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青春空手道部物語 ~悠久の拳~ 第2部  作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
第3章 開幕   美ら海沖縄総体!  激闘! 熱闘! インターハイ!
30/106

2-30、競技開始! 激しく飛び散る闘気の火花!

 新井も観客席から公式練習場へ降りてきて、オーダーを決める作戦会議に加わった。


「さて、一回戦は熊本のやつらだねぇ。どんなチームかもわかんないけど、オーダーどうしようかねぇー」

「尚ちゃん。ここは、全員実力も上がってることだし、誰をどこに組んでもだいじだと思う。今回は、何が何でも大将戦までやるしなぁ。だははっ! 楽しみになってきた!」

「田村! おれに先鋒やらせてくれないか。まず、一気に相手の先鋒をさくっと斬り伏せて、景気の良いスタートにしたい!」

「そぉかぁ! じゃ、中村先鋒で頼むよ。じゃぁ、これをこーして、あーして・・・・・・」

「いいねいいねー。インターハイでも、みんな元気だね。いいよいいよー。いけるいける!」


 インターハイの記念すべき第一回戦のオーダーが決まった。新井も笑顔で「いけるいける」を繰り返している。

 相手は熊本県立球磨之原高校。いったい、どんな選手がいるチームなのだろうか。


「さぁー、いこうかねぇー! インターハイの第一回戦だ! 気合い入れて、気持ちは楽にだ!」

「「「「「 しゃぁーーーーーーーーっ! 」」」」」

「うん、いいね! アタシらも男子の気合いをもらって、個人戦を頑張ろう!」

「いよいよだね。真波、観客席から応援しよう!」

「あれ? そういえば、小笹は?」

「いつの間にか、いないね? トイレにでも行ってるんじゃない?」

「そっか。ま、いいや。行こう、菜美!」


 男子団体組手、女子団体組手、ともに一回戦へ出場する学校はすべて準備が整った。

 係員がそれぞれのコートまで案内するためのスタンバイをしており、館内にアナウンスが入るのを待っている。

 柏沼メンバーの一回戦は、青側。

 全員、青い帯へ締め直し、自分の黒帯ではない真新しい青帯を腰に巻く。

 その横には、相手校の選手が赤い帯を揃え、目を血走らせて並んでいる。

 みな、身長が柏沼メンバーよりも大きい。体格だけでは遙かにスペックを上回るチームのようだ。


   ~~~ ただ今より! 団体組手一回戦を行います! 各コート、選手、入場! ~~~


 会場内にアナウンスが入り、いよいよ入場する。案内係の手が挙がった。


   ♪ダダッダァーン♪ ダダーン♪ ジャジャジャァーン♪ ジャンジャンジャン♪♪


 選手待機所から各コートへ案内される選手たちが続々と廊下を進み、メインアリーナへ入ってゆく。

 前原は思った。「廊下がやけに長く感じる。メインアリーナはいつもと変わらない試合場のはずなのに」と。


「す、すげぇ! 入場曲までつくのか、インターハイって! かっけぇな!」

「これは・・・・・・驚きだな。ここに来るまで知らなかったぞ、おれも」

「全国の演出はすごいな・・・・・・。まるでプロスポーツみたいな演出じゃないか、一回戦から」


 井上、中村、神長もこれにはびっくり。力強い入場曲が響き、それに合わせての入場。


「すごいねみんな! こんな舞台でも、まぁ、普通に頑張ろうね!」

「ま、だいじだ。コートに入れば、ただの試合だきっと。みんな、普通にやろうぜ!」


 一回戦は、Aコート最後の試合だ。

 先導する係員に続き、どんどん選手が入場してゆく。そしていよいよ柏沼メンバーは、試合が繰り広げられるメインアリーナの光の中へ。


   わぁぁぁああああーーーーーーっ!  ううぅわああぁぁぁーーーーっ!!


「「「「「 けっぱれ北海道ーっ! ファイトーッ! 」」」」」「「「「「 頑張れ千葉ぁ! 」」」」」

「「「「「 やっちまえやぁ! 必勝じゃぁーっ 」」」」」「「「「「 いけやぁ! ファイトォ! 」」」」」


   ワアアアアアアアーッ  ウワアアアアアアアーーッ


「「「「「 島根ぇーっ 」」」」」「「「「「 沖縄っ! ファイトーッ! 」」」」」 

「「「「「 鹿児島ァ! 」」」」」「「「「「 勝たなあかんでぇーっ! いてまえや! 」」」」」

「「「「「 いわてーっ! 」」」」」「「「「「 あーきーたっ! あーきーたっ! 」」」」」

「「「「「 京都のみやびな空手を見せるんやでぇ! ファイトやぁーーーーっ! 」」」」」

「「「「「 一気に優勝まで突っ走れ宮崎ぃ! 」」」」」「「「「「 ファイト富山ぁ 」」」」」


   ウワアアアアアアアーッ!  ワァァァァァーーーーーーッ!!


「「「「「 兵庫ファイトやぁ! 」」」」」「「「「「 ファァイトォーッ! とっとりぃぃぃーっ! 」」」」」 「「「「「 徳島ぁーっ! 」」」」」

「「「「「 青森ファイト! 青森ぃーっ! 」」」」」 「「「「「 わっかやまっ! わっかやまっ! 」」」」」


   ずああああああああああっ  どどどおおおおおおおおっ!

 

「な、なんっだよこれは!? す、すげぇ歓声じゃんか! 俺、おっかなくなってきた。ぶるぶる・・・・・・」

「まるで地鳴りだ! ・・・・・・歓声だけで、おれの身体がビリビリする勢い! こ、これがインターハイなのか!」

「ま、前ちゃん! だいじか? インターハイって、こんなに声援すごいのか! やばいな」

「ぼ、僕もここまでのすごい声援は初めてだよ。す、すごすぎる! 戦場みたいだね・・・・・・」

「はぁーっ、すっごいねぇ。ま、これくらいじゃなきゃ、全国大会って感じしないねぇ! よぉーし!」


「「「「「 がんばりゃーっ愛知ぃ! 」」」」」「「「「「 根性見せぇよーっ! 福岡ぁ! 」」」」」


    ワアアアアアアア  ウワアアアアアーーッ


「「「「「 がんばっぺ茨城! 」」」」」「「「「「 香川ファイトー! 一発ファイトー! 」」」」」

「「「「「 しばいたれやぁ! 大阪なめんやないでぇーっ! やったれやぁ! 」」」」」

「「「「「 高知県っ 勝たなあかんぜよぉっ! 」」」」」「「「「「 柏沼ぁ! 等星ぇ! 栃木ファイトーッ 」」」」」


     オオアアアアアアアアアーッ ワァァァァァッ


「「「「「 あおもり魂ぃーっ! 」」」」」「「「「「 イケイケファイトー! 」」」」」

「「「「「 長崎がんばりぃよぉーっ! 」」」」」「「「「「 がんばりんさぁい広島県ーっ! 」」」」」

「「「「「 なーがーのぉーっ! 一気にいけぇ! 」」」」」「「「「「 ファイト山口ぃ! 」」」」」

「「「「「 ファイトォーッ! 宮城ぃーっ! 」」」」」「「「「「 ちばりよーっ! 沖縄ーっ! 」」」」」

「「「「「 福井ファイトォーッ! 」」」」」「「「「「 岡山ぁ! がんばんねぇ! 」」」」」

「「「「「 ファイトォ岐阜! きばりっ! 」」」」」「「「「「 大分県ファイト! やっちゃりぃ! 」」」」」「「「「「 ちばりよーっ! 島んちゅぬ魂ぃ見せるさぁーっ! 」」」」」


   ううわぁぁぁああああーーーーーーっ  わあああああああああああああっ!


 あまりにも凄い大歓声。ゲリラ豪雨の大雨よりも凄まじい、熱気溢れる声援の大嵐。

 柏沼メンバー五人は、その凄まじすぎる大歓声の渦に巻き込まれ、勢いで意識を飛ばされそうになるほど衝撃を受けていた。

 田村曰く「こんな大歓声はプロ野球の球場か、プロサッカーの会場くらいしか知らない」だそうだ。


   ワアアアアアアアアアアアアアア ウワアアアアアアアアアアアアア

   オオオオオオオオオオオオオオ ウワアアアアアアアアアアアアアア


「とんっでもない歓声だなぁ! 菜美、アタシらの声、田村らや等星に届いたかな?」

「わかんない! でも、きっと届いてるはず! しかし、すごい歓声! 中学の比じゃない!」


   ワアアアアアアアアアアアアアア ウワアアアアアアアアアアアアア


「川田先輩、まるでこれ、お祭り騒ぎじゃないですかぁ! 声が聞こえないー」

「きょうこぉ! もっと大きな声で言わねーと、先輩に聞こえないよー」

「みつるー、何言ってるか、もっとでかい声で恭子に言わないとわかんないよ」


   ウワアアアアアアアアアアアアアア ワアアアアアアアアアアアアアアア


 観客席の栃木陣営には、川田、森畑、阿部に長谷川に黒川、大南と内山。そして松島と堀内も見守っている。その横では日新学院のメンバー、等星女子高のレギュラー外メンバー、鶉山高校の堀庭。早川先生や末永もいるが、小笹本人はさっきから姿が見当たらない。


「こ、こんな中で、うちの小笹は試合するんだぁ・・・・・・。大丈夫かしら・・・・・・」

「末永先生、大丈夫ですよ。小笹ちゃんは、うちのメンバーと一緒で、本番強いでしょうし!」

「それにしても、小笹、どこいっちゃったのかしら? もう、団体戦、始まるのに・・・・・・」


   ウワアアアアアアアアアアアアアア ワアアアアアアアアアアアアアアア


 AからHコートまで、全ての学校が入場し終えた。柏沼メンバーはAコート。

 等星女子は二回戦から出場のため、Hコートの後ろで控える。

 赤帯と青帯をした選手たちが一斉に立ち並び、競技開始を静かに待つ。

 観客席は、ますますボルテージが上がり、熱い声援がさらに増えてゆく。


   ~~~ 競技を開始します! 選手! 正面にぃ、礼っ! お互いにぃ、礼っ! ~~~


「「「「「 おねがいしまぁーーーーっすっ! 」」」」」

「「「「「 しゃぁーーーーーっ! うえりゃぁっ! 」」」」」

「「「「「 ファイトォォォォーーーーーーーッ! ファイトォォーッ! 」」」」」


   ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ  ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ


 ついに、インターハイの一日目、団体組手競技が始まった。

 八つのコートから一斉に気迫の漲った声が響き渡る。観客席の大歓声とともに、シンクロしたかのように各コートから同じような声が四方向サラウンドで聞こえてくる。


「「「「「 赤、~~県 ~~~高等学校  青、~~県 ~~~高等学校 」」」」」

「「「「「 赤、先鋒 ~~選手! 青、先鋒 ~~選手! 」」」」」

「「「「「 うぁいっ!   うおっす! 」」」」」

「「「「「 選手! 」」」」」

「「「「「 ~~~高校ファイトォーーーーッ! ~~センパァーイッ! 」」」」」

「「「「「 しゃあーーーーーっ! ファイトォォォォォォ! ファイトォーッ! 」」」」」

「・・・・・・ついに、始まったか・・・・・・。・・・・・・どこがまず勝ち上がるのか」

「二斗先輩。柏沼のコートは、瀬田谷に東北商大、おかやま白陽になにわ樫原と、だーいぶ超強豪揃いです。やべぇんじゃないっすか?」

「畝松。・・・・・・・・・・・・インターハイに楽な山など無い。・・・・・・それが、全国の厳しさだ・・・・・・」


 日新学院勢も、栃木陣営から柏沼高校と等星女子の団体戦を見守る。

 特に、個人戦に出場する二斗には、団体組手で様々な選手のクセを見ることができる時間なのかもしれない。


「す、すごい迫力だ。これがインターハイ。柏沼高校のやつら、だいじかなぁ、こんな中に放り込まれて・・・・・・。どいつもこいつも、強いのしかいないしなぁ」


 堀庭はこの異常なまでの熱気と迫力に慣れていないのか、観客席でちぢこまって祈っている。


「田村たちはまだ先だね。等星もシードだから、まだやらないね。それまでは、いろんな学校を観察しよう! 恭子! 長谷川! 黒川! 紗代も真衣も、よーく見て勉強だよ」

「真波ー。小笹がいないんだけど、ホントどこいっちゃったんだろう?」

「はぁ? まーた、どこで迷子になってんだか小笹は。アタシも知らないよ? どこ行ったんだろうね?」


   ワアアアアアアアアアアアアアアア ワアアアアアアアアアアアアアアア

   ザワザワザワザワ ザワザワザワザワ ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ


「うおああああぁーぃっ!」


   ズドオンッ!  ドパアアアァンッ!  ドガガガガァッ!  バチバチインッ!


「シェイリャアアアアッ!」


   パッカァァァァンッ!  ドガアアッ!  パパパパパァンッ!  ズバアンッ!

   ワアアアアアアーッ ワアアアアアアーッ


「とぉうああああああっ!」

「うらああああぁぁっ!」


   ズガガガガガガッ! ガシインッ!  バッシインッ!  ズバババァンッ!


「止め! 赤、中段突き、有効っ!」

「止め! 青、上段突き、有効っ!」

「相打ち! とりませんっ!」

「「 やあああああーーーーっ! 」」


   バッチイイインッ! ババババッ!  ドオンッ! ダダダァンッ!


「「「「「 ナイス中段ーっ! ナーイス中段っ! 」」」」」

「「「「「 ナイス一本やぁーーーっ! もう一本! もう一本! 」」」」」

「「「「「 おらぁぁっ! いかんかいーっ! 取り返せぇやぁ! 」」」」」


   ドガアンドガアンッ!  ドババババババババババッ! バッチイイインッ!

   ヒュラアッ バシイインッ!  ドッガァ!  バッチンバッチン! パパパァン!

   ワアアアアアアアアアアアアアアア ワアアアアアアーッ


 AからHまでの八面全てで、初っぱなからハイレベルな激闘が繰り広げられている。

 どの試合を見ても、春季大会の頃の柏沼メンバーではあっけなく秒殺で蹴散らされてしまうほどの強さだ。

 攻撃の打撃音や踏み込みのリズム、全体的なスピード感や気迫、声援、全てにおいて、桁違いの白熱した攻防を繰り広げる選手ばかり。

 前原や井上は、改めて思った。「とんでもない場に放り出されたのかもしれない」と。

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