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青春空手道部物語 ~悠久の拳~ 第2部  作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
第3章 開幕   美ら海沖縄総体!  激闘! 熱闘! インターハイ!
28/106

2-28、栃木県選手団、結成!!

   わあわあわあわあ どよどよどよどよ わああわああわああ

   がやがや どよどよ  ざわざわ わいわいわい

   がやがやざわざわ わいわいわいわいがやがやがやがやがや

   がやがやざわざわ わいわいわいわいがやがやがやがやがや

   ざわざわ ざわざわ  わいわい わいわい


「す、すっごい人数ですねぇ! 前原先輩、こんな人数を相手に試合するんですか!」

「いやいや、全員相手するわけじゃないってば黒川君。でも、確かにすごい人数だなぁー」


 招集した選手は、ざっと見ても軽く一千人は超えている。いや、一千二百はいるだろうか。

 入場順に各校が都道府県別に並ぶ。入場順は南から北に並んでゆくが、今回、沖縄県は開催地であるため、北海道選手団の次にラストで入場する。


   ざわざわ ざわざわ  わいわい わいわい

   ざわざわ ざわざわ  わいわい わいわい

   がやがやざわざわ わいわいわいわいがやがやがやがやがや


「はーっ! こぉんなに全国に空手道部があるのねぇーッ! ワタシ、ここまでの人数は初めてだぁー。あ! 美鈴があそこにいる! おーいおぉーい! みーすーずー」

「ほら、小笹。アタシらの後ろにちゃんといなよ? あんま騒ぐな。恥ずかしいからぁ!」

「等星女子、柏沼、海月女学院、鶉山、日新学院、の順か。鹿児島県からスタートだから、だいぶ入場までは時間あるなぁ。尚久さぁ、俺、待つだけで疲れそうだぜ」

「ま、それもインターハイの醍醐味だねぇ。こんだけの人数がいるんだ。入場行進だけでもそりゃ時間もかかるよねぇ」


   わあわあわあわあ どよどよどよどよ わああわああわああ

   がやがやざわざわ わいわいわいわいがやがやがやがやがや

   ざわざわ ざわざわ  わいわい わいわい


 小笹以外はみな、参加する選手以外に自分の学校のメンバーも加えて入場行進する。

 柏沼高校メンバーは、十二名全員で歩く。出場しない後輩達は開会式だけでもメインアリーナに道着で入って、場の雰囲気と臨場感を吸収させることで、意識の成長を促したいという三年生全員の総意だった。


   ~~~ただ今より、全国高等学校総合体育大会 空手道競技の開会式を始めます!~~~


 会場全体へアナウンスが入り、メインアリーナへ続く通路の係員が一斉に手を挙げ、インカムで合図を本部へ送った。

 そして、アリーナの隅で、オーケストラ楽団が一斉に楽器を構えてスタンバイした。


   ~~~♪♪♪♪ パッパー パパラパッパー パパラパーパーパーパーパー♪♪

   ~~~♪♪♪♪ パーパパパパーッパパァー ~~~♪♪♪♪ パパパパァーッ

   ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ パッパパァー パパパァー♪

   ~~~♪♪♪♪ パーパパッパッパァー♪ パパパパラッパパラッパー♪


 壮大なファンファーレが響き、アリーナへの扉が開かれ、待機所に眩い光が一気に入ってきた。

 そして、鹿児島県選手団から一斉に一列で入場。いよいよ、インターハイの開会式が始まったのだ。


   ~~~最初は、鹿児島県選手団。鹿児島承西かごしましょうさい高等学校。県立島乃川けんりつしまのがわ高等学校・・・・・・~~~


「 かしらぁぁーーーーっ! みぎぃーーーーっ! 」

「「「「「 ああぁーーーーーいっ! 」」」」」


   ~~~ 福岡県選手団。福岡天満学園ふくおかてんまがくえん高等学校。博多大付属筑西はかただいふぞくちくぜい高等学校・・・・・・~~~


 「 かしらぁーっ! みぎーーっ! 」

 「「「「「 さああぁーーーーいっ! 」」」」」


   ~~~ 岡山県選手団。おかやま白陽はくよう高等学校。県立岡山北陽けんりつおかやまほくよう高等学校・・・・・・~~~


「 かしらぁっ! みぎっ! 」

「「「「「 しぇありゃーっ! 」」」」」


 次々と、全国から選りすぐられた一騎当千のツワモノたちが入場。

 行進をしながら役員や来賓のいる正面ステージを通過する際、主将が声を上げて、それに合わせて部員がみな右向きに敬礼し歩いて行く。これをやる学校とやらない学校もあるが、田村と中村の提案で柏沼メンバーも一斉に敬礼して気合いを高めようと言うことになった。


   ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ 


「田村君。他校の選手がどんどん入場していくね。まだ京都府あたりか。僕たちは、まだまだ先だね」

「ま、そのうち入れるからだいじだ。気長に待ってよう。前原、楽しみだねぇー。燃えるぜ!!」


   ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ 


   ~~~ 京都府選手団。花蝶薫風女子かちょうくんぷうじょし高等学校。橘平安風和たちばなへいあんふうわ高等学校・・・・・・~~~


「 ぜんたーい、かしらぁっ! みぎぃーっ! 」

「「「「「 はぁぁーーーーーいっ! 」」」」」


   ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ 


「朋子! 私たちの最後のインターハイだよ。勝って有終の美を飾ろう! その第一歩だ」

「・・・・・・そうね。・・・・・・等星ここにありとして、終わりにしようか。有華!」


   ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ 


   ~~~ 静岡県選手団。御殿城西ごてんじょうさい高等学校。菊原浜和湖きくはらはまわこ高等学校・・・・・・~~~


「 かしらぁあーーーっ! みぎーーーーいっ! 」

「「「「「 うおりゃ! しぇありゃーっ! 」」」」」


   ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ 


「二斗先輩、そろそろ入りますよ? 瀬田谷のやつらまで来てます」

「・・・・・・そうか、瀬田谷学堂か。国体予選の・・・・・・雪辱を果たさねばな!」


   ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ 


   ~~~ 東京都選手団。瀬田谷学堂せたがやがくどう高等学校。帝東ていとう高等学校・・・・・・~~~


「 全体ぃぃ! かしらぁあーーーっ! みぎいーーーーぃっ! 」

「「「「「 せぇああああーーーーーっ! 」」」」」


   ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ 


「あははっ! お祭りみたいーッ! 童顔な堀庭クンだっけ? あらぁ、緊張してるのぉ?」

「緊張するわけないだろ。楽しみなんだ! てか、末永小笹。俺、君より学年上だからな!?」


   ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ 


「「「「「 さぁ! いよいよ 俺たち / 私たち の出番だっ! 」」」」」


 栃木県のプラカードを持った係員が進み、それに続いて等星女子高のメンバーが胸を張って堂々と入っていった。柏沼メンバーも、等星に続いてついにメインアリーナへ足を踏み入れた。

 すると、一気に全員の目の前は白く輝き眩しくなり、スポットライトが一斉に照らされ、会場全体の熱気と視線が一挙に集中してくる。

 これが、インターハイの会場。これが、インターハイの開会式。

 三年生メンバーはみな、その雰囲気と臨場感を肌で楽しみ、心躍らせていた。


   ~~~続きまして、栃木県選手団。等星女子とうせいじょし高等学校~~~


「(さぁ、みんな。等星女子高の存在感を、全員で示すんだ! いくよ!)」

「 等星ーっ! かしらぁーーーーーっ! 右ぃーーーーっ! 」

「「「「「 ああああぁーーーーいっ! 」」」」」

「(・・・・・・・・・舞子。等星女子高と花蝶薫風女子高、決着をつけようか・・・・・・)」


 主将である崎岡の号令で、等星の一年生がくるりと校名プラカードを本部側へ向け、選手団は一斉に胸に手を当て、敬礼して行進。

 頭の先から足の爪先まで神経が行き届いた、一糸乱れぬ素晴らしい行進だ。きっと、こういうことに等星女子高メンバーは慣れているのだろう。


   ~~~県立柏沼高等学校~~~


「(やっと俺たちがきたねぇ! さぁ、インターハイの舞台だ! みんな、行くぜーっ!)」

「 かしらぁぁーーーーーーーっ! 右ぃーーーーーっ! 」

「「「「「 しゃぁあーーーーーーーーいっ! 」」」」」

「(全国の檜舞台。本当に僕たち、そこを今、歩いているんだ! これがインターハイか!)」

「(まさかあの春先から数ヶ月後、ここに立っているとはな。感動だぜ、尚ちゃん・・・・・・)」

「(全国一を決める舞台に、おれたちが立っている。歩いている。最高だぜ! 最高だ!)」

「(悠樹、尚久、道太郎、陽二、菜美、真波。俺は七人揃って出られて、感動してるぜーっ)」

「(ホントにアタシ、インターハイ選手になったんだなぁ。この明るさ、絶対忘れないよ!)」

「(厳しい予選を勝ち抜いて、この場に今、立ってる。私の最高の檜舞台! 楽しまなくちゃ)」

「(先輩七人が抜けたら、わたしら二年生がメイン。沖縄で、たくさん学んでいかなきゃ!)」

「(こんなすごい開会式だったのか、インターハイ! 自分、たくさん勉強していきます)」

「(先輩が抜けたら、みつると俺しか男子はいない。この大会で、勉強していかなきゃ!)」

「(すごいなぁ。こんなに強い人らがいるんだぁ。わたしも、はやく、代表になりたいなぁ)」

「(プラカード役なんて、すごい役引き受けちゃった。さよみたく、一番後ろがよかったー)」


 主将の田村を筆頭に、メンバーはみなそれぞれの想いを胸に抱き、指先をまっすぐ伸ばして行進。

 そこを歩いているだけで、心躍る気持ちがどんどん強く高まっていくことだろう。

 たくさんのフラッシュが眩く光り、TV中継のカメラが向けられ、メンバーはみな「まるで、有名選手にでもなったかのようだ」という錯覚すら覚えた。

 選手以外では、三年生七人のあとに阿部を先頭とした二年生三人と、その後ろには一年生の大南が続く。同じ一年生の内山は先頭でプラカードを持ち、しっかりと柏沼高校の名称を全国にアピールだ。


   ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ 

   ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ 


 管弦楽団の生演奏はまだまだ続き、柏沼高校の後にも栃木県選手団がさらに続く。

 入場行進だけでも、既に開始から二十分近く経っている。それでもまだ栃木県だ。このあとは茨城県、福島県、宮城県と続いていき、まだまだ選手は入ってくるのだ。


   ~~~海月女学院かいげつじょがくいん高等学校~~~


「(ワタシの故郷でインターハイなんて、ありがとぉ! そしてぇー、燃えるねぇッ!)」

「 かしらぁーーーーー、みぎーーーーッ! ツアアアーイッ! 」


 小笹は一人でプラカードを持ち、颯爽と歩いている。さらに器用なことには、柏沼メンバーと同様の敬礼を、なんと片手で行っていた。

 もう片方の手でプラカードの校名を器用に本部席側に向け、そこを通過するとまた正面向きに直して歩いてゆく小笹。沖縄空手の武器術を応用した器用さなのだろうか。


   ~~~県立鶉山けんりつうずらやま高等学校~~~


「(県立は柏沼と俺のとこだけだ! よぉし、県立の存在感も見せてやる!)」

「 頭ぁ! 右ッ! 」

「「 しゃあーーーっ! 」」


 鶉山高校の堀庭は、プラカードを持った後輩の子とともに、大きな掛け声で敬礼。

 その凛々しさは、二人で行進しているとは思えないほどの精悍さ。

 そして、栃木県選手団の最後は・・・・・・。


   ~~~日新学院にっしんがくいん高等学校~~~


「 にっしぃぃぃん! かしらぁーーーーー、右ーーーーッ 」

「「「「「 うるるおおおおあああぁぁーーーーーーいっ! 」」」」」

「(個人だろうが団体だろうが、インターハイに変わりはねぇ。きっちりと、日新学院の根性を全体に見せつけてやるぜ!)」

「(・・・・・・オレと畝松は、日新学院を背負っている! ・・・・・・全員の思いを受け、勝つ! 今回は団体戦はないが、開会式でわが日新の存在感を見せよう!)」


 主将である二斗の太く逞しい声で、選手以外の行進メンバーも巻き舌のような気合いを入れて敬礼。

 行進に参加しているのは、どうやら、団体組手のメンバーと、このあとを継ぐ二年生メンバーのレギュラー部隊らしい。


   ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ ~~~♪♪♪♪ 


 栃木県選手団の入場が終わり、茨城県選手団のあとは東北地方の選手団が入場し終えた。

 北海道選手団が通過した後は、地元、沖縄県選手団がたくさん入場。

 地元開催のため選手数が多く、二列でとても迫力のある行進だった。美鈴や新城、そして糸城たちも各自の高校のメンバーと行進し、目を輝かせながら堂々としている。地元チームへの声援が、会場内のあちこちから飛び交った。


「「「「「 東恩納ぁーーーーー! ちばりよぉーーーーーーーっ! 」」」」」

「「「「「 うるま中央ーっ! しまんちゅぬたからさぁーーっ! ちばりぃよーっ! 」」」」」

「「「「「 首里琉球学院ちばりよーっ! ちばりぃよぉーーーーっ! 」」」」」


 出場校総数、二百三十一校。

 選手総数、一千二百三十名。

 全都道府県の代表選手が今、この空手発祥の地で勢揃いした。


「選手諸君。拳士は強くあらねばならない。身も心も。そして美しくあってください・・・・・・」


 大会会長からの、深くありがたい話とあいさつ。

 その後は国歌斉唱や高体連の歌斉唱が続き、開会式は進んでゆく。

 戦いを今か今かと待つ選手の闘気は、積乱雲の如くアリーナに沸き上がっていた。


   ~~~選手宣誓。県立糸洲安城けんりついとすあんじょう高等学校 嘉手納時治かでなときはる選手!~~~


「オォッスッ!」


   ~~~同じく、首里琉球学院しゅりりゅうきゅうがくいん高等学校 新城巳波あらしろみなみ選手!~~~


「おすっ!」


 選手宣誓は、地元沖縄県選手団から男女一名ずつ選ばれ、新城が女子代表として宣誓。

 これがまた、凛として、堂々と胸を張り、お手本のような素晴らしさであった。


「「 宣誓っ! 我々っ 選手一同は 日頃の練習の成果を遺憾なく発揮し 空手道発祥の地である この沖縄において 青空届く皆の声 わきでる闘志が夏に燦めく のスローガンのもとに 空手道精神にのっとり 正々堂々 競技することを 誓いますっ! 」」

「県立糸洲安城高等学校 空手道部 主将っ! 嘉手納時治っ!」

「同じく! 首里琉球学院高等学校 空手道部 女子主将っ! 新城巳波っ!」


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   ~~~競技注意事項。大会審判長より、試合の注意事項説明がございます~~~


「本大会は、全空連競技規定、並びに、全国高体連空手道専門部の試合規定申し合わせ事項により競技を行います! なお、団体組手につきましては、五名総試合とします。勝ち星の決着がついても、大将戦まで行います。選手諸君の健闘を、祈りますっ!」


 このインターハイでは、通過してきた県予選大会と違い、団体組手は仮に中堅までどちらかが三勝して勝ち星の決着がついても、残りの副将戦と大将戦も行う規定だ。

 井上がよく言う「俺まで回さないで」という台詞は、今回はルール上無いと言うことだ。


「そういうわけだねぇー、井上。がんばろうぜぇ」

「なんで笑ってんだ尚久! 俺は、このインターハイに関しては、たくさん経験して良い思い出にしてーんだ! だから、俺まで確実に回ってくるのはありがたい!」

「へー。頼もしいじゃん井上! いつもの、ぶるぶるやびびりは、ないね! えらいえらい! アタシはあんたを見直したかもぉー」

「ば、ばっかやろうー。真波まで俺をばかにしやがってー。やってやるぜー、俺は!」


 今回のルールでは、団体組手に出場したメンバーは必ず五人が一度は試合上に立てる。

 しかし、出るだけの「記念大会」にはしたくないから、なるべく多くの勝ち星をあげていきたいところだ。


   ~~~続きまして、連続出場校表彰を行います。まず、十年連続出場校・・・・・・~~~


「へー、インターハイもやっぱりあるんだ。関東大会も同じのあったね。ねぇ真波? 私たちさ、今年からあと九年出ればこれもらえるよね!」

「菜美は呑気だなぁ。アタシら、その頃何歳? でも、後輩たちに頑張って獲ってほしいよね」

「・・・・・・わたし、がんばります! 敬太や充と、来年もインターハイ出なきゃ!」

「あはは! 恭子、その意気! アタシは、恭子がもっと伸びれば、夢じゃないと思うんだー」


 その後、連続出場表彰は、日新学院の二斗が十五年連続出場を代表で受け、三十年連続出場表彰を等星女子の崎岡が代表で受けた。三十年間ずっと途絶えずに出場とは、すごいことだ。


「くすっ。ワタシの海星女学院も、いつか、コレ授与出来たらいいのになぁッ・・・・・・」


 小笹は、そんな二斗と崎岡が持つ表彰状を見て、ぺろりと舌を出している。


   ~~~競技は、午前十時三十分より開始。男女団体組手の三回戦までを行います。~~~


 長い長い開会式が終わり、全員一度、栃木陣営の席に戻った。

 日新学院、等星女子、鶉山。県内大会ではライバルだったこのメンバーと一緒に話しながら席に戻るのが、柏沼メンバーには新鮮な感じだった。


「いっやぁー、緊張しました! インターハイの開会式、わたしも歩いちゃった!」

「みつる! すっごかったなぁ! 俺たちも、インターハイ選手の気分だったよなぁ!」

「いや、敬太さ、先輩方に万が一があったら、また補欠で出るんだから、インターハイ選手でいいんだと思うよ?」

「うちやま! プラカードよかったよ! 先頭だし、おいしかったじゃーん!」

「そういうさよも、柏沼高校選手団のラストを歩くなんて! すごい開会式だったねーっ!」


 二年生も一年生も、開会式だけでも一緒に参加できたことが、ものすごく刺激になったようだ。

 この体験だけでも、かけがえのない貴重な経験値になることだろう。


「・・・・・・田村。・・・・・・オレ達は個人戦だからまだ出番はないが・・・・・・」

「ん? なんだぁ?」

「・・・・・・ウォーミングアップなら・・・・・・つきあってやるぞ?」

「おぉーっ! そぉかぁ! それはありがたいねぇ。二斗とアップじゃ、かなり俺らにもいい練習になるよぉ! いいんかぁ? 個人戦もあるのに?」

「・・・・・・問題ない。・・・・・・必要があれば、呼んでくれ・・・・・・」

「ありがとうな二斗。今大会、栃木パワーをみんなで共有しようかねぇー」


 二斗の思いがけない提案に、さらに便乗する面々が。


「待って! 二斗! 柏沼高校だけとアップなんて、ダメだ。私たちは今回、栃木県選手団だ。だから、なんて言うか、その、私たちも一緒にアップすれば、手っ取り早いだろう!?」

「おい・・・・・・崎岡・・・・・・。素直に言え。・・・・・・みんなで、ウォーミングアップしよう・・・・・・ってな」

「こっ、今回だけだからな! 監督が審判員としていない今回だけ! 田村! 堀庭! 末永小笹! 同じ栃木県チームとして、異論はないな? 我ら等星も、一緒に加わってあげよう!」

「くすっ。日新の主将サンとアップなんて楽しそうだしぃ、いいよぉ?」

「崎岡ぁ、異論なんかあるわけねぇだろぉー? 俺らはむしろ、ありがてぇことだねぇー」

「俺は個人形の出場だけど。身体を温めるには組手の打ち込みもいいからね! よろしく!」

「決まりだな、二斗! 私たち等星女子も、今回だけは男子と一緒にアップは付き合う! よろしく頼む!」

「そうか・・・・・・。では、みんなで・・・・・・公式練習場へ行こう・・・・・・」

「えぇ!? アタシらも、二斗たちと打ち込みやるの? 等星も一緒に?」

「そうだよ川田さん。ここでしかむしろ、このメンバーで一緒になんて、できないかもよ?」

「二斗、でかいんだもん! アタシとどんくらい体格差あると思ってんのよ前原! 届かないじゃん!」

「あははっ! 川田センパイ、こーゆー時しかできない相手だしぃ、楽しんでやりましょぉよぉ! インターハイくらいでしか、ワタシらは握手もできませんしぃ。くすくすっ!」

「じゃ、そういうことで。新井先輩、松島先輩、みんなとアップしに、下行ってきます」

「いいねいいねー。こういうの、いい光景だよー。行っておいでー」

「熱くなりすぎてケガしないようにな。よく身体は動かしてくるといいよ」

「「「「「 はい! 」」」」」


 そうして、柏沼高校メンバー、日新学院メンバー、等星女子メンバー、小笹、堀庭の栃木県メンバーは、全員で公式練習場へと力強い足取りで向かっていった。

 ここに今、栃木県選手団としての熱い絆ががっちりと結ばれたのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あ、熱い!熱い展開だ! 日新や等星と仲間になるとは!
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