統的な各流派の技が融合したような、何とも言えない渋さと強さを秘めた組手だ。この沖縄で一週間過ごしていたうちに、いつの間にか、ものすごく独自の進化を遂げていたようだ。


「(まーだ、納得いく動きじゃないんだよねぇ。ま、いいかー)」


 開始線で片手を腰に当て、指で頭を搔く田村。まだ、全力は見せていないらしい。


「続けて、始め!」

「(ふざけんなや! このままやられてたまるかいなアホォ! くそったらぁっ!)」


   ダシュンッ  パパパァン!


「(あらっ・・・・・・)」

「止め! 赤、上段突き、有効!」

「「「「「 ナイス上段やぁ! 谷山せんぱーーーいっ! 」」」」」


 何とか一矢報いたように有効を取り返した相手の谷山。

 田村は開始線で、下を見たまま静かに何か考えているようだ。それがまた、何とも言えない雰囲気を醸し出している。


「続けて、始め!」

「はあああぁぁいやっ!」


   ダダダダァッ  ダシュンッ!   バババババッ・・・・・・


「(・・・・・・このやろうめ! 1ポイント返したくらいで、うるっせぇよぉ! 寝てろ!)」


   シュンッ   ぐいっ   パチィッ    バタァァァァンッ!


「おあああぁーいっ!」


   シュバアッ   ズドオンッ!


「(うごっ・・・・・・。な、なんちゅうやつや・・・・・・)」

「止め! 青、中段突き、一本! 青の、勝ち!」


   ワアアアアアアアアアアアアッ  ワアアアアアアアアアアアアッ


「「「 やったぁーっ! 田村先輩ーーーーーーーっ! 」」」

「9対1の圧勝か。すっごいね田村! 今のも、無駄のない華麗な技だった!」

「くすっ。やるねぇーッ、田村センパイ! 中村センパイと組んでワタシ一人と組手やった時に、言ってたしねぇ! あははっ! 和合流の『転体』と糸恩流の『転位』をブレンドした体捌きをやりたい、ってさ。どーやら、だいぶ慣れてきたんですねぇーっ」

「あの、夜中のやつか! そういや、あんたに対して、田村と中村で組んでなんか自由に組手やってたよね? その時にヒントを得てたなんてね。アタシも、あんたと砂浜で組手やろうかなー?」

「あははっ! 川田センパイはぁ、沖縄発つ前に美鈴の予約があるじゃないですかぁ。美鈴は、川田センパイがただの競技空手だけじゃないの、見抜いてましたよぉー。だから、手合わせしてみたいんですって。楽しいですよぉ? 美鈴も強いですからねぇッ?」

「沖縄発つ前じゃなくてぇ、アタシ、明日が個人戦なんだけど? それまでにまた、レベル上げたいけどさ。まぁ、今夜は無理か・・・・・・。早く寝たいし」

「ま、帰ったらまた、いろいろ話しましょッ! ワタシも明日、個人戦あるし」


 これで、初めて中堅戦にて白星が一つついた。

 残りの副将戦と大将戦、中村か神長が勝てば、柏沼高校の勝ちだ。

 試合を終えた田村は、爽やかな笑顔で中村と拳を合わせてバトンタッチ。


「前原・・・・・・これ、頼む。眼鏡を、預かっててくれ」


 眼鏡をさっと外して前原へ渡し、前髪を掻き上げて中村がメンホーをかぶる。

 相手の副将も同じくメンホーをかぶり、ものすごい速さで両拳を振って身体を動かしていた。

 なにわ樫原の副将は、中村にどのような組手で仕掛けてくるのだろうか。


「ふん。どんなやつが相手でも、おれは、おれの仕事をするだけさ」


 中村の目が、強くきらりと輝いた。どうなる、副将戦。

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