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青春空手道部物語 ~悠久の拳~ 第2部  作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
第6章 思いを引き継いで・・・
104/106

2-104、次の主将と副将は・・・・・・

「・・・・・・お互いに、礼っ! 本日の稽古を終わります」

「「「「「 ありがとうございましたぁーっ! 」」」」」


 今日も無事、稽古が終わった。

 田村の号令は、なんだかんだで部内が引き締まる。その声には、主将を務めてきた風格がしっかりと現れているからなのかもしれない。


「あ。今日は僕たちが施錠していくから、みんな先に帰ってだいじだよ。お疲れさま!」

「そうですか。では、わたしたち、お先に失礼します! 川田先輩、今日はほんと、たくさん稽古つけていただき、ありがとうございました! また、お願いします!」

「はいよーっ! アタシでよければ、ビシバシといつでも相手になってやるかんねー」

「ありがとうございます! じゃ、みんな、わたしらは先に帰ろうか。先輩方はなにか、打ち合わせがあるみたいだから、邪魔になっちゃうだろうし」

「「「「 お先に失礼しまーすっ! お疲れさまでしたぁー 」」」」


 阿部に続いて、後輩達は先に帰っていった。

 武道場には、西に傾いた陽の光がさあっと差し込んでくる。


   ・・・・・・カナカナカナカナカナカナカナー・・・・・・

   ・・・・・・カナカナカナカナカナカナカナー・・・・・・

   ・・・・・・カナカナカナカナカナカナカナー・・・・・・


 あちこちから、黄昏時に近い色が広がる中でヒグラシの声が輪唱のように響き渡る。

 前原たちは、森畑、井上、中村の三人がくるのを、武道場の中央で座って待っていた。


   ・・・・・・カナカナカナカナカナカナカナー・・・・・・

   ・・・・・・カナカナカナカナカナカナカナー・・・・・・

   ・・・・・・カナカナカナカナカナカナカナー・・・・・・

   ・・・・・・ササササササササァーー・・・・・・

   ・・・・・・ササササササササァーー・・・・・・


 ヒグラシが、夕映えに染まった声で鳴く。

 ケヤキの葉が、風で鳴る。

 時計の秒針が、静かに動く。かちり、こちり、かちり。


   たたたたたたっ  たたっ  たたっ  たたっ   すたすたすたすたすた

   からっ  からららら  からり・・・・・・


「ごっめぇん。打ち合わせ、なかなか抜けらんなくて! ごめんね!」

「二年の実行委員が、めんどくせぇ案件出してよぉ。長引いちまったんだー」

「すまない、遅くなって。おれも、印刷機の調子が悪くて手間取ってしまってなー」


 久々に、三年生七人が、武道場に揃った。

 中村は印刷機を直していたようで、手があちこちインクで黒く染まっていた。


「よし・・・・・・。じゃあ、これでみんな揃ったなぁ。さーて、と。今日みんなに集まってもらったのはさ、今週末になる明後日には、次期主将と副将を発表しなきゃなんないんだよねぇー」

「僕や田村君も、案はできてるんだけど、みんなとも深く話してから決めたくてね」

「そうだな。おれたちも、後輩たちにいろいろと引き継がねばならない。そのためにも、明後日の夏休み最終日に、発表しないとな」

「あーあ、俺たちも明後日で、部活引退かぁー。長いような短いような、二年半だったなぁ」

「ま、部活は引退でも、空手に引退はないさ、泰ちゃん。いつでもまた、息抜きしたいときに武道場に来て汗を流すこともできるんだからさ」

「そうだよ。道太郎の言うとおり。私も、受験勉強に息詰まったら、ここにまた来てリフレッシュしようかなーって思う。ま、後輩達がやりづらくならない程度に、だけどね?」

「今までの先輩方も、今のアタシらみたいなことが、あったんだね。後輩に引き継ぐために、あれこれ考えなきゃならないこと、多いもんなぁー」


   ・・・・・・カナカナカナカナカナカナカナー・・・・・・

   ・・・・・・カナカナカナカナカナカナカナー・・・・・・

   ・・・・・・カナカナカナカナカナカナカナー・・・・・・

   ・・・・・・カナカナカナカナカナカナカナー・・・・・・

   ・・・・・・カナカナカナカナカナカナカナー・・・・・・

   ・・・・・・カナカナカナカナカナカナカナー・・・・・・


「・・・・・・で、まず俺と前原で考えた案なんだが・・・・・・~~~で・・・・・・~~~というわけで」

「うむ。そういうことか。でも、ちょっとおれの考えを聞いてくれ・・・・・・~~~だしさぁ」

「でもさ、それだとアタシは・・・・・・~~~だしー・・・・・・~~~って思うんだよ!」

「いやいや、真波が言いたいことは俺もわかっけどよ・・・・・・~~~になるじゃん!」

「なんでよ! だいたい、井上は・・・・・・~~~じゃ図式がおかしくなるでしょうよ!」

「だから、そうじゃねーって言ってんだろ! 俺は・・・・・・~~~って思うんだって!」

「まぁ、真波も井上も落ち着きなよ。私はさ・・・・・・~~~がベストだと思うけどなー」

「でも森畑さん、それだと僕の案の・・・・・・~~~とちょっと違うかなぁって・・・・・・」

「尚ちゃん、これまで出た意見だと・・・・・・~~~がいいんじゃないかと思うが?」

「ちょっとまて神長。おれの考えが、それだと入ってないんだが。なぜだ?」


   ・・・・・・カナカナカナカナカナカナカナー・・・・・・

   ・・・・・・カナカナカナカナカナカナカナー・・・・・・

   ・・・・・・カナカナカナカナカナカナカナー・・・・・・


 同期七人、いろいろ真っ正面から意見がぶつかり、時は譲り、時には頑として譲らず。

 熱く語り合っているうちに、いつの間にか西の山際が朱色に染まっていた。

 ああだこうだと喧々諤々。でも、次第に少しずつ、意見がまとまってきた。そして、七人全員で納得し、次期主将と副将の選出案が決定。

 武道場を施錠し、帰りがけに早川先生のところへ寄って、三年生七人でまとめたことを話したところ「へぇ!」と驚いていた。


「よかったね前原っ。なんとかみんなで意見がまとまって。アタシも熱くなっちゃったけど、やっぱり、みんなも愛着あるこの部のことを考えてのことだしね。じゃ、また明日ね!」

「そうだね。僕も川田さんやみんなと同じ想いだよ。じゃ、また明日。気をつけてねー」


 夕暮れ時の風が、いつの間にかだいぶ冷たくなっていた。

 前原は暮れた空を見上げながら、家路についた。遠くには、きらりと光る一番星が浮かんでいた。

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