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青春空手道部物語 ~悠久の拳~ 第2部  作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
第3章 開幕   美ら海沖縄総体!  激闘! 熱闘! インターハイ!
25/106

2-25、各選手、沖縄上陸!

   ~~~間もなく当機は、沖縄本島上空に入ります。長旅お疲れ様でした~~~


   ザッ  ザッザッザッザッ  ざわざわざわざわ  ざわざわざわざわ


「いいか。ここが決戦の舞台だ。今回、我々は個人戦のみ出場だが、こうしてチーム一丸でこの地へ来られたことに感謝せよ。そして、大いに学ぶんだ。いいな!」

「「「「「 おおーーーすっ! 」」」」」


   ズシャッ   ズシャ  ズシャ  ズシャ


 空港に、大柄な選手と、それに準ずる体格の選手が降り立った。

 かなりの大人数を従えたそのチームは、専用の大型バスに乗り込み、これから高体連指定の宿へ向かうようだ。

 パンチパーマで厳つい風貌をした迫力ある監督が、出場する選手二名に気合いを入れるための言葉をかける。


「いいか二斗にと! 日新学院にっしんがくいんの主将として出る、最後のインターハイだ。俺からは何も言わん。存分に、力を発揮して暴れるがいいっ! 日新学院の全てを背負って、暴れるのだ!」

「・・・・・・はい、畝松うねまつ監督! ・・・・・・そのつもりです!」

「よぉし! その気合いだぁ! 虎次郎とらじろう、お前も二斗の後を継ぐよう、このインターハイでまた大いに成長するがいい! お前の実力なら、形はトップクラスにいけるはずだ!」

「はい! あとは、やるだけです! 見てろよ全国の奴らぁ!」


 男子個人組手、男子個人形の栃木代表選手を要する日新学院、沖縄本島に上陸。

 ついに、インターハイまであと三日を切った。

 柏沼高校メンバーは一週間前から沖縄に来ているが、それもあっという間に数日経ってしまった。

 おそらく今日は、続々とこの沖縄県内の各地に各種目で出場する学校が一堂に会し、とんでもない人口密度になることだろう。

 空手道競技に出場する選手達は、開始まで三日前の今日に現地入りする者がほとんどだ。

 日新学院だけでなく、全国の出場校が一気に集まってくるだろう。

 

「(・・・・・・柏沼高校。お前らも、もう来ているか? ・・・・・・インターハイ、共に同じチームで戦えることを、楽しみにしているぞ)」


   ぶろろろろろぉーーーーーーーーーーっ


 日新学院メンバーを乗せたバスは、沖縄県内でも大きな都市部にあるリゾートホテルへと向かった。

 その同時刻、柏沼高校メンバーと小笹は、宿で遅めの朝食後のひとときを過ごしていた。


「んー、良い陽射しだぁ。アタシ、日焼け止め塗っとかなきゃー」

「ねぇー、川田センパァイ、ワタシにも分けて。日焼け止めないと、ワタシはだめでさぁー」

「なによ小笹。あんた沖縄出身なのに、そんなこと言ってー」

「だってぇ、ダメなもんはダメなんですもん。ねー。分けてー?」

「はいはい、待ってよ。・・・・・・って、菜美? どしたの? 道路の方をじっと見て」

「なんだか今日は、あちこち賑やかじゃない? 車も多いし。私らと同じような年齢層の人たちが乗ったバスをたくさん見るんだよ」


 森畑は、宿の縁側に座って足をぷらぷらさせながら、フクギ並木の向こうに見える道路をずっと眺めている。

 その横へ、田村がパパイヤを頬張りながら腰を下ろす。 


「そりゃ、もう開会三日前だしなぁ。いろんな学校が現地入りしてきてるんだろうねぇー。日新や等星だってたぶん、もう来てるかもしんねーぞぉ」

「田村ー。選手たちがどんどん集まってるってことは、もう、いよいよ本番なのね」

「まぁなー。俺らは、他校よりもかなり現地に馴染ませてもらってっけど、逆に言えば他校は地元でバリバリやってきたままのギラギラ感そのままに乗り込んできてるかもねぇー」

「そういえば、早川先生が言ってたんだけど、堀内先輩や松島先輩も今日の午後には宿に到着するらしいよ」

「おー。そうかー。そんじゃまた、賑やかになるねぇー」


 そこへ、砂浜までの走り込みを終えて戻ってきた中村や神長も話に加わる。前原も、巻藁を突き込んだあとに、話に加わった。


「沖縄で何日も過ごしてると、インターハイが目の前って感じがしない。でも、おれも早めにこの島へ来て、学ぶことがたくさんあったから良かったな。試合にもいろいろ分析して応用し、かなり活かせそうだ」

「インターハイはどんなやつらがいるのか。尚ちゃん、初戦の熊本県の学校もきっと、県立だがなめらんないだろうなぁ。どこも各都道府県のトップが集まってきてるんだしなぁ」

「どこも各都道府県のトップ選手だもんね。僕も、中村君と同じく、インターハイが目の前って気がまーだ実感が沸ききってないんだよー」

「ま、気負わず気にせず、みんな思い切ってやろうやぁー。だいじだ。俺らは、やることやったんだからねぇー」


 パパイヤの種を皿に吹く田村。その後ろから、タンクトップとハーフパンツ姿の井上が現れた。


「尚久! ちょっと、道路んとこまで行ってみようぜ。どんなやつらが通り過ぎていくか、見てやろーじゃんか」

「井上らしからぬ発言だねぇー。ま、いいよー。ちょっくら散歩がてら、行ってみるかねぇー」

「面白そうだな。おれも行くとするか」

「僕も行ってみよう。いろんな学校のバスが通っていってるしね」

「だははっ! まるで俺たちが、全国からの選手を出迎えてるみたいだな。めんそーれ、だ!」

「道太郎は俺らんなかでも特に焼けてっから、現地の人だと思われんじゃねーか?」

「泰ちゃんだって、まるで地元サーファーみたいな格好じゃないか。だっははは!」

「ま、行ってみようぜ! フクギ並木の先まで、ダッシュすっぺ!!」

「あ、おいおい、井上ー。そんなに走ると、根っこに引っかかって・・・・・・」


   ごきゃ  べしっ!  どしゃ


「うおあっ! いてぇ!」

「ほら、井上君。いま田村君が注意しようとしてたのにー・・・・・・」 


 そうして三年生男子メンバーはフクギ並木を抜け、民宿近くの通り沿いまで歩いていった。

 その通り沿いでは、目の前をたくさんのバスが通り過ぎてゆく。

 それぞれのバスを目で見送るごとに、五人の瞳の中には赤い炎が灯ったのだった。

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